平井研究員
会場
会場

平成30年12月26日(水曜日)

第29回 サイエンスカフェin上北沢 「脳に砂糖はいらない?」 知っているようで知らない砂糖の秘密 を開催しました

会場:東京都医学総合研究所

平成30年12月26日(水曜日)、当研究所の講堂において、当研究所 神経細胞分化プロジェクトの平井志伸研究員を話題提供者として、サイエンスカフェ in 上北沢「『脳に砂糖はいらない?』知っているようで知らない砂糖の秘密」を開催しました。

まず平井研究員が、砂糖を始めとする炭水化物と、脳や身体との関係について講演を行いました。その中では、世の中には脳が活動するための唯一のエネルギーはブドウ糖であるといった話がありますが、必ずしも食事からのブドウ糖が必要なのではなく、アミノ酸やケトン体(※)からでも活動するためのエネルギーは産生されるといった説明がありました。また、講演の途中にはスタッフの中から被験者を選び、ショ糖(砂糖の主成分)、ブドウ糖(グルコース)、糖アルコール(エリスリトール)、果糖(フルクトース)及びデンプンのいずれかを溶かした水を飲み、その後、15分ごとの血糖値の変化を測定しました。

講演の後には、参加者は、講堂で実験するグループと研究室に移動してマウスの実験の動画を見ながら話を聞くグループに分かれて行動しました。まず、講堂での実験は、マウスの脳を使ってプレパラートを作成して、蛍光顕微鏡で観察しました。研究室での見学は、新しい記憶の獲得に必要と考えられている神経細胞の新生の観察をしたり、透明化した脳を手に取ったりしました。また、脳の形成異常や統合失調症、自閉症等の精神・神経疾患及び発達障害の発症に関係するたんぱく質、RP58についての講義も受けたりしました。

2グループが実験と見学をそれぞれ行った後、講堂に集合して、ショ糖等を飲んだ被験者の血糖値のグラフを見て、果糖を飲んだ被験者を当てるクイズを行いました。また、グラフの変化から、それぞれの糖の特徴について説明を行い、終了しました。

参加者は高校生から大人まで様々でしたが、参加したみなさんからは、「砂糖を摂り過ぎると脳の血管に障害を起こすことを知ったので気を付けたい」といった御意見を数多く頂きました。

※ ケトン体:飢餓状態等で糖質がエネルギーに変換されない際、脂質から産生されて、脳等の組織のエネルギー源となる物質。


写真右:上から平井研究員、会場の様子、研究室での様子。

写真下:プレパラート作成の様子、蛍光顕微鏡で観察する参加者。

プレパラート作成の様子、蛍光顕微鏡で観察する参加者
羽生先生
三苫先生
会場

平成30年12月20日(木曜日)

平成30年度第6回都医学研都民講座を開催しました

会場:よみうりホール

12月20日(木曜日)、当研究所では、よみうりホールにおいて、「加齢に負けないしなやかな脳」と題して、第6回都医学研都民講座を開催しました。今回は初めての平日夜間の開催で、東京医科大学主任教授羽生春夫先生及び同大学医学教育推進センター長三苫博先生を講師にお迎えしました。

まず、羽生先生から、「生活習慣から認知症を予防する」と題してお話しいただきました。認知症のうち過半数を占めるアルツハイマー病に関する調査では、発症の促進因子と防御因子がわかってきており、促進因子としては、高血圧や糖尿病等の生活習慣病、防御因子としては、ライフスタイル、運動習慣や知的活動等が挙げられるそうです。特に、生活習慣病を適切に治療していけば、認知症の前段階である軽度認知障害(MCI)からの進展をある程度抑えることができるそうです。一方、高血圧や糖尿病のコントロールが悪い場合は、脳の動脈硬化や梗塞が進行し、アミロイドβの産生促進や分解障害が起こり、認知機能の障害が進むとお話しいただきました。

続いて、三苫先生から、「病気・加齢から脳を守る仕組み」と題してお話しいただきました。年を重ねることや病気にかかることで脳の神経細胞は障害を受け、やがて失われ、認知症等の神経症状を発症します。残念ながらこれらの失われた神経細胞を補い機能を回復する治療法はありません。しかし、最近になり、脳には加齢や病気により失われた機能をある程度代償、回復する可能性(脳の予備能)があることが分かってきました。この機能の回復は、脳の障害の初期に限られるそうですが、動物園等の飼育動物に対する環境エンリッチメント(※)の考え方を応用し、日常生活を工夫することで、脳の予備能を活かした回復が可能であるとお話しいただきました。

講演後のアンケートでは、「認知症と生活習慣病との関係がわかってよかった。運動をすることで生活習慣の改善に努めたい。」といった御意見を多く頂きました。

※環境エンリッチメント:動物園等の飼育動物に対する福祉と健康を改善するための飼育環境の工夫のことであり、環境を豊かに充実させることで、自然における正常な行動を引き出すことを目的とする。


写真右:講演の様子。上から羽生春夫先生、三苫博先生、会場の様子

写真下:控え室にて。左から羽生先生、三苫先生、筧プロジェクトリーダー(運動障害プロジェクト)

演者(Speakers)
正井久雄所長
会場

平成30年12月19日(水曜日)

平成30年度第18回都医学研国際シンポジウムを開催しました

会場:東京都医学総合研究所

12月19日(水)、当研究所講堂において、「Structured nucleic acids : its recognition mechanisms, biology and diseases(特異構造を有する核酸:その認識機構、生物学、疾患)」と題して、第18回都医学研国際シンポジウムを開催しました。国際シンポジウムは国内、国外の研究者を招聘し、医学に関連する各種研究分野の最先端の研究成果について発表し、討議することを目的とします。今回は、国内からの3人の研究者の他に、諸外国から5人の研究者をお招きし、ゲノム上に存在する、あるいは細胞内で産生される、非標準型構造を有する核酸の構造、機能、そしてその疾患への関与に関して最先端の研究成果をお話しいただきました。

今回、シンポジウムは三部構成で進行し、第一部は、「DNA複製と構造を有する核酸」をテーマに、米国ミシガン大学のRobert S. Fuller先生、ワシントン大学医学部のPeter M. Burgers先生、米国ミシガン州のVan Andel 研究所のHuilin Li先生から、続いて、第二部は、「構造を有する核酸の構造、生物学および新技術への応用」をテーマに、中国、北京のInstitute of ZoologyのZheng Tan先生、当研究所の正井久雄所長、京都大学の杉山弘先生から、そして第三部では、「疾患と構造を有する核酸」をテーマに、フランス、モンペリエのInstitute of Human GeneticsのPhilippe PASERO先生、熊本大学の塩田倫史先生、大阪大学の中谷和彦先生からご講演をいただきました。2017年にノーベル化学賞を受賞したことで有名になったクライオ電子顕微鏡(※1)によるタンパク質高次複合体の構造解析、DNAの構造をオリガミのように自在に操る技術、ATR-X症候群(※2)の発症機序と治療に関する成果、ハンチントン病(※3)の原因遺伝子の構造変化を修正できる化合物など、多くの最新成果が発表されました。講演後の質疑応答の際には、活発な討論、意見交換が行われ、構造核酸に関して、化学、生物学、医学の視点から極めて多くの注目が集まっていることが実感されたシンポジウムとなりました。

今後も当研究所では、研究者や医療従事者等を対象に最先端の研究領域や社会的注目度の高いトピックをテーマとし、最先端の情報収集を行い、研究成果の国際的な発信を目指して国際シンポジウムを開催していく予定です。

※1:
タンパク質等の生体の高分子等を急速冷凍し、その構造を解析する透過型電子顕微鏡
※2:
日本では難病に指定されており、X染色体にあるATRX遺伝子の変異により発症する。主症状として、重度の精神運動発達の遅れがある。
※3:
運動機能や認知機能に影響を及ぼす、遺伝性、進行性の神経変性疾患。

写真右:上から正井久雄所長、会場の様子

写真下:上段左からRobert S. Fuller、Peter M.J. Burgers、Huilin Li、Zheng Tan、
    下段左から、Hiroshi Sugiyama、Philippe Pasero、Norifumi Shioda、Kazuhiko Nakatani

演者(Speakers)
西村プロジェクトリーダー
会場2
会場

平成30年11月30日(金曜日)

平成30年度第8回都医学研シンポジウムを開催しました

会場:ベルサール神保町アネックス

11月30日(金)、当研究所では、第8回都医学研シンポジウムをベルサール神保町アネックスにおいて開催しました。今回は2020年に東京オリンピックが開催されることを踏まえ、「スポーツ脳科学の創成」をテーマに行いました。

当日は、スポーツ脳科学について研究している大学や研究機関の研究者、大学院生・学部生、マスコミ等、大勢の方にご参加いただきました。

まず、第1部において、NTTコミュニケーション科学基礎研究所 柏野 牧夫 スポーツ脳科学プロジェクト統括からは、プロ野球選手等の打撃時における視覚運動情報処理の解明を進めており、①ボールを打つ際の眼球運動と身体運動の解析、②眼球の挙動に基づく注意範囲の推定、③打撃に関係する錯視のメカニズム、④無自覚的な視覚運動応答と打撃パフォーマンスの関係等について、お話しいただきました。次に、中京大学スポーツ科学部 荒牧 勇 教授からは、アスリートに対するMRI脳画像研究を通した、①競技種目の特徴と脳との関係、②試合本番に強い人の脳、③トレーニングによる脳への影響、④オリンピアンと普通の選手との脳の違い等について、お話しいただきました。さらに、東京大学大学院総合文化研究科 中澤 公孝 教授からは、パラアスリートへの研究を通じて、人間が強いモチベーションとともにトレーニングを長期に継続すると、脳の構造や機能がどう変化するのかを観察し、その機序を解明しようとしていることについて、お話しいただきました。

続く第2部において、筑波大学体育系ヒューマン・ハイ・パフォーマンス先端研究センター 諏訪部 和也 研究員からは、低強度運動でも脳の海馬が活性化し、継続すると神経の新生が生じ、空間認知機能も向上することについて、お話しいただきました。次に、当研究所脳機能再建プロジェクト 西村 幸男 プロジェクトリーダーからは、徒競走を例に、意欲と運動パフォーマンスを制御する中脳、走運動を生成する脊髄及び勝利した際の気持ちよさを生成する側坐核について、お話ししました。最後に、早稲田大学スポーツ科学学術院 彼末 一之 教授からは、スポーツ選手において、ハードトレーニングによって自動化された動作でも、試合でのプレッシャー等により意識に上ることで、スムースな動きができなくなることについてお話しいただきました。

今回のシンポジウムの参加者は、大学院生や学部生といった若い方々が多く、スポーツ脳科学の分野がまだ新しい研究分野であることがうかがえました。アンケートも好評で、ご参加いただいた方々には、この研究分野の現状と今後について理解していただく良い機会になりました。


写真右:上から西村研究員、会場の様子

写真下:左から西村研究員、柏野先生、中澤先生、彼末先生、荒牧先生、諏訪部先生

宮下知之研究員

平成30年11月19日(月曜日)

世界脳週間講演会を開催しました

会場:東京学芸大学附属高等学校

11月19日(月)、当研究所では、東京学芸大学附属高等学校において、「記憶を作る遺伝子の働き」と題し、「世界脳週間2018講演会」を開催しました。

「世界脳週間」とは、脳科学の科学的な意義と社会にとっての重要性を一般の方々にご理解いただくことを目的として世界的な規模で行われるキャンペーンです。わが国でも「世界脳週間」の意義に賛同し、「特定非営利活動法人 脳の世紀推進会議」が主体となって、高校生を主な対象とした講演会等が各地で行なわれています。

当研究所が開催した今回の講演会では、学習記憶プロジェクトの宮下知之研究員がお話ししました。記憶についての研究は、100年ほど前に心理学者のヘルマン・エピングハウスが、人がどのくらいの時間にわたって記憶を維持できるのかを調べ、忘却曲線を作り上げたことが有名です。さらにエピングハウスは、トレーニングのやり方、例えば、間隔をあけるかどうかによって、どのように忘却曲線が変化するのか、つまり、どのように記憶の獲得や維持が強化されるのかについて示しました。しかしながら、その時代は脳の中でどのような変化が起こっているのか、その仕組みは不明でした。近年、神経科学の研究は、人を含めた多くの動物を使い、脳の機能を遺伝子レベル、そして、物質レベルで明らかにしようとしています。宮下研究員は、モデル動物としてショウジョウバエを使い、匂いを使った学習効果について調べ、また、変異体のショウジョウバエを使って、遺伝子と行動を結びつけ、分子レベルで説明するための研究をしていることをお話ししました。

今回の講演会は、東京学芸大学附属高等学校において生物を選択している高校生が対象だったため、難しい話であるにもかかわらず、ちょうど授業で勉強した後だったこともあり、みなさん熱心に聴講していました。


写真右:宮下知之研究員

写真下:講演の様子

講演の様子
原孝彦プロジェクトリーダー
小澤敬也先生
会場

平成30年10月25日(木曜日)

平成30年度第5回都医学研都民講座を開催しました

会場:一橋講堂

10月25日(木)、当研究所では、一橋講堂において、「白血病治療法の最前線」と題して、第5回都医学研都民講座を開催しました。今回は、自治医科大学名誉教授小澤敬也先生を講師にお迎えしました。

まず、当研究所幹細胞プロジェクトの原孝彦プロジェクトリーダーから、「悪性Tリンパ腫に対する新しい薬の開発を目指して」と題してお話しいただきました。白血病は、「急性」と「慢性」、さらに、がん化する細胞の種類により「骨髄球系」と「リンパ球系」に大きく分けられます。このうち、「急性」で「リンパ球系」である急性Tリンパ芽球性白血病(T-ALL)は、難治性の白血病で、治療薬は開発されていません。しかし、原研究員は、このT-ALL細胞を選択的に死滅させる天然化合物を発見し、さらに、この化合物と同様の効果を持つ化合物の合成に成功したそうです。現在は、さらに多くのT-ALL患者の検体を使っての有効性の検証を進めるなど、創薬に向けて研究していくことをお話ししました。

続いて、小澤先生から、「発展を続ける白血病治療法の歴史と未来」と題してお話しいただきました。白血病の治療は、抗癌剤による化学療法から、最近では、分子標的治療薬が開発されることで、急性前骨髄球性白血病や慢性骨髄性白血病の治療成績が劇的に改善しました。また、治癒を目指した造血幹細胞移植も一般的となっています。さらに、最近のトピックスとしては、急性Bリンパ性白血病では、8割以上の患者さんに治療効果があったと報告されているCAR-T細胞療法と呼ばれる遺伝子治療が注目されています。先生からは、白血病やその治療法の歴史について触れていただくとともに、ご自身が研究されているCAR-T細胞療法についてお話しいただきました。この療法は、患者さんから取り出した免疫細胞(T細胞)にがんに結合する受容体遺伝子を組み込んだうえで、体内に戻すものであるとご説明いただきました。

講演後のアンケートでは、「最新のCAR-T細胞療法について、わかりやすく説明してもらってよかった。今後に希望が持てる治療法だと感じた。」といった御意見を多く頂きました。


写真右:上から原研究員、小澤敬也先生、会場の様子

写真下:控え室にて(右:小澤先生)

講義(神経難病の口腔ケア最前線:実演も含めて)
グループワーク
呼吸リハビリテーション演習

平成30年10月11日、15日、16日、25日、26日

平成30年度 東京都在宅難病患者訪問看護師等養成研修(座学研修Ⅱ)を開催しました

会場:東京都医学総合研究所 講堂 他

平成30年10月中に、計5日間の日程で「東京都在宅難病患者訪問看護師等養成研修」を開催し、東京都内から95名の訪問看護師等が参加しました。

平成27年「難病の患者に対する医療等に関する法律」が施行され、難病患者を取り巻く状況は大きく変化しています。こうした状況のなかで、難病患者を地域で支える訪問看護師等が難病の理解を深める機会は重要です。

研修では、多様で複雑なニーズをもつ難病患者の理解に加えて、専門性の高い症状マネジメント、療養経過を通したケースマネジメントの視点を確認すべく、各分野の著明な講師陣による講演が行われました。プログラムは、医療・介護ニーズが高い神経難病の疾病を中心とした理解、難病患者に関連する複雑な制度の理解、遺伝性疾患の看護など、最新の医療に関する情報も含めたものでした。また、難病看護のハードルを高くしている所以とも思われる、コミュニケーション障害、在宅人工呼吸管理、服薬管理、嚥下障害、排泄障害等に対する難病特有のアプローチについて、学びを深めました。

これらの知識を統合して、実践に持ちかえってもらうために、事例検討や人工呼吸管理演習、呼吸リハビリテーション演習を行いました。普段の実践のなかで孤軍奮闘している訪問看護師の皆様は、積極的な情報交換・交流をはかる様子がみられました。

充実した研修を終え、「来年の研修には、同僚に参加を勧めます」といってくださる方も多く、これからも研修を通じて実践に役に立つ情報を発信していきます。


写真右:上から、講義(神経難病の口腔ケア最前線:実演も含めて)、グループワーク、呼吸リハビリテーション演習

写真下:講義(コミュニケーション障害の支援・透明文字盤の使い方)

講義(コミュニケーション障害の支援・透明文字盤の使い方)
写真1
写真2
写真6
写真5

平成30年9月30日(日曜日)

平成30年度第4回都医学研都民講座を開催しました

会場:日経ホール

9月30日(日)、当研究所では、日経ホールにおいて、「難病・ALSを「治す」への挑戦」と題して、第4回都医学研都民講座を開催しました。今回は、一般社団法人せりか基金代表理事黒川久里子先生を講師にお迎えしました。

まず、黒川先生から、「『宇宙兄弟』がつなぐ難病・ALS※治療への挑戦 -せりか基金の取り組み-」と題してお話しいただきました。先生が代表理事を務めているせりか基金は、漫画「宇宙兄弟」の登場人物の一人であり、ALSの研究を行う伊東せりかにちなんで設立したものです。そして、主な活動は、ALSの治療法の研究開発費を集め、せりか基金賞として、研究者に研究開発費を助成する活動をしていると、お話しいただきました。

続いて、当研究所認知症プロジェクトの長谷川成人プロジェクトリーダーから、「原因究明の果てない道のり」と題してお話しました。長谷川研究員は、若年性認知症である前頭側頭型認知症に蓄積するTDP-43を2006年に発見し、さらに、これがALSの発症と進行の原因物質であることも発見しました。現在、TDP-43が、なぜ脳に蓄積し、ALSを発症するのか、そして、防ぐ方法はないのかなどの研究を行っていることをお話ししました。また、TDP-43の構造は今後、数年のうちに明らかになり、それにより、研究が進展していくのではないかといったお話しもありました。

演者二人による講演の後、NPO法人さくら会の川口氏にもご登壇いただき、司会の当研究所難病ケア看護プロジェクトの中山優季プロジェクトリーダーも交え、総合討議を行いました。その中では、ALSの特徴として、病状が進むと患者の性格が厳しくなることが多いが、研究が進展することで、少しでも生きていく力を与えることができればよいといったお話しがありました。

台風の接近により、開催が危ぶまれる中での開催でしたが、アンケートでは、「治療薬の開発に向けた最新の動向を聞くことができてよかった。」といった御意見を多く頂きました。

※ALS:筋萎縮性側索硬化症のことで、神経変性疾患の一つであり、TDP-43というタンパク質が異常に蓄積することで発症する。主な症状として、神経系が徐々に壊れ、筋肉に神経の命令が伝わらなくなることで、動かすことが次第に困難になっていく。現在、原因不明で根本治療薬が存在しない難病である。


写真右:上から黒川先生、長谷川研究員、川口氏、中山研究員

写真下:総合討議(左から川口氏、黒川先生、長谷川研究員)

写真1
写真2
写真3
写真4
写真5

平成30年8月19日(日曜日)

サイエンスカフェin上北沢
「脳の中をのぞいてみよう!-私たちを守ってくれる白血球を見てみよう!-」を開催しました

会場:東京都医学総合研究所

8月19日(日曜日)、当研究所の講堂において、脳卒中ルネサンスプロジェクトの七田崇プロジェクトリーダーを話題提供者として、「サイエンスカフェin上北沢『脳の中をのぞいてみよう!-私たちを守ってくれる白血球を見てみよう!-』」を開催しました。今回御参加いただいた30名の方は、脳や白血球の働きについて学んだり、脳の細胞や白血球等を観察したりするとともに、研究者と自由に語り合いました。

七田プロジェクトリーダーが脳や白血球の働きについて説明した後、参加者のみなさんに4つのコーナーを体験していただきました。一つ目は、自らマウスの血液をスライドガラスに塗って、白血球を実体顕微鏡で観察しました。二つ目は、特殊な薬品によって透明化したマウスの脳に、神経細胞に赤く光る色を付けて、蛍光顕微鏡で観察しました。三つ目は、脳梗塞を起こしたマウスの脳では、神経細胞やグリア細胞の内のアストロサイト(注)がどんな風に見えるのか、蛍光顕微鏡で観察しました。四つ目は、目で見たことが、実際の物とは違って見える錯視について、自ら工作し、体験しました。

参加者は小学生から大人まで様々でしたが、参加したみなさんからは、顕微鏡を使ったマウスの血液の観察や、透明化したマウスの脳を見ることができて、楽しかったといった御意見を数多く頂きました。

(注)アストロサイト:シナプスや神経細胞の表面を被い、神経細胞の伝達機能や代謝・栄養面を支えているもので、グリア細胞のうちのひとつ。


写真右:上から観察用スライドガラス作成、白血球の観察、蛍光顕微鏡による観察、錯視作成等)

写真下:七田プロジェクトリーダーによるお話

写真 七田プロジェクトリーダーによるお話
写真1
インフルエンザ検査体験
写真4
シナプスの観察

8月1日(水)~8月2日(木)

平成30年度 「高校生のための都医学研フォーラム」を開催しました

会場:東京都医学総合研究所

8月1日(水)、2日(木)の2日間、東京都の協力の下、当研究所において、「高校生のための都医学研フォーラム」を開催しました。

このフォーラムは、医学・生物学研究に興味を持つ高校生に、当研究所の研究成果を分かりやすく伝え、研究室等での実験や機器操作を実際に体験してもらうことにより、研究への理解を深め、将来的には進路選択の一助となることを目的としています。今回は、18校から41名が参加しました。

前半の講演は、再生医療プロジェクトの宮岡 佑一郎 プロジェクトリーダーから「これから生命科学研究者を目指す(かもしれない)高校生への1つの指針」というテーマで、自身の経験を踏まえ、どのようにして研究者になったか、また、研究者の日常生活等、研究者という職業の魅力について、お話ししました。

後半の研究室見学は、参加者が希望するコースに基づき、分子医療プロジェクトと統合失調症プロジェクト、感染制御プロジェクトとシナプス可塑性プロジェクト、依存性薬物プロジェクトと難病ケア看護プロジェクト、うつ病プロジェクトと細胞膜研究室の4コースに分かれ、見学しました。見学先では、研究内容紹介の他、インフルエンザウイルス検査の体験や蛍光顕微鏡によるシナプスの観察等を行いました。

参加者のアンケートでは、講演内容から将来研究者になった場合のイメージが湧いた、といった意見や、研究室見学の際には、研究内容についていくつもの質問が出され、大変活発な質疑応答が交わされました。


写真右:研究室見学(インフルエンザ検査体験、シナプスの観察等)

写真下:宮岡研究員による講演

宮岡研究員による講演
写真1
写真2

7月30日(月)~8月2日(木)

平成30年度 都医学研 夏のセミナー 神経病理ハンズオン

会場:東京都医学総合研究所

神経病理ハンズオンは、名称こそ違うものの、旧研究所(神経研)の時代から数えると、今年で44回目(連続)になります。その間、神経変性疾患についての病態理解が蛋白レベルで解明されたり、また、昔はなかった新しい疾病が生じてきたり(特に中毒など)、神経疾患の疾病構造も時代の変遷とともに変化してきました。標本の染色法も新規のものが加わり、また、正しい診断に導くためには、検体の固定法や染色法のクウォリティーコントロールが前提であり、それらについては、初日に関絵里香(神経病理解析室、以下敬称略)が詳細なレクチャーを担当しました(写真右上)。

実習形式も、顕微鏡のみでも供覧の時代を経て、数年前からはデジタルパソロジーも導入するなど、今日的な姿に変貌してきており、小島利香(神経病理解析室)がデジタルパソロジーについて発表しました。また、脳神経病理データベース内に受講者用のデジタル学習ルームも作成して学習効果の向上をはかりました(マルチモニター環境設営も含め、植木信子、八木朋子が担当しました)。

しかし、世の中デジタルの時代とは言え、実際に顕微鏡で標本を観察するトレーニングは必須であり、今回は受講者15名と一緒にディスカッション顕微鏡を囲みながら(写真右下)、所見のひとつひとつを解説するセッションも挿入しました。若干密集していますが、それなりに壮観です。

対象疾患はほぼ全てのカテゴリーに渡り、92疾患(184症例、約1,000枚の標本)を4日間(実質的には3日間)で供覧するハードな内容です。頭部外傷については、外部講師の原田一樹先生(防衛医科大学法医学准教授)にレクチャーをしていただきました(写真下)。

受講者は神経内科、精神科、病理、法医学、神経科学から、また、職層としては、研修医から教授まで、幅広い人材が参加されました。神経病理に関しては初学者が多かったですが、それぞれの専門性との神経病理の出会い(質疑応答)が、スタッフの刺激にもなりました。受講者の皆様の今後のキャリアアップに少しでもお役に立てれば嬉しく思います。

神経病理解析室 新井信隆


写真3


平成30年7月9日〜13日

平成30年度 都医学研 夏のセミナー 「基礎・技術コース 神経系への遺伝子導入法」

会場:東京都医学総合研究所

夏のセミナーを開催しました。脳の働きを明らかにするために、特定の遺伝子を減らしたり増やしたりする必要があり、その場合遺伝子導入法は有用です。また、蛍光タンパクを導入して神経細胞の動きや形を解析する、あるいは光や薬に応答する蛋白を導入して神経細胞の活動を人為的に制御するにも遺伝子導入が必要です。特にアデノ随伴ウイルスは安全性が高いため、遺伝子治療にも使われます。

例年の神経系への遺伝子導入法実習に加え、今回は神経系の機能解析法も合わせて行いました。遺伝子導入法として、アデノ随伴ウイルス作製法、脳へのウイルス(トレーサーで代用)微量注入法、子宮内エレクトロポレーション法、脳の初代神経培養法、そして、機能解析法として、スライスパッチクランプ法と脳波測定です。例えば、ある蛋白が海馬の長期増強の原因であるという仮説を証明するために、その発現を抑制する核酸を緑色蛍光タンパク(GFP)とともに発現するアデノ随伴ウイルスを脳の海馬部分に注入し、スライスを作成し、GFPを頼りにその蛋白を人為的に発現抑制したニューロンを同定し、パッチクランプ法により長期増強が抑制されているか否かを調べるという実験が可能となります。

参加者は、大学の研究者、大学の技術者2名、大学院生の4名です。こちらは、岡戸、平井、田中、高沢、三輪(国立精神・神経医療研究センター)で対応しました。ウイルス、細胞から個体レベルまで、やや盛りだくさんですが、充実した内容と思います。皆さん熱心に取り組んでいただきました。私にとっては、各々の研究内容や研究環境の話しなど、有意義な楽しい一週間でした。受講生の皆様に少しでも役立つことを願っています。

神経細胞分化プロジェクト プロジェクトリーダー 岡戸晴生


写真:実習の様子



ディスカッション

平成30年6月12日〜15日

平成30年度都医学研 夏のセミナー 第43回難病の地域ケアコースを終えて

会場:東京都医学総合研究所 他

このたびの、西日本豪雨災害にてお亡くなりになられたみなさまのご冥福をお祈りいたしますとともに、被災されたみなさまには、心よりお見舞い申し上げます。
また支援に従事する自治体保健師のみなさまには、心より御礼申し上げます。

今年のテーマ;
難病保健活動をすすめよう!難病対策地域協議会を活用しよう!
―根拠に基づく課題の把握、行政としての課題分析、施策化にむけて―

H27年1月に、「難病の患者に対する医療等に関する法律(通称「難病法」)が施行され、今年で4年目となります。この間、国としての施策の具体化、そして各都道府県等における施策・制度・しくみづくりが急ピッチですすめられてきましたが、目下それらの取組は進行中といっても過言ではありません。そのようななか、各都道府県および保健所を設置する市や特別区の保健師のみなさんが、夏のセミナーに参加されました。

保健師のみなさんは、難病患者のみなさんが療養や生活において直面する課題を、地域で活動する行政の医療職として把握し、対策を考え、まさに都道府県等における難病の施策・制度・しくみをつくる、大変重要な役割を担っています。

プログラムは、国や都道府県における難病施策、各地域における難病保健活動に関する実践報告、難病保健活動に必要な知識や技術の習得に関する講義や演習で構成しました。実践報告では、地区活動を通じて把握された課題と、課題を解決するための「難病対策地域協議会」の実施報告もしていただきました。また「難病患者さんの災害時対策」の取組についても共有し、当プロジェクト所蔵の、人工呼吸器使用者の災害時対策にかかる資料や機器・器材(携帯型発電機、足踏み式吸引器、停電時の人工呼吸実施に必要な蘇生バック等)もフルに活躍しました。

演習では北海道から沖縄までの、全国から集まったみなさんが、日頃の活動資料を持ち寄り、活動の方向性を討議し、また同時にたくさんのことを語らい、自治体のわくを超えた保健活動のネットワークもつくられました。

セミナー後のアンケートでは、「今後の活動に役立つ」、「今後やってみたいことができた」との回答で、受講生のニーズに即したセミナーであったことが評価されました。「難病患者のみなさんの療養環境整備・地域ケアシステムに資する研究」は、プロジェクトにおける研究課題のひとつであり、この研究成果の普及交流を目的とする夏のセミナー継続の必要性をあらためて痛感しました。

「難病になっても、尊厳をもって、安心して住み慣れた地域で暮らし続けることができることをめざす」これは「難病法」の理念です。

夏セミ御参加のみなさまと私たちのネットワークも継続・強化し、 難病をもつみなさんに安心して生活していただけるケアシステムの実現をめざして、今後も活動していきまたいと思います。

最後になりましたが、多くの外部講師等の先生方にご指導、ご協力をいただき、セミナーを無事終えることができました。心より御礼申し上げます。

※受講生:65名(他 6月12日公開プログラムの参加者:計130名)

難病ケア看護プロジェクト


写真右:上から、中山優季プロジェクトリーダー、川村佐和子氏、ディスカッションの様子

写真下:講演会場

林先生
宮岡研究員
会場
講演前

平成30年7月4日(水曜日)

平成30年度第3回都医学研都民講座を開催しました

会場:一橋講堂

7月4日(水)、当研究所では、一橋講堂において、「iPS細胞を用いた疾患研究・治療法開発の最前線」と題して、第3回都医学研都民講座を開催しました。今回は、国立研究開発法人理化学研究所 バイオリソース研究センター iPS細胞高次特性解析開発チーム チームリーダーの林洋平先生を講師にお迎えしました。

まず、林先生から、「希少疾患患者由来iPS細胞の活用」と題してお話しいただきました。2006年に山中伸弥先生によって開発されたiPS細胞(人工多能性幹細胞)は、現在、基礎研究だけではなく、再生医療や薬等の開発に活用されています。先生は、全身の筋肉等が硬くなって骨になってしまう進行性骨化性繊維異形成症(FOP)について研究されており、その患者さんの皮膚から作製したiPS細胞を使って治療薬を探し出し、治験を始めたことについてお話しいただきました。また、これは、iPS細胞を使った創薬としては、世界で初めての治験となるそうです。

続いて、当研究所再生医療プロジェクトの宮岡佑一郎プロジェクトリーダーから、「iPS細胞のゲノム編集による遺伝情報の改変」と題してお話しました。iPS細胞を使った疾患研究や治療法の開発には、健康な人と患者さんのiPS細胞では個人差があることから、比較することが難しいという問題点があります。このため、現在では、ゲノム編集によって、健康な人のiPS細胞に対し、病気の原因となる遺伝子変異を導入して研究する方法が進んできていることについて、お話ししました。また、患者由来のiPS細胞に存在する変異に修正や改良を加え、それを患者の身体に戻す再生医療の研究についてもお話ししました。

講演後のアンケートでは、「iPS細胞を用いてFOPの治療法の開発が進んでいることについて知らなかったため、素晴らしいと感じた。」といった御意見を多く頂きました。


写真右:上から、林先生、宮岡研究員、会場、講演前のひと時

写真下:控え室にて(左:宮岡研究員 右:林先生)

控え室で宮岡研究員と林先生
三五研究員
河野先生
一橋講堂

平成30年6月8日(金曜日)

平成30年度第2回都医学研都民講座を開催しました

会場:一橋講堂

6月8日(金)、当研究所では、一橋講堂において、「糖尿病による足のトラブルとフットケア ―足は健康の源―」と題して、第2回都医学研都民講座を開催しました。今回は、国立病院機構京都医療センター WHO糖尿病協力センター センター長の河野茂夫先生を講師にお迎えしました。

まず、当研究所糖尿病性神経障害プロジェクトの三五一憲プロジェクトリーダーから、「糖尿病足病変の発症メカニズム」と題してお話ししました。糖尿病は病状が進行し、足先の感覚が鈍くなってケガやヤケドに気付きにくくなったり、感染への抵抗力が低下することで、足に様々なトラブルが生じ、最悪の場合、足の組織が腐り(壊疽)、切断しなければいけなくなることもあります。この足の切断は、交通事故等の外傷を除くと、糖尿病によるものが最も多くなっており、病状が悪化する前に適切な対処をすることが必要であることについてお話ししました。

続いて、河野先生から、「糖尿病から足を守る -フットケアの重要性-」と題してお話しいただきました。現在、糖尿病を原因とする潰瘍や壊疽等のトラブルを抱える人が増えてきており、これらの症状の原因は、末梢の感覚や自律神経が侵される神経障害、または、末梢の動脈の閉塞によって生じる血流障害等が挙げられます。このため、自分でできる足の簡単なチェックの方法、症状の予防と解決方法(フットケア)についてお話しいただきました。

講演後のアンケートでは、「自分の足に合った靴を履くことや、自分の足に興味を持つことの重要性を学べた。」といった御意見を多く頂きました。


写真右:上から、三五研究員、河野先生、講演会場

写真下:控え室にて(左:三五研究員 右:河野先生)

控え室で三五研究員と河野先生
小野研究員
宮崎拓郎先生
講演前のひと時(小野研究員、宮崎拓郎先生)

平成30年4月27日(金曜日)

平成30年度第1回都医学研都民講座を開催しました

会場:東京都医学総合研究所

4月27日(金)、当研究所の講堂において、「タンパク質をマスターして健康な体になろう!」と題して、第1回都医学研都民講座を開催しました。今回は、昭和大学医学部生化学講座講師の宮崎拓郎先生を講師にお迎えしました。

まず、当研究所カルパインプロジェクトの小野弥子プロジェクトリーダーから、「タンパク質が切れないと筋肉や胃の病気になる?」と題してお話ししました。タンパク質は体内で様々な役割を担っていますが、このタンパク質が正常に働くためには、必要に応じて切断されることが必要です。その役割を担うのが、タンパク質分解酵素の一種であるカルパインで、筋肉や胃の病気を例に、カルパインの重要性についてお話ししました。

続いて、宮崎先生から、「血管変性疾患への挑戦:しなやかな血管を手に入れる」と題してお話しいただきました。加齢や生活習慣の乱れにより動脈硬化症等が進行すると、致命的な心血管疾患の原因になります。このため、血管を健康に保つ日常生活での工夫として、体重の管理、適度な運動や食生活の改善等が重要であるとお話しいただきました。

講演後のアンケートでは、「BMIや自分で簡単にチェックできる血管年齢の計算方法が参考になった。」といった御意見を多く頂きました。

講演終了後、希望者に研究室を見学していただき、「なかなか見ることのできない研究室が見学できてよかった。」等、満足していただきました。


写真右:上から、小野研究員、宮崎拓郎先生、講演前のひと時

写真下:講演会場の様子、研究室見学の様子

講演会場の様子、研究室見学の様子



平成30年4月21日(土曜日)、22日(日曜日)

科学技術週間特別行事に参加しました

会場:日本科学未来館

4月21日(土曜日)、22日(日曜日)の2日間、当研究所では、日本科学未来館において、「遺伝子DNAとアレルギー」と題した実験教室等を行いました。この行事は、「Tokyoふしぎ祭(サイ)エンス」をキャッチフレーズに、首都大学東京、各研究・教育機関等が一堂に会して研究・技術について分かりやすく紹介するものです。

当研究所からは、「見てみよう」、「調べてみよう」、「作ってみよう」という3つのテーマで、来場者に直接実験等に参加していただく「体験展示」を実施しました。

企画1の「体験してみよう 細胞からDNAをとりだしてみよう」と企画2の「DNAの二重らせんを作ろう」の参加者は、最初にDNA等についての説明を受けました。その後、企画1の参加者はバナナからDNAを取り出す実験を行い、実験の手順説明に真剣に耳を傾けながら、実験用ゴム手袋を付けた慣れない手つきで実験をやり遂げました。最後にDNAが取り出せると、白衣に身を包んだ小学生たちからは満面の笑みがこぼれ、驚きの声が響きました。企画2の参加者は、DNAの形を模したビーズストラップ作りに挑戦しました。集中して親子で協力し、熱心に作業している姿が印象的でした。

企画3「のぞいてみよう アレルギーの世界」の参加者は、実体顕微鏡で生きているダニやスギ等の花粉を観察したり、アレルギー疾患のマウスの免疫細胞を染色して、蛍光顕微鏡で観察したりしました。参加者の皆さんは、もぞもぞと動くダニを熱心に覗き込んでいました。

担当した研究者たちにとっても、普段は接することの少ない都民の皆様に研究内容を披露する貴重な機会となり、有意義なイベントとなりました。


写真右:上から、研究員の説明を受けダニを観察する参加者、会場の様子、DNAの形のビーズストラップ作りに挑戦

写真下:観察や実験に熱心に取り組む参加者の様子

中山研究員による講演
分身ロボットコーナーの様子

平成30年3月11日(日曜日)

サイエンスカフェin上北沢「言葉を伝えることってむずかしい!?すばらしい!!」を開催しました

会場:東京都医学総合研究所

3月11日(日曜日)、当研究所の講堂において、難病ケア看護プロジェクトの中山優季研究員を話題提供者として、「サイエンスカフェin上北沢『言葉を伝えることってむずかしい!?すばらしい!!』」を開催しました。今回御参加いただいた26名の方は、和やかな雰囲気の中で、難病により話せなかったり、文字が書けなかったりした場合に、自らの言葉を伝える特別な方法について体験するとともに、研究者と自由に語り合いました。

中山研究員からの話のほかにも、難病を抱える御本人とその親御様にも当事者として御参加いただき、日常生活の過ごし方とその意思疎通の方法についてお話しいただきました。後半は、参加者のみなさんに4つのコーナーを体験していただきました。一つ目は、五十音が書いてある透明なプラスチックの板を使い、伝えたい文字を見つめると、向き合う人がその文字を読み取り、一文字一文字が言葉になって、文章になることを体験する「文字盤会話コーナー」です。二つ目は、ほんの少しの手や足の動き、あるいは、凝視することでスイッチを操作し、パソコンに書かれた五十音を使って言葉や文章を作ることを体験する「手や足や視線で伝えるコーナー」です。三つ目は、脳波や脳内の血液量の変化を特別な器械が読み取り、“はい”や“いいえ”を判断することを体験する「念じて伝えるコーナー」です。四つ目は、タブレット等を使い、インターネットを通じて、自分の分身となるロボットに指示することを体験する「分身ロボットコーナー」です。

参加者は小学生から大人まで様々でしたが、参加したみなさんからは、「普段体験することのできない、文字盤や視線入力を使った会話が楽しかった。」といった御意見を数多く頂きました。


写真:上から講演会場の様子、分身ロボットコーナーの様子

小原道法研究員
木村公則先生
展示ブース
会場の様子

平成30年2月21日(水曜日)

平成29年度第8回都医学研都民講座を開催しました

会場:都庁大会議場

2月21日(水曜日)、当研究所では、都庁大会議場において、「肝臓病からの解放に向けて」と題して、第8回都医学研都民講座を開催しました。今回は、都立駒込病院肝臓内科部長の木村公則先生を講師にお迎えしました。

まず、当研究所感染制御プロジェクトの小原道法研究員から、「ワクチン治療の可能性を求めて」と題してお話ししました。C型肝炎ウイルス(HCV)の感染者に対する治療は長期間かかるものであり、また、治療効果の高い抗HCV薬が開発されているものの、とても高額な薬であることから、患者及び公的費用負担が膨大となっているのが現状です。そのため、HCVの排除や肝炎の抑制を目指した治療用ワクチンの開発を進めているとのお話がありました。

続いて、木村先生から、「肝硬変治療薬の開発への取り組み」と題してお話しいただきました。国内において20万人以上もの患者がいるといわれるHCV肝硬変ですが、これに対する有効な治療薬は現在のところ存在しません。肝硬変になると、かなりの割合の人が肝癌を発症することから、肝硬変の治療薬の開発は緊急の課題となっています。そこで、木村先生たちのグループでは、HCV肝硬変患者に対する治療薬として、CBP/β-カテニン阻害剤(PRI-724) の安全性及び有効性を確認するための医師主導治験を実施したそうです。これは、日本発の治療薬であり、今後の実用化に向けた最新の情報もお話しいただきました。

講演後のアンケートでは、「HCVの治療用ワクチンや肝硬変の治療薬の開発が、今後も進んでいくことを期待しています。」といった御意見を多く頂きました。


写真右:上から、小原研究員、木村先生、展示ブース、会場の様子

写真下:講演前のひと時(左から、安井研究員、木村先生、小原研究員)

西村幸男
彼末一之先生
講演の様子

平成30年1月19日(金曜日)

平成29年度第7回都医学研都民講座を開催しました

会場:一橋講堂

1月19日(金曜日)、当研究所では、一橋講堂において、「スポーツ脳科学への招待」と題して、第7回都医学研都民講座を開催しました。今回は、早稲田大学スポーツ科学学術院教授の彼末一之先生を講師にお迎えしました。

まず、当研究所脳機能再建プロジェクトリーダーの西村幸男研究員から、「心から湧き出る運動パフォーマンス」と題してお話ししました。今まで、スポーツ科学といえば、運動生理学、バイオメカニクス及びスポーツ心理学といった研究分野がありましたが、脳については研究されてきませんでした。しかし、筋肉を動かすのは脳であり、「誰がどこにいるのか」、「どこにボールを投げたらよいのか」といった高度な感覚情報処理能力・意思決定や、対人・チームワークといった駆け引きやコミュニケーションについて脳が関与しています。しかし、脳がどの程度の役割を果たしているのかについては、よく分かっておらず、これを研究するのがスポーツ脳科学です。西村研究員からは、「スポーツ選手の高度な能力を支える脳神経基盤を解明し、脳科学に立脚したトレーニング法・コーチング法の開発を目指している。」、「スポーツでは、喜怒哀楽のような心が脳を活性化し、それが運動能力を上げる鍵である。」とのお話がありました

続いて、彼末先生から、「アスリートの秘密を脳科学で解き明かす」と題してお話しいただきました。「運動神経が良い人」とは選手の真似が上手い人といえますが、これは「一人称」と「三人称」の2つの運動イメージの問題だということです。まず、三人称のイメージは、運動する自分や他人を観客席から見るような視覚的なものです。一人称のイメージは、自分が運動するときの感覚を思い描くものであり、自分の全身は見えず、体性感覚や平衡感覚といった視覚以外の情報を使うものです。つまり、真似の上手さは、三人称のイメージ、すなわち視覚的な映像をいかに自分の一人称のイメージと一致させられるかということになります。これらが一致すればするほど良いイメージとなり、運動神経が優れているということになるとのお話がありました。

講演後のアンケートでは、「スポーツのトップ選手の競技能力には、身体能力ばかりではなく、脳が大きく関与していることが分かった。」といった御意見を多く頂きました。


写真右:上から、西村研究員、彼末先生、講演の様子

写真下:講演前のひと時

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