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April 2014 No.013
米国科学雑誌「PLOS One」に分子医療プロジェクトの芝崎太参事研究員らの研究成果が発表されました。
分子医療プロジェクト 参事研究員芝崎 太
季節性のインフルエンザでは、現在、妊娠反応などに使用される簡易型のイムノクロマト法(図1;原理)により10-15分程度で診断が可能ですが、検出感度が余り良くないため、発症直後(1-2日以内)などの早期には陰性になる事が多く、24時間以内の早期の治療薬の投与が難しいことが指摘されております。 これまでに全世界で500名以上罹患し、60%以上の致死率が報告されているH5N1高病原性トリインフルエンザでは、そのパンデミック(世界的流行)の危険性に備えてより高感度で、H5N1亜型すべてを検査可能な簡易検査法の確立が望まれていました。
当研究所では、平成20年より東京都の特別研究の一環として、これらの危険なインフルエンザに対応すべく診断法、治療薬の開発を進めてきました。今回、私達は、東京バイオマーカー・イノベーション技術研究組合(とびら)の各社、各大学、都立病院などの臨床病院との産学医連携にて、従来のイムノクロマト法の50倍以上の高感度でH5N1鳥インフルエンザウイルスを検出できるイムノクロマトチップとその検出機器の開発に成功しました(図2, 3)。
この方法では、従来の金コロイドを使用する方法に代え、蛍光色素を抗体に結合させた蛍光イムノクロマト法を独自に開発し、さらにこの蛍光色素を高感度に測定できる小型検出機器を開発することで50倍以上の高感度化に成功しました。この方法は鼻咽頭拭い液を用いて、従来法と同じ手順、同じ10-15分内で高感度測定可能です。
H5N1型には様々な亜型があり、どの亜型が流行するかの予測は困難です。このため、これまで開発された抗体では一部の亜型にしか反応せず、発生する亜型によっては検査できない等のリスクがありました。今回開発に成功した高病原性トリインフルエンザウイルス抗体は、高親和性で、すべてのH5亜型を認識できることが明らかとなりました。これにより、今後発生の可能性のあるH5型の亜型すべてについて対応が可能となり、発症早期の診断により、ワクチンや治療薬の確保、医療体制の準備、早期の患者さんの隔離など、多くの対策が可能となります。