HOME広報活動刊行物 > October 2014 No.015

開催報告

平成26年度 都医学研夏のセミナー

当研究所では、毎年夏期に保健師や医師、研究者、学生を対象に4~5日間のセミナーを行っています。
今年は下記のとおり3つの講座を開催いたしました。

臨床教育コース「神経病理ハンズオン」

神経病理解析室 新井 信隆

平成26年7月28日から31日まで、受講者7名を迎えて夏のセミナー・神経病理ハンズオンを行いました(ハンズオンとは、実際に手に取って学習する、という意味です)。受講者は病理医、神経内科医、監察医、歯学部生であり、比較的若い受講者が多かったですが、生涯学習を兼ねて受講されたベテランドクターも居られました。実習形式はヒト脳神経疾患の病理標本を実際に検鏡しながら、病気の成り立ちや診断法を学習するものです。講師は筆者の他、こどもの脳プロジェクトリーダーの林雅晴研究員、4月に神経病理解析室に赴任したばかりの増井憲太研究員が務めました。

昨年から新たに、供覧症例のガラス標本を高精度スキャナーで取り込んだデジタルデータを閲覧しながら顕微鏡を観察する方法を導入しましたが、今年も、さらにデータ数を増やして、アナログ実習(顕微鏡観察)とデジタル実習(パソコンモニター観察)を同時平行させる研修形式を取り入れました。そのため、4台のマルチモニター、ディスカッション顕微鏡、12台の顕微鏡を配置し、さらには、脳神経病理データベースの中に、受講者のための自己学習ルームを作成して個別アカウントを発行するなど、画期的な実習を行うことができたと考えています。このような取り組みにより、専門性に磨きをかけたドクターが世の中に多く輩出することを願っています。


睡眠研究における実験解析技術の習得

睡眠プロジェクト 児玉 亨

本年度も7月28日から7月31日までの4日間にわたり睡眠研究に関する基礎技術を習得するためのセミナーを実施しました。脳波測定・解析という生理学的手法は睡眠研究を進める上で基本となるのですが、実は遺伝子改変動物の表現型を調べるなど、他の分野でも要求が増えてきています。しかし、近年の研究手法の変化により体系的研修を受ける機会が少なくなってきているのもまた事実です。そこで日本睡眠学会からの後援も受け、睡眠科学を目指す学生・若手研究者にとどまらず多くの方々に睡眠覚醒判定の標準となる手法を体験してもらう機会を提供できればとセミナーを開催しました。

今回は昨年度の睡眠技術に関するセミナー計画をたたき台に、できるだけ参加者自身で手を動かして体験してもらうという点を重視し、実習に時間配分を多くとりました。

今年も定員いっぱいの6名の参加者があり、開催責任者としてはしっかりとした手応えを感じております。4日間という短い期間のためかなりタイトなスケジュールでしたが、外部からの支援も有り、参加者の方々には睡眠研究の基礎に関していくつかの重要なポイントをお伝え出来たと確信しております。来年以降も状況が許す限り基礎研究を考えている研究者の要望に添った形で同様のセミナーを続けていきたいと考えています。

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「神経系への遺伝子導入」

神経細胞分化プロジェクト 岡戸 晴生

脳の研究に、外来遺伝子を神経細胞に導入する技術は役にたちます。たとえば、神経細胞は誕生してから移動するのですが、その移動する様子を観察するのに、蛍光蛋白(GFP)を入れておけば、神経細胞が動く様子をみることができます。また、過剰発現や発現抑制により、特定の遺伝子の働きを知るのに役立ちます。

わたしたちの研究室では、遺伝子の導入法として、ウイルスベクター(アデノウイルス、レンチウイルス、アデノ随伴ウイルスなど)と子宮内電気穿孔法という方法を多用しています。

7月28日から5日間、例年通り「神経系への遺伝子導入法」というセミナーをおこないました。脳の初代培養作製とウイルス作製は三輪さんが、また子宮内電気穿孔法は坂本さんが主に対応しました。マウスの脳から作製した初代培養細胞に様々なウイルスベクターを用いてGFPを導入して、その導入のされ方を比較しました。また、子宮内電気穿孔法で胎児脳の神経前駆細胞にGFPを導入し、その脳の切片を作製し、導入細胞を観察しました。

受講生は大学助教、製薬会社研究員、大学院生2名の計4名で、熱心に取り組んでいただきました。いっしょに実験してみて、むしろこちらの学ぶことの多いことが実感です。このセミナーが受講生の研究に立つことを願っています。

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