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開催報告

第8回都民講座:「認知症高齢者への対応のコツ」~症状と心を理解する~

東京医学総合研究所は都民の皆様向けに年8回ほど講演(都民講座)を行い、当研究所の研究成果の一端や関連する最新情報などを分かりやすくお伝えしています。

講師:鈴鹿医療科学大学看護学部 教授葛原 茂樹

葛原 茂樹

平成27年2月4日、鈴鹿医療科学大学、看護学部、看護学科教授の葛原茂樹先生をお迎えして第8回都民講座が都庁大会議場で開催されました。葛原先生は日本神経学会の代表理事も務められた臨床神経学の第一人者で、わが国の厚生労働行政にも大きな貢献をされておられる先生です。様々な神経疾患の患者様を診療され、ご家族の方々にも対応されてこられました。また、アルツハイマー病をはじめとする認知症、紀伊半島の筋萎縮性側索硬化症/パーキンソン認知症複合の基礎研究でも大きな業績を残されています。今回は「認知症高齢者への対応のコツ-症状と心を理解する-」というタイトルでお話をして頂きました。

講演は、まず最初に厚生労働省の発表した「新オレンジプラン」の認知症対策の7つの柱について紹介し、病気の理解を深めることや、容態に応じた適切な医療や介護、介護者への支援、さらには認知症やその家族の視点に立つことの重要性を強調されました。

つづいて、アルツハイマー病、前頭側頭型認知症、レビー小体型認知症などの主要な認知症の中核症状と周辺症状について解説され、問題行動となる周辺症状は、病気の原因である中核症状から派生していること、そしてその背景と心理を理解すれば、問題行動でも納得できる症状であることをお話されました。具体的には、「妻に向かって妻でない、誰?」と言う症状について、相貌失認と近時記憶障害によるもので、自分も妻も若いときの過去が現実となっているので目の前の70代女性を誰というのも仕方がないと、ユーモアも混じえながら患者の心理を解説されました。

そして最後に、患者の行動を変えるのは至難の技であるが、患者のこころを理解し、見逃しと許容を持って接することで、介護者の葛藤が軽減され、患者の不満も減少する。患者と介護者の良い関係を築くことが大事であるという、非常にわかりやすいメッセージを会場の皆さんに提示されました。

葛原先生のご講演は、大変わかりやすい上に、学術的内容も多く、それでいておもしろく、そして本当に心が暖まるお話でした。会場に来て頂いた都民の皆様からも本当に感銘を受けたという感想をたくさん頂きました。

認知症・高次脳機能研究分野 長谷川 成人

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