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開催報告

第20回サイエンスカフェ(平成27年12月20日実施)
「血糖調節の仕組みとその異常」

東京都医学総合研究所 糖尿病性神経障害プロジェクトリーダー三五 一憲

今回のサイエンスカフェでは、血糖値が一定の範囲内に維持される仕組みや、その仕組みの異常によって高血糖となってしまう糖尿病の病態について、簡単な実験を交えながら解説しました。健常者では食事を摂った30分後には血糖値が急速に上昇しますが、インスリンが分泌されることによって2時間以内にほぼ食前のレベルに戻ります。その実証のため、糖尿病診断に用いられる「75g経口ブドウ糖負荷試験」をスタッフ2名に受けてもらいました。また別のスタッフ2名には、それぞれ唐揚げとざるそばを食べてもらい、30分後の血糖値を測定しました。食材のカロリー数はほぼ同じでしたが、ざるそばを食べた人の方が血糖値の上昇がより顕著でした。唐揚げには糖質が少なくタンパク質と脂質が多く含まれているのに対し、ざるそばに含まれる栄養素の大部分は糖質です。食後の血糖上昇が糖質に依存していることを、参加者に理解して頂けたのではないかと思います。

次にスタッフ指導のもと、参加者にブドウ糖とアミノ酸の溶液を混合してもらい、約20分間加熱して溶液が褐色に着色する「メイラード反応」を体験してもらいました。待ち時間には、スタッフによるホットケーキ作成の実演(砂糖や卵を加えないとメイラード反応が進まず、白いホットケーキができる)があり、人集りができるほどの盛況でした。このメイラード反応が糖尿病患者の体内で進行すると、終末糖化産物 (AGE)が生成されて臓器・組織の機能を低下させ、神経障害・腎症・網膜症などの慢性合併症が起こる原因の一つになると考えられています。

最後に、神経障害の診断に有用なアキレス腱反射と神経伝導検査について、三五医院の三五美和医師に解説してもらいました。

今回は参加者の約3割が10代の中学生、高校生で、「生物の授業の予習や復習になって良かった」、「医学に興味があるので面白かった」という感想がありました。また「身近な話題を分かりやすく説明してくれた」、「スタッフの方々がとても親切だった」というコメントが多く、企画した者として嬉しく思いました。事前準備、被験者、参加者への説明等々に奔走して頂いたスタッフの皆様に、心より感謝申し上げます。

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