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開催報告

第7回都医学研都民講座(平成28年1月21日実施)
 「パーキンソン病を理解しよう − 臨床と病態評価の最前線 −」

講師:東京都医学総合研究所 運動障害プロジェクトリーダー筧 慎治
講師:公立学校共済組合関東中央病院 神経内科 部長織茂 智之

1月21日、関東中央病院神経内科部長の織茂智之先生を講師にお迎えし、筆者である筧とともに、「パーキンソン病を理解しよう-臨床と病態評価の最前線-」というテーマで第7回都民講座を一橋講堂で開催しました。

今回の都民講座では、最初に「自宅でパーキンソン病の病態を測るシステムの開発」と題し、筧から研究紹介を行いました。身体の動きを低周波、中間、高周波という3つの機能的に異なる成分に分離して評価すると、パーキンソン病の患者さんでは神経系に由来するノイズと考えられる高周波成分が増加することがわかりました。この動きの成分分析を患者さんご自身が自宅で手軽に行い医師のアドバイスを受けられるように、手の動きを安価な機器で記録し、クラウドで分析した結果がすぐに見られる開発中のシステムを紹介しました。

次に、「パーキンソン病を理解しよう」というテーマで、織茂先生からパーキンソン病の原因・症状・治療について丁寧に分かりやすく説明していただきました。パーキンソン病は全身疾患であり、振戦・無動・固縮などの運動症状と自律神経障害などの非運動症状があります。診断の基本は患者さんの話をよく聞き、特徴的な症状の有無と程度を総合的に評価することで、織茂先生が世界に先駆けて確立された心筋シンチグラフィで心臓の自律神経を評価する診断法なども併用されます。パーキンソン病の原因は未解明ですが、遺伝的要因に環境的要因が複合することにより発症すると考えられています。治療の基本は薬物治療とリハビリテーションであり、再生医療によるドーパミン補充治療も開発中です。薬物治療では服用量や服用のタイミングに加え、個人差等が薬の吸収に影響し、治療効果を左右するため、医師から指示された服薬の量と時間を守ることの重要性についてご説明いただきました。最後に、患者さんは病気について正しく理解し、薬を正しく服用するとともに、リハビリをしっかり行い、水分不足にならないようにすることなどの、日常生活を送る上でのアドバイスがありました。

講演後の質疑応答の時間には、患者さんご自身やご家族からパーキンソン病に関する切実な質問が多数寄せられましたが、時間の関係で全てにお答えできなかったことは非常に残念でした。講演後のアンケートでは「内容が非常にわかりやすかった」「パーキンソン病についての理解が深まった」等の声が大多数を占め、大変有意義な講演会となりました。

運動・感覚システム研究分野 筧 慎治

筧研究員、織茂先生
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