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開催報告

第8回都医学研都民講座(平成28年2月5日実施)
「神経変性疾患とは」

講師:東京都医学総合研究所 ユビキチンプロジェクトリーダー松田 憲之
講師:順天堂大学 医学研究科 脳神経内科 准教授佐藤 栄人
講師:福島県立医科大学 医学部 神経内科学講座 助手井口 正寛

2月5日に一橋講堂において、順天堂大学准教授の佐藤栄人先生、福島県立医科大学助手の井口正寛先生を講師にお迎えし、「神経変性疾患とは」という題で第8回都民講座を開催いたしました。

今回の講演では、最初に筆者である松田がアルツハイマー病やパーキンソン病、ALS(筋萎縮性側索硬化症)などを含めた神経変性疾患一般について簡単な紹介をするとともに、パーキンソン病の発症機構について「ミトコンドリア品質管理の異常に由来する」という最新の仮説・研究結果を中心に説明を行いました。これは我々の研究紹介であると同時に、佐藤先生・井口先生の講演のイントロも兼ねたものです。

次に、佐藤先生から「神経変性疾患の原因と治療」というタイトルで、パーキンソン病やパーキンソニズムを引き起こす神経変性疾患のご説明があり、次に活性酸素やミトコンドリア異常などのパーキンソン病の原因についての紹介がありました。その後も投薬治療の歴史や脳深部刺激療法(脳の電気刺激で症状の改善を図る治療法)の説明、さらに将来的な治療法としての iPS 細胞を用いたパーキンソン病治療の現状についてご解説をいただきました。

最後に、井口先生から「音楽家を悩ませた神経疾患」というタイトルで、著名な音楽家であるシューマン、ワーグナー、ラヴェルの事象を引用したご説明がありました。主に、シューマンはジストニア(筋肉が収縮したり固くなったりする難治性の疾患)に悩まされてピアニストを断念して作曲家となったという歴史の秘話や、ワーグナーは作曲もできないような片頭痛に20代から悩まされていたこと、ラヴェルは50歳を過ぎてうまく字を書けなくなり、60歳を越えると自分の書いた本も読めなくなったというエピソードから、「進行性失語症を患っていた可能性が考えられること」などが紹介され、神経疾患は時に作曲家を苦しめ、創作活動に大きな影響を与えてきたということをお話しいただきました。

講演終了後も佐藤先生と井口先生には「パーキンソン病を主とする神経変性疾患」や「芸術と疾患の関係」に関する質問が相次ぎ、会場の使用予定時間を超過してしまうために、最後は質問を制限せざるをえないほどでした。晴天にも恵まれ、充実した講演会になったと思っております。

生体分子先端研究分野 松田 憲之

松田研究員、佐藤先生、井口先生
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