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Oct. 2017 No.027
米国科学誌「Cellular and Molecular Gastroenterology and Hepatology」に真田崇弘研究員らの研究成果が発表されました。
感染制御プロジェクト 研究員真田 崇弘
B型肝炎ウイルス(HBV)は、ヒトに持続感染することで、慢性的な肝炎を引き起こし、やがては肝硬変・肝細胞癌を引き起こします。現在、HBV感染に対する有効なワクチンはありますが、ワクチン接種者であってもHBVに感染する事例が報告されており、ウイルスがワクチン免疫を回避するメカニズムの解明が求められていました。
我々は、細胞間の情報伝達に関与している細胞外小胞に着目し、HBVが細胞外小胞(*1)に包まれることで、宿主からの免疫機構から回避しているのではないかと考え、研究を進めました。
その結果、細胞外小胞にはウイルスの遺伝子やタンパク質が内包されていることがわかりました。
またこの細胞外小胞は、ヒトの肝細胞に感染し、ウイルスが複製されることが観察されました。さらにこの細胞外小胞を介した感染は、HBVに対する抗体では阻害できないこともわかりました。(下図)
今回の研究により、これまで知られていたウイルスの産生・感染経路とは異なる経路が見出されました。HBVのHBsタンパク質を標的とした現在のワクチン戦略では、HBV感染に対して不充分であると考えられ、細胞外小胞を介した感染経路を阻害することで、より予防効果の高いワクチン開発に繋がることが期待されます。
ウイルスに感染した細胞からウイルス粒子に加えてウイルス遺伝子およびタンパク質を内包した細胞外小胞が産生される。
この細胞外小胞はウイルスに対する抗体で中和されることなく肝細胞に感染し、ウイルスを複製する。
Sanada T, Hirata Y, Naito Y, Yamamoto N, Kikkawa Y, Ishida Y, Yamasaki C, Tateno C, Ochiya T, Kohara M.
Transmission of HBV DNA mediated by ceramide-triggered extracellular vesicles.
Cell Mol Gastroenterol Hepatol. 2017 Mar, 3(2):272-283.
doi: 10.1016/j.jcmgh.2016.10.003