HOME広報活動刊行物 > Jan 2018 No.028

研究紹介

思春期の孤独・孤立と自殺関連問題

「Journal of Adolescent Health」に心の健康プロジェクト遠藤香織研究員が「思春期の孤独・孤立と自殺関連問題」 について発表しました。

心の健康プロジェクト 研究員遠藤 香織


1.研究の背景

日本の若者の死因第一位は、自殺です。若い世代で死因の第一位が自殺となっているのは、先進7カ国では日本のみであり、死亡率も他の国に比べて高くなっています(厚労省「平成29年版自殺対策白書」)。若者の自殺を防ぐことは、日本の急務です。

思春期の自殺関連問題のリスク要因としては、悩みや心配を相談できる人が誰もいない状態(社会的孤立)が知られています。しかし、誰かといるよりも一人でいるほうが好き(孤独志向)という子もいます。この、一人を好む傾向は不良なメンタルヘルスとの関連が指摘されていることから、自殺関連問題のリスク要因である可能性が考えられますが、これまで検討されてきていませんでした。

 そこで、本研究で、一人でいることを好む若者の自殺関連問題リスクを検討しました。


2.研究成果の概要

中高生17,347名を対象に行った質問紙調査のデータを解析しました。その結果、一人でいることを好む若者(孤独志向)は、約3割いました。一人を好み、かつ、相談できる人がいない若者(孤独志向+社会的孤立)は、約8%いました。  思春期に一人でいることを好む傾向は、自殺関連問題リスクを高めていることがわかりました。特に、一人でいることを好み、かつ相談できる人がいない場合に、自殺関連問題リスクは最大となっていました。


3.発見の意義

本研究は、一人が好きだという思春期の若者の自殺関連問題リスクを初めて調べた研究です。本研究の結果から、一人が好きだと言っている子は、死にたい気持ちを抱えていたり、自分を傷つけてしまっていたりする可能性の高いことがわかりました。彼らへのサポートが必要です。他の研究にて、思春期の自殺関連問題を防ぐには、親や学校からのサポートが重要であるといわれています。思春期に孤立しているならば、たとえ本人が「一人でいるほうが好き」と述べていたとしても、ご家族や先生方は、その気持ちの背景にある自殺関連問題リスクに注意を払う必要があるでしょう。


思春期の孤独・孤立_人物イラスト

参考文献

Endo K, Ando S, Shimodera S, Yamasaki S, Usami S, Okazaki Y, Sasaki T, Richards M, Hatch S, Nishida A.
Preference for solitude, social isolation, suicidal ideation and self-harm in adolescents.
J Adolesc Health. 2017 61:187-191.doi: 10.1016/j.jadohealth.2017.02.018

ページの先頭へ