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開催報告

第29回 サイエンスカフェin上北沢(平成30年12月26日開催)
「『脳に砂糖はいらない?』知っているようで知らない砂糖の秘密」

神経細胞分化プロジェクト 主任研究員平井 志伸

今回のサイエンスカフェは、国際科学技術財団との共催という形で開催させていただきました。年末の平日にも関わらず、中学生から80代の方まで多くの皆様にご参加いただきました。

まず、私の方から砂糖を始めとする炭水化物と、脳や身体との関係について講演を行いました。世の中には脳が活動するための唯一のエネルギーは食事中のブドウ糖であるといった話がありますが、必ずしも”食事からのブドウ糖”が必要なのではなく、アミノ酸など糖質以外からでも糖新生※1という形でグルコースは供給され、かつ脂肪からはケトン体※2ができて、活動するためのエネルギーは供給されるといったこともお話しました。

また、講演の中にはクイズを織り混ぜ、正解数を競って楽しんでいただきました。例えば、炭水化物ごとの特性を知って頂くために、スタッフの中から被験者を選び、ショ糖(砂糖の主成分)、ブドウ糖(グルコース)、糖アルコール(エリスリトール)、果糖(フルクトース)及びデンプンのいずれかを溶かした水を飲み、血糖値の変化を測定、誰がどの炭水化物を飲んだかを予想していただきました。

講演の後、講堂で実験するグループと研究室に移動してマウス実験の動画を見ながら話を聞くグループに分かれて行動していただきました。まず、講堂での実験は、マウスの脳を使ってプレパラートを作成し、蛍光顕微鏡で観察しました。講演の中でお見せした、私たちが普段実際に行っている実験と同じ手法で手を動かして観察までしていただき、大いに盛り上がりました。研究室での見学は、新しい記憶の獲得に必要と考えられている神経細胞の新生の観察をしたり、透明化した脳を手に取ったりしました。また、脳の形成異常や発達障害の発症に関係するたんぱく質、RP58についての説明も受けたりしました。

参加したみなさんからは、「砂糖を摂り過ぎると脳の血管に障害を起こすことを知ったので気を付けたい」、「自分の手を動かして実験できて良かった」といった御意見を数多く頂きました。

※1 糖新生:動物が、糖質以外の物質から、グルコースを生産する手段・経路
※2 ケトン体:飢餓状態等で糖質がエネルギーに変換されない際、脂質から産生されて、脳等の組織のエネルギー源となる物質。

平井研究員、会場の様子

左:実験動画を説明する平井研究員、右:講演会場の様子

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