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開催報告

平成30年度 第8回 都医学研 都民講座 (2019年2月15日開催)
緑内障から目を守るために

視覚病態プロジェクトリーダー原田 高幸

2月15日(金)、一橋講堂において、「緑内障から目を守るために」と題して、第8回都医学研都民講座を開催しました。今回は、東京慈恵会医科大学 眼科学講座 主任教授の中野匡先生を講師にお迎えしました。

まず、中野先生から、「放っておくと怖い緑内障!早く見つけるためには?」と題してお話しいただきました。緑内障は、視神経が眼圧等により障害されることで、徐々に視野が狭くなる病気で、中途失明原因としては一番多いものです。この病気の特色としては、病状がかなり進行しない限り気付かず、自覚症状が乏しいことが挙げられます。視野障害は、10年以上かけてゆっくりと進み、末期に至るまでは視力は良く、視野の中心が欠けてきて初めて自覚することから、未発見潜在患者のうち、9割もの方が気づいていません。このため、症状の初期のうちに緑内障を発見し、毎日点眼し、症状の進行を遅らせることが重要とのことでした。

続いて、私が、「最新の研究からわかったこと〜緑内障とうまくつきあうには?」と題してお話ししました。日本人では緑内障患者のうち、約7割が正常眼圧緑内障のため、当プロジェクトでは2007年にそのモデル動物を開発しました。現在までにそのモデルに対して、緑内障以外の病気に対して既に使われている薬(高血圧薬、頭痛薬、胃腸薬など)を投与し、緑内障の進行抑制に有用そうなものがあることをご紹介しました。

また薬だけでなく、食事に注目した研究についてもご説明しました。例えば、大豆製品に多く含まれるスペルミジンの摂取やカロリー制限は、緑内障を進みにくくします。毎日の点眼治療や定期的な眼科受診に加えて、日常の食事などに気をつけることも重要と思われます。さらに最近我々が取り組んでいる、視神経再生研究の現状についてもお話しさせていただきました。

当日は粉雪が舞い散るような寒さにも関わらずほぼ満席で、終了後にも多くのご質問をいただきました。全員にはお答えできない状態でしたが、「食生活に気をつけるというのは新しい視点だった」、「緑内障の研究が進んでいて勇気づけられた」というような感想を多数いただき、充実した講演会となりました。

左:中野匡 先生、右:原田高幸 研究員

左:中野匡先生、右:原田高幸研究員

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