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2020/08/17

歯茎に注意!歯周炎は新型コロナ感染の重症化をもたらす可能性がある

文責:正井 久雄

新型コロナウイルスにより、世界中でこれまで16万人の犠牲者が生まれました。しかし、他の多くの人は、感染しても何の症状も出ませんし、感染したことに気づかない場合も多いと思われます。感染の重症化をもたらす要因については、現在世界中で研究が進行しています。今回、歯茎の健康が新型コロナウイルスによる重症化を防ぐことが明らかになりました。

炎症性サイトカインの一つであるIL-6のレベルが高い人は、呼吸器系の疾患にかかる確率が20倍以上高いということが知られています。また、新型コロナウイルス感染による重症化の患者では、重症化しない患者に比べて、IL-6のレベルが3倍ほど高いことが明らかになっています。中国における研究では、IL-6受容体に対するヒト型抗体医薬であるtocilizumabの投与により、新型コロナウイルス感染により重症化した患者の91%が回復したという報告がされています。

歯周炎により細菌が血流に入ることにより炎症を誘導し、IL-6の放出を促し、組織や血管や肺の裏打ち構造を破壊することが知られています。一方、SARS-CoV-2は口腔内に存在し、循環器系に侵入し、炎症性サイトカインの産生を誘導し、サイトカインストームを引き起こすことが明らかになっています。今回の研究から、歯周炎の原因となる口内細菌は、歯周炎を介してこれらの炎症サイトカインの産生を増強するとともに、肺炎や慢性閉塞性肺疾患(COPD: Chronic Obstructive Pulmonary Disease)などの新型コロナ関連の重症化に関連する要因を引き起こすことが、示されました。

歯医者さんは、歯と歯茎の健康を維持するため、2分間の歯磨きを1日2回行うことと、定期的な歯垢除去を推奨しています。歯とその周りが気になる方は、歯医者に行って、虫歯や、歯周炎の予防、治療をしておくと安心のようです。