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2020/07/02

COVID-19のパンデミック下における緩和ケアの課題

文責:中西 三春

COVID-19に関連する介護施設での緩和ケアのガイダンスは、国際的にみても、重要なテーマが対応されていない


介護施設は、何らかのフレイルをもつ高齢者が集まることから、COVID-19のパンデミックによる致命性の影響をより強く受けます。介護施設の重要な役割のひとつに、質の高い終末期ケアおよび緩和ケアを提供することがあげられます。しかし、感染症対策が求められる中での緩和ケアのあり方について、国際的なコンセンサスはいまだ得られていません。

カリフォルニア大学Global Brain Health InstituteのDr. Gilissenを筆頭とする研究チームは、2020年3月25日から4月8日にかけて36か国の研究者および6の国際機関を通じて、COVID-19関連で出された介護施設での対応ガイドラインを収集しました。

集められた81のガイドラインのうち、緩和ケアに言及がないなどで60を除外し、21件を分析対象としました。内訳はWHO(n=3)、アメリカ(n=7)、オランダ(n=2)、アイルランド(n=1)、イギリス(n=3)、スイス(n=3)、ニュージーランド(n=1)、およびベルギー(n=1)です。なお私からは日本の資料として、「社会福祉施設等における新型コロナウイルスへの対応について」(令和2年3月19日厚生労働省子ども家庭局家庭福祉課ほか連名事務連絡)を研究チームに提供しましたが、上記のスクリーニングの結果、分析対象から除外されています。

21のガイドラインにおいて、より多く言及されていた内容は、アドバンス・ケア・プランニング(n=14)、終末期における家族等の訪問・面会の制限(n=12)、病院やICUに入院させることが適切かの臨床的な意思決定(n=11)についてでした。

緩和ケアの重要な側面の多くはガイドラインで対応されていませんでした。これには、終末期の症状やニーズの全人的アセスメントと管理(備蓄されている薬を使うことについてを含む)、職員への緩和ケアの教育、緩和ケアの専門家やホスピスに送ること、アドバンス・ケア・プランニングのコミュニケーションをどう進めるか、死別後のケアを含む家族支援、そして職員への支援があげられます。今後、これらについてのガイドラインの充足が求められます。


International COVID-19 palliative care guidance for nursing homes leaves key themes unaddressed
Joni Gilissen, Lara Pivodic, Kathleen Unroe, Lieve Van den Block
Journal of Pain and Symptom Management, in press
https://doi.org/10.1016/j.jpainsymman.2020.04.151