研究内容の紹介

目的

  1. 転写抑制因子RP58が神経細胞の分化・生存に必須であることを明らかにしてきた。さらにニューロンの成熟とその機能維持に関与している手がかりを得ており、RP58 の標的分子の同定、結合分子の同定から、この分子機序を明らかにする。 (下記詳述)
  2. 栄養環境の中でもとくに近代になり摂取量の増加した糖質に注目し、野生型に加え、様々な変異マウスの摂取糖質環境を変化させ、脳発達・機能維持に及ぼす影響、その分子機序を明らかにする。
  3. アルツハイマー病の発症において遺伝的要因に加え、最近の知見では発達期の環境要因も重要であると考えられる。加齢性脳障害に対する発達期要因を明らかにし、その生物学的メカニズムを明らかにする。

(1)大脳皮質形成における神経細胞の分化・生存機構の解明

哺乳類の大脳皮質は高次脳機能の担い手であって、その発達に関わる分子の同定、およびそれらの機能を含めた作用機作を解明することはヒトの脳形成不全、および脳発達障害の原因を探索して治療および予防へ応用する臨床的意義を有すると同時に、発生生物学的観点からも重要である。最近、大脳皮質における興奮性ニューロンの分化・生存過程で、これまで知られていた様々な転写因子群に加え、RP58という新規の転写抑制因子の働きが重要であるということを見出した。RP58はZincフィンガーモチーフとPOZドメインを持つ転写抑制因子で、この遺伝子欠損マウスは大脳新皮質および海馬形成に重篤な障害をきたす。本プロジェクトでは、このRP58がどのように、ニューロンの分化・生存にかかわっているのか、その分子メカニズムを明らかにする。その過程で、これまで知られていなかった新たな情報伝達機構が見出し、興奮性ニューロンの分化・生存の基本的メカニズムを解明したい。RP58が加齢性脳障害、成体のニューロン新生やアルツハイマー病にも関与する可能性を示す予備的結果を得ている。最近、RP58の変異が知的障害などの発達障害を引き起こすことが明らかになった。また最近、RP58の発現がヒトの脳梁欠損や悪性脳腫瘍に関与する可能性が報告された。従って、RP58を中心に研究を進めることで、これら脳神経疾患の克服のための糸口が得られると考えている。

Fig. 1
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