進学を希望する学生の方へ(For students interested in exploring research in our lab)

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東京都医学総合研究所・ゲノム医科学研究分野・ゲノム動態プロジェクトに
おける、研究の方針、大学院学生の指導方針について

1 当研究室は大学ではありませんが、種々の大学との連携を持つために常に2-4名くらいの卒業研究の学生、あるいは大学院生が在籍しています。学生の教育が適切にされるかという問題ですが、研究報告、論文紹介など定期的な会議を通じでの勉強、さらに最も重要なのは研究を通じて、また先輩、同僚とのdiscussionを通じた毎日の研鑽が、科学に対する思考能力、communication能力、発表能力の向上につながり、重要なトレーニングになると考えています。当研究室では発表能力の向上を特に重要視しており、修士学位の発表はもちろん、学会や、研究会などでの発表においても、厳密なチェックを行い、よい発表ができるように何度も練習するというトレーニングを行ないます。

2 気持ちはいつも世界のトップと伍すことができるような研究をめざす

3 Communicationがすべての基本。研究についてはどんなことでもdiscussionを継続的に行うことが重要。実験を開始したときはすべてのことが初めてであるので、意外なことで落とし穴が沢山ある。最初はプロトコルを書いたらそれを私か、研究員の人にチェックしてもらってから行うようにする。

結果がでたらどんなことでよいので私あるいは、他の研究員に声をかけて討論する。

(なお、研究室で行われているプロトコルの一覧をHPにまとめてあります。研究室のメンバーはこれにいつもアクセスできます。これを読むことにより、いつでも、だれでも研究室内で使用されている技術を失敗することなく使用できるようになることを目指しています。研究室メンバーのみに開放されておりますので、研究室訪問された際にご覧いただくことができます)

4 英語でのcommunication, presentationの能力はきわめて重要です(これは必ずしも科学者に限らずどのような職種でもそうでしょう)。研究室にはEnglish speaking memberがいる場合が多いです(現在一名の外国人ポストドクが当研究室で研究を行っています)。したがって発表などもできる限り英語で行いたいですが、それによって内容が理解できないということでは本末転倒であるので強制はしないようにしています。しかし英語の運用能力を高めるように研究室内での機会を最大限に利用してほしいと考えています。

(間違えないようにいっておきますが、ここで言っているのは、教養として英会話能力ではなく、自分の結果を相手に伝え、また相手のいっていることを理解するcommunication能力です。発音や英語の流暢さ加減は問題とされません。もっとも重要なのは自分の考えていることを相手に伝えよう、communicationしようとする態度です)

5 研究の能力、レベルを高めるためには常に世界の第一線の研究者と直接話したり、その研究に対する姿勢に触れる機会が重要です。国際会議に出席するのが一つの方法ですが、なかなか難しい場合もあります。私たちは通常、年に一、二回は世界の第一線の研究者を招聘したmeetingのorganizationを行なっています。2016年には3R(複製・組換え・修復)国際シンポジウム(松江で開催)に世界各国から30人以上のこの分野の最先端の研究者を招聘し国際会議を開催しました。この会議では卒業研究生、修士学生も含めて、当研究室の研究員ほぼ全員が成果を英語で発表しました。DNA複製関連の研究をしている10人余りの外国人招待講演者は当研究所で開催する、国際シンポジウムにも参加していただきました。また、Cold Spring Harbor研究所の所長Bruce Stillman博士を招聘し、東大において生命科学研究を目指す学部学生向けの講義をしていただきました。このような機会を最大限に利用して、世界の第一線の研究者が何を考え、どのようように研究をすすめているか、身をもって感じとってほしいと思います。

(これができるためにも、4の英語のcommunication能力が重要です。)

6 研究は国際的なものであるので、自分の結果を世界に向けて発信することが最も重要です。そのためには論文を書いて発表することしかありません。核となる結果がでたら、どのようにstoryをたてるか考え、それにしがってどのような実験がdataとして必要となるかを考えてさらに実験を計画します。まず、手持ちのdataと仮想的dataで論文を書いてみると頭がすっきりします。それに基づいて足りないdataをうめてゆくーというやり方で実験をすすめてゆくと無駄なく論文完成に進むことができます。もちろん、予想通りに実験は進行しないことが多いことを警告しておきます。出てきた結果にしたがって当然storyは変わっていきます。Storyがうまくできないこともあるかもしれません。私はそういう場合には、自然が、「あなたの考えていることは間違っているよ」と伝えようとしている、重要な忠告であると受け止めることが必要であると考えます。実はもっと面白いstoryがまだ見つけられていないだけかもしれません。重要なことは、得られたdataをもとに、今後の進め方について、常に私あるいは共同研究者とdiscussionし軌道修正しながら、すすめてゆくことです。なお、論文は、自分で話をまとめて、書きあげて私に持ってきたら、どんな形でも迅速に論文になるように最大限の協力、努力をします。

7 Progress Report MeetingおよびJournal clubの参加は、全員参加が前提になっています。実験などの都合でどうしても出席できなないという場合には強制はしません。しかし、これらのmeetingの参加は自分のためです。参加することにより、新しい情報が得られ、自分の研究の役にたつことは間違いないわけです。それがわかっていたら当然、毎回出席するものと考えています。

8 テーマの選び方は、本人の適性、希望などを考慮にいれて設定します。研究室で今行われている研究の中から、大変ホットで、かつアプローチがしやすく、なんらかの結果を得られそうなテーマを最初は提案したいと思っています。「私はどうしてもこういうことをしたい」という希望がある場合には、話し合いに応じます。実験は、うまくいくことより、いかないことの方が通常多いので、いつもpositive lookingでいることが精神的健康を維持するためにも重要ですが、あまりにむつかしくていつうまくゆくのかわからない実験を続けていくのは、よほど精神的に強い人でないと疲れてしまうので、ある程度、確実にうまくゆく実験計画をいれながら計画を設定したいと考えています。

9 研究は、どんなことでも何かひとつの結果を自分でだすとぐっと自信がついて次もできるという気になります。私の役割は、そのようにできるだけ早くなれるように手助けし、できるだけ無駄な時間を費やさないようにアドバイスを与えることだと考えています。最終的には自分でひとつの壁を乗り越えることが重要です。

10 研究室内での雑用はできるだけ少なくして、実験に専念できる環境を作りたいと考えています。しかし、「他人に迷惑をかけない」というのは基本です。いつも他の人に「思いやり」、「協力」の気持ちをもって研究室生活を送ってください。

11 最後に私の恩師の故上代淑人先生の研究室のモットーをーー

Full devotion (何もかも忘れて熱中)

Continuous excitement (いつもわくわくしながら)

Friendly atmosphere (友好的な雰囲気の中で)

私たちの研究室もこれをモットーとしています。

 

進学についてよくある質問

1 研究室での研究生活のスケジュールはどのようなものですか?

研究員のコアタイムは9:30〜18:15 となっています。学生さんに、何時から何時まで研究室に来るようにとかは、私は命令しませんが、自分で実験を進められるようになるまでは、通常の時間帯内にこなければ、実験を教わることもできませんので、その間は上記の時間帯に研究室において学ぶことが皆さんにとって重要であると思われます。自分で実験を進められるようになったら、ある程度それぞれの生物時計に従ってもっとも効率よく実験を進められるサイクルで進めていただいてよいですが、研究は長丁場ですので、規則正しい生活サイクルで進めた方が通常は成果があがります

2 土日は研究室に来なければいけませんか?

私は学生さんに土日に研究室に来いとは言いません。なぜなら、いやだけど先生が言うから仕方なく実験室に来ても効率はあがらないからです。実験が面白くなり、早く結果が見たくて土日も研究室に来なくてはいられなくなるとなったら最高です。実験は、うまくゆくこともいかないこともありますので、結果が継続的に出続けるかどうかはわかりません。全くうまくゆかなくてもある日突然面白い結果がでて、そこから飛躍的に発展することもあります。ひとつ私が言えると思う事は、最終的な成果の量は、努力の総和に比例しているということです。この場合の努力とはどれだけ長く実験室にいて、どれだけの量の実験を行うかということです。

3 テーマはどのように決めますか?

本人の興味とともに、その時に研究室でなにがexciting なプロジェクトであるかなどを考慮して、本人と話し合って決めます。修士のみで卒業される学生さんの場合には、比較的目的が明確で、結果が出易そうな課題を選択します。博士課程まで進学される学生さんの場合にはよりチャレンジングな課題も考慮します。

4 実際の実験はどのように進めてゆくのですか?誰が実験技術など教えてくれるのですか?

研究室は、全体として一つの目標に向けて研究を進めており、研究室の中が分かれているわけではないですが、動物細胞の培養、酵母や大腸菌の遺伝学、タンパク精製と生化学解析、などをそれぞれの研究者が得意とする実験技法を持っており、どのような実験をするにもそのようなシニアの方に聞けば、手技については詳細に教えてもらえます。また研究室内HP には主要な実験プロトコールを纏めたページがあり、それを見たら自分でも実験ができるように丁寧に記載されています(やや古くなっているのでアップデイトが必要ですが)。下記に記載したMonday Discussion meeting はグループごとに開催し、そこで次の実験計画について皆で話し合いますので、その際に新しい実験であったら誰に聞いて行うかもわかります。また、実験に際しては、実験以外の雑用はできるだけ少なくしようという考えから、学生アルバイトを雇用し、一般器具の洗い物、チップ詰め、共通試薬の作製などはしてもらっています。

5 研究室の定期行事はどのようなものがありますか?

月始めに行う月一回のProgress Report Meeting(全員がその月の進捗情況を発表する;朝から夕方まで)、通常月曜の午前中に行うJournal Club、月曜の午後に行うMonday Discussion(研究グループごとにその週の実験について報告し、特に問題点などがあったときにプロトロルなども含めて集中的に議論し、問題があるようなら解決策を考える)が研究に関連する定期行事です。

6 修士を修了したら就職したいのですが研究室は受け入れてくれますか?

受け入れます。現状としては修士で卒業してゆく学生さんが多いです。二年というのは長くはないですが、その間に就職活動をしながら実験室にもきて成果をだして卒業される学生さんもおられます。修士で卒業する予定できて実験が面白くなり、博士課程に進学される学生さんもいれば、逆に博士課程に進学希望をしていながら、途中で就職に方針を変えた学生さんもおられます。基本的には学生さんの希望によります。博士課程進学については、進学が本人にとってよいかも考慮して本人と話し合います。(なお、東京バイオの学生さんは、インターンシップということで、基本的に卒業研究を行うということで受け入れております。しかし、研究に興味を持ち、さらに修士で研究をしたいという場合にはもちろん受け入れます。)

7 修士の学生の指導方針はどのようなものですか?

どの学生さんにも二年間、研究を通じて、結果をこれまでの知見と照らし合わせて解釈し、論理的に次に何をどのように進めたらよいかを考える能力を養ってもらうこと、研究室会議やJournal Club を通じて、presentation の能力(わかりやすい発表資料の作成も含めて)を養うこと、英語の文献を読み紹介する能力、そしてできるなら英語でcommunicationする能力も向上させることを教育の目標としています。研究室では毎年数人の第一線で活躍する外国人研究者を招聘しており、学生さんにも、彼らと直接研究についてdiscussion する時間を設けて、英語で討議する能力養成の一助にしています。

8 東京都医学研での実験と、大学の授業の両立は可能でしょうか?

東大新領域(白金台で授業)の場合は、研究所から40〜50 分ほどの距離ですので大きな問題はなくできています。理科大学の場合には、やや遠いですが、集中講義などで単位をとることにより、何とか乗り切っていたようです。その他の大学(御茶の水女子大学など)も問題ないようです。研究所にはどうしても遅くなってしまった時の仮眠室もあります。

9 東京都医学研での研究生活はどのようなものですか?

研究室は、大学に比べてセニアな研究員が一般に多い事以外は大学の研究室とあまり雰囲気は変わらないです。研究所にはいろいろな大学からの40人程の大学院生が研究をしています。研究所では平均して毎週1-2個の外部研究者の講演(都医学研セミナー)があり、生命科学の基礎科学のみでなく、脳神経医学、精神医学も含めた多くの医学分野のセミナーが開催され、自由に聴講できます。研究所の行事としては定期的に行われるサイエンスカフェ、東京都の科学週間の催し物への出展などがあり、学生さんはRA(Research Associate)として参加して企画や当日の進行などを手伝ってもらいます。修士および博士課程の学生さんの研究所RA システムについての詳細はお聞きください。定期的に研究所リトリートを開催し、研究所全体の研究交流・発表会を行っています。また、毎年、研修生も研究成果を発表できる研究発表会が開催され、優秀な発表には賞が授与されます。研究所の研究員が各自の研究を紹介するランチョンセミナー、研究所のメンバー全員が交流するイブニングミキサーなども定期的に開催され、研究所内の交流も盛んに行われます。また音楽同好会、写真部、バドミントンや卓球など各種スポーツクラブもあり、学生さんもメンバーとなりエンジョイしています。研修生控え室が研究室のすぐ近くにあり、そこに机を持つことができます。この部屋は、研修生の交流の場ともなっております。

10 卒業後の進路はどうなっていますか?

修士の学生さんは企業に就職する学生さんが多いですが(2年前も二人の女性の修士の学生さんが、研究職や医学機器関連の会社に就職しました。昨年も修士修了の女性、および卒業研究修了の男性の2名が、それぞれ就職しております。女性は東京の製薬関連の会社に就職しております)、博士の学生さんは、医薬品関連の会社(外資系も含む)に就職して活躍しておられる方、留学後日本の大学に戻ってポジションを得た方、Harvard大学に留学してポストドクとして活躍した後に慶応大学の講師になった方、外国人学生で留学後母国にかえって大学教授になっている方もおられます。