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論文
タイトル
【精神科臨床と脳科学の距離は縮まったか?-最新研究の現場から】老年期の神経病理学研究がもたらす成果とは
タイトル(英)
参照URL
https://researchmap.jp/Ito_K/published_papers/41121775
著者
河上 緒
著者(英)
担当区分
概要
神経病理学の歴史は,神経科学研究の中でとても古く,中世にまで遡る。精神医学においては,19世紀から20世紀前半にかけては主流の学問的手法であった。神経病理学は,脳や脊髄などの神経系統を対象とする病理学であるが,学問的な意義として,神経疾患の診断や治療法開発に向けた臨床的意義と,疾患の病態解明を目指す基礎医学的意義とがある。眼前にいる患者の臨床病理像を評価することは,臨床医自身の臨床能力を向上させるだけでなく,多数例の病理学的解析によって疾患概念が確立され,分子病態が明らかとなり,さらには治療薬開発に繋がることがある。事実,アルツハイマー病(Alzheimer's disease:AD)やピック病をはじめとする神経変性疾患は,その名前が冠される精神科医達による一症例の精緻な臨床病理学的知見に端をなし,研究が進んできた。その疾患概念は,臨床症候の評価とともに,神経細胞やグリア細胞を対象とした形態病理学的特徴,さらには細胞体内や突起,神経核内に形成される封入体に凝集する蛋白の性状や分子生物学的特徴を元に確立されている。蓄積する異常蛋白の生成抑制,分解促進を目的とした治療薬開発が進み,さらに,背景に病因遺伝子,疾患関連遺伝子の存在が明らかにされ,核酸医薬による特定遺伝子の発現を制御する治療薬の開発も進んでいる。精神疾患においては,古典的病理学的手法によって疾患特異的な病理特徴を見出せず1950年代から神経病理学は一時衰退したが,抗原抗体法を用いた免疫組織化学的手法が登場し,神経病理学者でないと識別できなかった微細な形態異常が容易に可視化できるようになり,再興の兆しが見え始めている。今後,分子遺伝学やPET神経画像などの最新の技術を融合することで,疾患特異性が明らかになる可能性がある。本稿では,代表的な神経変性疾患であるADを例に挙げ,神経病理学研究がどのように病態解明に寄与してきたのか,病態解明から治療薬開発までの道程を神経病理学の視点から概説する。さらに,ADにおける精神症候の背景病理に関する最新の知見について紹介し,精神疾患の病態解明に向けて,神経病理学の果たすべき役割を模索する構成とした。(著者抄録)
概要(英)
出版者・発行元
(株)星和書店
出版者・発行元(英)
誌名
精神科治療学
誌名(英)
37
11
開始ページ
1229
終了ページ
1233
出版年月
2022年11月
査読の有無
招待の有無
掲載種別
ISSN
0912-1862
DOI URL
共同研究・競争的資金等の研究課題
研究者
河上 緒 (カワカミ イト)