May 26 2025 | Mr. Ratthaphong Phumphu, Ton, successfuly finished his PhD defense talk at Khon Kaen University in May. As an examiner, I visited there and shared wonderful hours with friends in Thailand.![]() ![]() |
March 3 2025 | We get an AMED grant for promoting an international collaboration between Japan (PI, Dr. Iwama; co-PI, Sashida) and France. Our proposal is to understand roles of non-canonical PRC2 in normal and malignant hematopoiesis. |
February 20 2025 | I hosted the last international symposium for our core-to-core program: Integrative approach for normal and malignant hematopoiesis. For its contents, please refer to those pages. |
more |
正常および白血病幹細胞の制御機構の理解:骨髄異形成症候群(MDS)は、無効造血、血球異形成および急性骨髄性白血病(AML)への移行を特徴とする造血幹細胞のクローン性疾患、難治性の血液がんです。MDS細胞は表現型および遺伝子型において不均一であり、MDS発症の機序は完全には解明されていません。過去十数年のがんゲノムシークエンス解析によって、MDSやAML患者において、エピゲノム制御因子やRNAスプラシング因子を含めた様々な体細胞変異(一部胚細胞変異もある)が同定されました。興味深いことに、約10年前に、血液がん患者に頻繁に認められたエピゲノム制御因子(DNMT3A、TET2、ASXL1など)の変異は、健常高齢者の多くの血液細胞でも起きていることが報告されました。その後、相次いで同様の知見が報告され、現在はクローン造血として知られます。実際、老化は血液がんを含む様々ながんのリスクを高めることが知られており、クローン造血(ゲノム変異)に加えて、環境因子や細胞・組織へのストレスによるエピゲノム変化ががんの発症要因と考えられます。従って、造血幹細胞へのエピゲノム変化の蓄積によって、クローン造血・前MDS幹細胞から、MDSの発症と病態進展に至ると推測されます。ただし、エピゲノム変化は様々な階層(塩基、クロマチン、染色体、核内領域)で起こり得るために、がん幹細胞のおける本態や相互作用は明白ではありません。
こうした血液がん研究の状況の下、私たちの研究室では、包括的な研究手法(遺伝子改変マウス、ゲノム編集、ATAC-seqやChromosome conformation captureなどの網羅的なシークエンス解析など)を活用しています。エピゲノム変化が正常な造血幹細胞をどのように損ない、血液がんを発症するのか、その分子機序を解明するために、クロマチンと染色体動態に焦点を当てて取り組んでいます。現在の正常造血および悪性造血に関する研究課題は下の通りです:
私・指田吾郎は、2009年からシンシナティ小児病院と千葉大学において、MLL1変異体の分子メカニズムを解明しました(Zhang Y, Blood 2012; Tanaka S, Blood 2012)。 千葉大学の岩間研究室では、高齢者のクローン性造血や血液がんにおいて頻繁に変異するスプライシング因子SF3B1の幹細胞制御機構を初めて報告しました(Wang C, Blood 2014)。 さらに、エピゲノム制御因子の機能喪失による血液がんの病態基盤を解明するために、造血器腫瘍で頻繁に変異するEZH2およびTET2遺伝子の遺伝子改変マウスを用いて、複数のMDSモデルを確立しました (Muto T, J Exp Med 2013; Sashida G, Nature Commun 2014; Mochizuki-Kashio M, Blood 2015)。2014年12月から熊本大学で私の研究室を開き、クロマチン動態とエンハンサー機能不全に焦点を当てて、骨髄系腫瘍および希少白血病の病態基盤を解明しました (Sashida G, J Exp Med 2016; Wang C, J Clin Invest 2018; Kubota S, Nature Commun 2019; Yokomizo-Nakano T, Cancer Res 2020; Bai J, Oncogene 2021; Morii M, Leukemia 2024)。引き続き、私たちは、様々な要因によるクロマチン動態の変容によって正常な造血幹細胞をどのように損なわれて血液がんを発症するのか、その分子機序を解明していきます。
また、私たちは、トリソミー8やトリソミー21(ダウン症)などのトリソミーの生物学にも取り組んでおり、数的染色体異常が幹細胞機能にどのように影響して、造血や神経などの様々な組織における疾患の発症機構を研究しています。ダウン症を一例として、老化造血細胞と他臓器との相互作用から、がんや臓器不全などの老化関連疾患の発症の仕組みの理解を目指しています。
私たちは、MLL転座白血病やRUNX1-ETO白血病マウスモデル(Abdallah MG, et al. Leukemia 2021)など、いくつかの白血病遺伝子誘導モデルを構築して、年齢依存的ながん発症の分子機構を研究しています。さらに、細菌とウイルス由来産物による刺激の後のTet2遺伝子欠損マウスモデルを作製して、MDS発症が促進することを見出しました。その機序として、造血幹細胞において非標準的な自然免疫応答であるTlr3/4-Trif-Polo-like-kinase経路が、Elf1転写因子を活性化し、クロマチンを再構築しMDS発症を促進することを報告しました(Yokomizo-Nakano T, J Exp Med 2023)。また、クロマチン制御因子であるHmga2は胎児造血幹細胞で高発現し、幹細胞遺伝子の転写を活性化しています。炎症ストレス下で、造血幹細胞がHmga2発現と機能を活性化することで、速やかに造血幹細胞自体と造血が再生される分子機序を解明しました(Kubota S, EMBO J 2024)。この仕組みは、ヒトがん遺伝子発現データの解析から、血液がん幹細胞でも機能していることが推測されました。このように、私たちは、感染や炎症などの環境要因によるクロマチン変化が、血液がんの発症をどのように促進するかを解明して、難治性血液がんであるMDSなどに対する新たな標的法の概念を実証していきます。
指田吾郎は1996年に東京医科大学医学部を卒業。その後、東京医科大学血液内科の大屋敷博士の指導のもと、2002年に博士号を取得。2005年、ポスドク研究員として、米国ニューヨークのメモリアルスローン・ケタリングキャンサーセンターのNimer博士の研究室に渡米し、ELF転写因子の機能を研究。2009年、シンシナティ小児病院のHuang博士の研究室に移り、白血病のエピゲノム研究を開始した。2010年11月に帰国して、千葉大学の岩間厚志博士の研究室に移籍。2014年12月、熊本大学国際先端医学研究機構に自身の白血病転写制御研究室を開き、2016年12月に教授に昇進。
2026年4月から勤務ができる研究室秘書の方を探しています。ご興味のある方は、sashida-gr(at)igakuken.or.jp まで連絡をください。
2026年4月以降から、勤務ができる研究補佐員の方を探しています。ご興味のある方はsashida-gr(at)igakuken.or.jpまで連絡をください。
ストレス造血、血液がん、臓器連関に関する研究に興味のある方、質問がある方は、sashidag(at)kumamoto-u.ac.jp または sashida-gr(at)igakuken.or.jp まで連絡してください。博士号取得を目指す学部性、大学院生、意欲的なPhD研究者、基礎研究に興味のある臨床医など、さまざまな方からの連絡を常時待っています。