未来を話そう!センターの研究紹介

感染症医学研究センター
感染制御ユニット

yasui

インフルエンザ、デング熱、エムポックスなど様々な感染症の制御を目指し、ワクチン開発、病態モデルの解析、抗体の疫学調査を行っています

感染症は、私たちの日常生活や社会活動に大きな影響を与えます。たとえば、2019年12月に初めて報告された新型コロナウイルス(COVID-19)は、瞬く間に世界中へ広がり、パンデミックを引き起こしました。高齢の方や持病をお持ちの方は重症化しやすい傾向があり、健康な方でも命を落とすケースが報告されました。

感染制御ユニットでは、国がリスクの高い順に指定した「重点感染症」などの標的ウイルスを対象に、予防(ワクチン開発)、診断(疫学調査)、治療(病態モデル解析)の3つにフォーカスした研究を行っています。今後のウイルスの突発的な感染拡大を抑え込むために、どのようなウイルスが発生した場合でも迅速に対応できる体制作りを目指しています。

感染制御ユニット
安井 文彦 ユニットリーダーが解説します。
Fumihiko YASUI
Unit Leader
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感染制御ユニット
安井 文彦 ユニットリーダーが解説します。


Fumihiko YASUI
Unit Leader

どんなことに役立つの?

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私たちが研究している「DIs株」を用いたワクチンは、既存のワクチンの弱点である「ウイルスの変異による効果の低下」や「副反応の強さ」を克服し、初期感染そのものを抑える効果が期待されています。このワクチンは常温保存も可能で、接種の負担軽減が見込まれます。

また私たちは、感染がどのように広がるのかについての研究もしています。COVID-19については、都立病院などと協力しながら、都内での大規模な抗体調査を行いました。これらのデータは、都民の免疫状態の予測や、行政が効果的な感染症対策を決定する際の科学的根拠(エビデンス)として役立てられました。

感染制御の最前線

変異株をすり抜けない!
長期免疫を叶える次世代ワクチン「DIs株」の開発

—— 現在のCOVID-19ワクチンにはどのような課題があり、開発中の「DIs株」はどう解決するのでしょうか?

COVID-19のパンデミック以降、これまでにない速さで多くのワクチンが開発され、接種が進みました。特に、mRNAワクチンという新しい技術で作られたワクチンの普及は、感染症対策に大きな変化をもたらし、重症化や死亡のリスクを減らすのに役立ったと考えられています。

しかし、SARS-CoV-2ウイルスは絶えず姿を変え(遺伝子変異)、新しい変異株が次々と現れて、流行を繰り返しています。

私たちはこのような変異ウイルスにも対応できる、次世代ワクチンの開発を進めています。このワクチンは、DIs株にSARS-CoV-2ウイルスの表面にある「スパイクタンパク質」の遺伝子を組み込んだものです。

ウイルスの表面にある「スパイクタンパク質」は変異しやすいため、従来のワクチンでは狙った中和抗体が誘導されにくくなる難しさがありました。そこで私たちのワクチンでは、ウイルスを攻撃する抗体の産生だけでなく、免疫細胞であるT細胞の活性化を組み合わせるデザインにしています。これにより、ウイルスが多少姿を変えても、幅広く抑え込むことができます。

さらに、このワクチンは温度変化に強く、常温保存・輸送が可能という実用上の大きなメリットもあります。

感染制御の最前線〜図
ダブルの仕組みで、ウイルスを抑え込む!

世界が注目する独自の感染モデル。高齢者重症化の謎と「ロングコビット」に迫る

—— なぜ感染症研究においてマウスモデルが重要視され、先生方の独自モデルからは何が見えてきたのでしょうか?

ワクチンや治療薬の効果を確かめるとき、サルなどの非ヒト霊長類は動物倫理や費用、個体差の大きさから膨大な検証には向きません。そのため、「生体の宿主(ウイルスに感染した体)がどう炎症を起こし、どう免疫が動いてウイルスを排除するか」を無数の実験からデータ化するには、マウスが最も有用なのです。

しかし、初期の新型コロナウイルスは、通常のマウスには感染しませんでした。ウイルスが細胞に侵入する際に鍵穴となる「ヒトACE2(hACE2)」という受容体と、マウスの受容体では配列が異なり、ウイルスが結合できなかったからです。

hace2モデル

このモデルを使い、同じ量のウイルスを「若いマウス」と「高齢マウス」に投与する実験を行ったところ、若いマウスは回復するのに対し、高齢マウスだけが重症化するという高齢者重症化モデル「ELP/C」が構築できました。今はこの「宿主応答(体の反応)の差」を詳しく調べることで、高齢者が重症化する原因を突き止め、新たな治療標的(ターゲット)を見つける研究を進めています。

未来への展望

感染症の動態を可視化し、次のパンデミックへ「先回り」する社会へ

—— これまでの疫学調査やシミュレーションの成果は、私たちの未来の暮らしにどうつながっていきますか?

私たちが都立病院などの協力を得て実施した大規模な抗体調査では、潜在的な感染者が確定診断数の4倍近く存在していたことや、都心部で先に上がった陽性率が時間差で郊外(多摩地区など)へ伝わっていく、詳細な流れが浮かび上がりました。

また「ワクチン接種後の抗体価推移モデル」の構築により、高齢者におけるワクチンの3回目・4回目追加接種が、世代間の免疫格差をなくし、重症化を防ぐためにいかに重要であったかを科学的に証明できました。

これらの研究成果は、単なる過去のデータではありません。「どのタイミングで、どの地域に、どのような注意喚起や行政介入を行うべきか」を予測する強力な根拠になります。

私たちはこれからも、予測モデルの精度を上げ、次なる未知のウイルスが到来した際にも、皆さんが不安に怯えることなく、迅速かつ科学的な根拠に基づいて日常を守り続けられる社会の実現を目指します。

未来への展望

感染症の動態を可視化し、次のパンデミックへ「先回り」する社会へ

—— これまでの疫学調査やシミュレーションの成果は、私たちの未来の暮らしにどうつながっていきますか?

私たちが都立病院などの協力を得て実施した大規模な抗体調査では、潜在的な感染者が確定診断数の4倍近く存在していたことや、都心部で先に上がった陽性率が時間差で郊外(多摩地区など)へ伝わっていく、詳細な流れが浮かび上がりました。

また「ワクチン接種後の抗体価推移モデル」の構築により、高齢者におけるワクチンの3回目・4回目追加接種が、世代間の免疫格差をなくし、重症化を防ぐためにいかに重要であったかを科学的に証明できました。

これらの研究成果は、単なる過去のデータではありません。「どのタイミングで、どの地域に、どのような注意喚起や行政介入を行うべきか」を予測する強力な根拠になります。

私たちはこれからも、予測モデルの精度を上げ、次なる未知のウイルスが到来した際にも、皆さんが不安に怯えることなく、迅速かつ科学的な根拠に基づいて日常を守り続けられる社会の実現を目指します。

yasui
プラスアルファコラム

ウイルスはどのように広がる?——データで見えた都内の感染動態


yasui

感染症の対策を考えるうえで、「ウイルスが地域の中でどう広がっていくか」を知ることはとても重要です。

都立病院などの協力を得て行った大規模な抗体調査のデータを詳しく分析すると、東京の街における新型コロナウイルスの興味深い「動き」が見えてきました。

都心部で先に感染した人たちが、通勤・通学などで郊外へとウイルスを持ち帰り、そこからさらに周囲へ広げていく――。このことは事前に予想されていましたが、今回の研究を通じて、地域ごとの具体的な時間差や動態を明らかにすることができました。

知らず知らずのうちに、人の流れに乗って発信源からじわじわと広がっていくウイルスの性質。こうした地域の特性や広がり方のクセを科学的に可視化することは、次に新しい感染症が流行しそうになったときに「まずどこを重点的に警戒すべきか」を考える重要なヒントになります。

用語解説

1.ウイルスベクター技術:
無毒化したウイルスに任意の遺伝子を入れ、これを生体に感染させることで、細胞の遺伝子を書き換える技術。ここではヒトの遺伝子を入れたウイルスをマウスに感染させている。
2.肺線維症:
肺の組織が炎症を起こし、硬く厚くなってしまう(線維化する)ことで、呼吸がしづらくなる病気。ヒトがかかった場合は完治が難しい。
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