専門家の方へ

専門家の方へ 一覧
統合失調症ではカルボニルストレスを抑制する分子の血中濃度が減少
The regulation of soluble receptor for AGEs contributes to carbonyl stress in schizophrenia.
04

The regulation of soluble receptor for AGEs contributes to carbonyl stress in schizophrenia. Miyashita M, Watanabe T, Ichikawa T, Toriumi K, Horiuchi Y, Kobori A, Kushima I, Hashimoto R, Fukumoto M, Koike S, Ujike H, Arinami T, Tatebayashi Y, Kasai K, Takeda M, Ozaki N, Okazaki Y, Yoshikawa T, Amano N, Washizuka S, Yamamoto H, Miyata T, Itokawa M, Yamamoto Y, Arai M. Biochem Biophys Res Commun. 2016 Oct 21;479(3):447-452. Sep;68(9):655-65.

私たちのプロジェクトでは、これまでカルボニルストレスと統合失調症との関連を精力的に研究してきました。今回、私たちは統合失調症でペントシジンが蓄積するメカニズムを探るため、カルボニルストレスを消去する機能に着目して研究を進めました。AGEs受容体(Receptor for AGEs: RAGE)は膜型RAGEと呼ばれ、細胞膜上でペントシジンと結合し、細胞内で炎症性サイトカインの産生を促進します。一方、分泌型RAGE(soluble receptor for AGEs: sRAGE)は細胞膜貫通ドメインが欠損するため、細胞内へのシグナル伝達が生じることはなく、AGEsと結合したsRAGEは体外に排出されます。そのためsRAGEは抗炎症効果およびカルボニルストレス消去効果を発揮する分子として知られています。sRAGEには2種類あり、マトリックスメタロプロテアーゼで膜型RAGEが切断されて生じるタイプと、RAGEをコードする遺伝子(advanced glycosylation end product-specific receptor: AGER)の選択的スプライシングによって生じる endogenous secretory RAGE (esRAGE)があり、膜型RAGEの切断タイプとesRAGEの総和がsRAGEになります。私たちはまず、AGERに着目し、統合失調症と健常者でAGERの変異を網羅的に検索したところ、新規変異8つを含む28の変異を同定しました。また、esRAGEの血中濃度が顕著に低下する二つの変異(①rs2070600, ②haplotype 1= rs17846798 + rs2071288 + 63 bp deletion in promoter)を同定し、多重回帰分析によって①と②がesRAGEの血中濃度を強く規定する因子であることを見出しました。次に、両群でesRAGEの血中濃度を比較したところ、①と②を持つ対象者の割合は両群で等しいにもかかわらず、統合失調症でのみesRAGEの有意な低下を認めました。さらに、esRAGEと同様にsRAGEも統合失調症で有意に減少していました。今回、私たちの研究によって、統合失調症ではesRAGE、sRAGEの血中濃度が健常者より減少していることが明らかにされました。このことは、統合失調症ではカルボニルストレスを消去する働きや抗炎症作用が弱まっていることを示唆しています。


Page Top↑

専門家の方へ 一覧

Top↑