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カルボニルストレスを伴う統合失調症を対象にしたピリドキサミン大量併用療法の効果の検証
Pyridoxamine: A novel treatment for schizophrenia with enhanced carbonyl stress.
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Pyridoxamine: A novel treatment for schizophrenia with enhanced carbonyl stress. Itokawa M, Miyashita, Arai M, Dan T, Takahashi K, Tokunaga T, Ishimoto K, Toriumi K, Ichikawa T, Horiuchi Y, Kobori A, Usami S, Yoshikawa T, Amano N, Washizuka S, Okazaki Y, Miyata T. Psychiatry Clin Neurosci. 2017 Oct 24. doi: 10.1111/pcn.12613. [Epub ahead of print]

私たちはこれまでに、カルボニルストレス代謝経路に着目し、一部の統合失調症で有害な終末糖化産物の1つであるペントシジンが末梢血で蓄積することを同定してきました。ペントシジンはピリドキサミン(3種類あるビタミンB6の1つ)に捕捉されて体外に排出されます。そこで、ペントシジンが蓄積する統合失調症に対して、大量のピリドキサミン併用療法の効果を検証する医師主導型治験を実施しました。

本治験では、血漿ペントシジンが55.2ng/ml(健常人平均値+2SD)以上を満たす統合失調症入院患者10名を対象にしました。治験開始前までに内服していた抗精神病薬を維持したまま、大量のピリドキサミン(1200mg~2400mg/日;食事から摂取する量の約1000倍)を24週間かけて併用しました。主要評価項目は Positive and Negative Syndrome Scale (PANSS) および Brief Psychiatric Rating Scale (BPRS) のベースラインからの平均変化量とし、Drug-Induced Extrapyramidal Symptoms Scale (DIEPSS) と Columbia-Suicide Severity Rating Scale (C-SSRS)を用いて、薬剤性パーキンソン症状や自殺関連症状など安全性の評価を実施しました。

10名中8名で血漿ペントシジンが減少し、平均減少量は26.8%でした。PANSSは、2名でベースラインから20%以上の改善を認めました。カルボニル化合物の主要代謝酵素をコードする遺伝子Glyoxalase 1にフレームシフト変異を有する典型的なカルボニルストレスを伴う被験者では、ペントシジンが24.7%減少すると同時に、PANSSの陽性症状が約20%改善しました。また、薬剤性パーキンソン症状がベースラインと比較して20%以上改善した患者さんが4名確認されました。自殺に関連する有害事象は生じませんでしたが、2名でウェルニッケ脳症様の副作用が出現しました。両名とも、チアミン(ビタミンB1)の速やかな補充で後遺症を残すことなく完全に回復しました。

今回の治験によって、カルボニルストレスを伴う統合失調症に対して、ピリドキサミン大量併用療法の有効性が示唆されました。今後は、プラセボを用いたランダム化比較試験でピリドキサミンの有効性を検証する予定です。


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