品質管理プロジェクト

研究内容

細胞内のオルガネラの品質管理は、細胞が常に最高のパフォーマンスを発揮し、私たちの体が健康な状態を維持するために非常に重要なプロセスです。
細胞内品質管理の分子メカニズムを明らかにすることは、基礎研究のみならず医学・薬学などの幅広い分野に大きなインパクトを与えることが期待されます。
本プロジェクトでは細胞内の品質管理機構の新しい仕組みを発見し、その作動原理を分子レベルで理解することを目指します。
現在、以下の3つのテーマを軸に様々な「細胞内品質管理」の分子メカニズムを研究しています。

  • 新規オルガネラストレスの発見とそれに対応するオルガネラ品質管理機構
  • 特定の機能タンパク質に特異的な新規品質管理機構
  • 新規因子によるオートファジー制御の分子機構

▶ 新規オルガネラストレスの発見とそれに対応するオルガネラ品質管理機構

細胞の中にある様々なオルガネラは、それぞれが複雑で異なる機能を持っています。そのため、各オルガネラにはそのオルガネラ特異的なストレス条件が存在することが考えられます。
例えば、ミトコンドリアを構成する二枚の脂質膜上には、オルガネラの外から中へ必要なものを運び込むためのゲート(チャネル)が存在し、ミトコンドリアの中には、タンパク質を分解する酵素(プロテアーゼ)などが存在します。わたしたちは最近、ミトコンドリア膜上にあるチャネルが詰まって内部へのタンパク質の輸送が停滞してしまうことが、ミトコンドリアの品質の低下を引き起こすストレスになることを発見しました。さらに、その条件下において別のミトコンドリアタンパク質がプロテアーゼにより特異的に分解される現象を見出しました。わたしたちはこのような、オルガネラにユニークなストレスと、それに対応する新しい品質管理システムに着目して、研究を行っています。

ミトコンドリア内へのタンパク質輸送とミトコンドリアストレス

▶ 特定の機能タンパク質に特異的な新規品質管理機構

細胞内ではたらくタンパク質は、正しい立体構造を取ることで機能します。多くのタンパク質は単独ではそのような構造を形成できないため、分子シャペロンに代表される介在者の助けを借りています。 さらにタンパク質の中には、リガンドの種類によって常にダイナミックに構造を変換させることで機能するタンパク質があります。
そのようなタンパク質の品質維持のためには、「構造の取り間違いを防ぐための仕組み」によって、常にサポートされる必要がありますが、これまであまり着目されていませんでした。
わたしたちは近年、「常に構造を変化させるタンパク質」のフォールディングを手助けする新しいタイプのシャペロン様因子を発見し、その分子機能の解析に取り組んでいます。


▶ 新規因子によるオートファジー制御の分子機構

オートファジーは、不要なタンパク質や機能不全に陥ったオルガネラなどを分解・除去するシステムです。哺乳類だけでなく、酵母や植物など様々な生物種に備わっています。 対象物を脂質膜で包み込み、リソソームとの融合によって積荷を分解する過程では、たくさんの種類のタンパク質が相互に関係し合ってはたらいています。
わたしたちは近年、哺乳類細胞において、オートファジーの過程で形成される脂質膜に集積する、新しいタンパク質を同定しました。培養細胞を用いた解析により、それらが脂質膜に局在するメカニズムや、オートファジーを促進するはたらきなどを明らかにしましたが、具体的にどのような分子機能がオートファジーに重要なのかなど、まだ明らかになっていない機能の解明に向けて、解析を続けています。
わたしたちが同定した新規タンパク質のうちの一つは、ヒトの神経疾患の原因遺伝子として報告されたため、マウスなどのモデル生物を用いて、オートファジー不全と疾患発症の関係を調べ、細胞内品質管理の破綻による疾患発症の分子メカニズムを明らかにしていきます。

オートファジー制御の分子機構の研究

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