運動機能回復のメカニズムを研究し、「人工神経接続」などの技術を開発しています
脳機能再建プロジェクト
西村 幸男 プロジェクトリーダーが解説します。
「人工神経接続」という新しい技術が使えるようになれば、リハビリテーションの効率は格段に上がります。また、重度の損傷でリハビリテーションができなかった患者さんでも再び身体が動かせるようになる可能性があります。自分の力で再び立ち上がり、歩けるようになりたいという患者さんの願いをかなえることができるかもしれません。
—— 脊髄損傷とはどのような状態を指すのですか?
歩く、手を上げる、座るなどの動作を行う時は、脳が指令を出しています。そして、その信号が脊髄の中にある神経を伝って、各筋肉に届けられています。しかし、スポーツや交通事故などで脊髄に損傷が起きて神経が途切れてしまうと、そこから先の筋肉には信号が届かなくなり、思いどおりに身体を動かすことができなくなってしまいます。また、手や足で何かを触っても、その情報が脳に届かないため、何も感じなくなってしまいます。
こうした脊髄損傷の患者さんは、若い人やスポーツ選手が多いのも特徴です。脳は正常で意識がしっかりしているのに身体が動かないという状態は、患者さんにとって精神的なストレスが大きく、うつ病を併発してしまう人も少なくありません。
我々は、彼らの「再び思うように身体を動かしたい」という願いをかなえるため、運動機能回復のメカニズムを研究し技術を開発しています。その一つが「人工神経接続」です。

—— 脊髄損傷とはどのような状態を指すのですか?
歩く、手を上げる、座るなどの動作を行う時は、脳が指令を出しています。そして、その信号が脊髄の中にある神経を伝って、各筋肉に届けられています。しかし、スポーツや交通事故などで脊髄に損傷が起きて神経が途切れてしまうと、そこから先の筋肉には信号が届かなくなり、思いどおりに身体を動かすことができなくなってしまいます。また、手や足で何かを触っても、その情報が脳に届かないため、何も感じなくなってしまいます。
こうした脊髄損傷の患者さんは、若い人やスポーツ選手が多いのも特徴です。脳は正常で意識がしっかりしているのに身体が動かないという状態は、患者さんにとって精神的なストレスが大きく、うつ病を併発してしまう人も少なくありません。
我々は、彼らの「再び思うように身体を動かしたい」という願いをかなえるため、運動機能回復のメカニズムを研究し技術を開発しています。その一つが「人工神経接続」です。

—— 「人工神経接続」とはどのようなものでしょうか?
脊髄損傷の場合、損傷しているのは脊髄の一部分だけで、脳の機能は正常です。また、脊髄も損傷部分より下部は機能が残っています。ですから、脳の活動をコンピューターで解析して電気信号に変え、損傷箇所を迂回うかいして機能している脊髄につなぐことができれば、失った機能は回復できます。そのつなぎ合わせる技術を「人工神経接続」といいます。
これには、手術する方法と手術しない方法と、大きく2通りのやり方があります。
手術する方法は、信号を送る脳と受け取る脊髄の両方に手術を施し、電極を埋め込みます。脳の活動記録を電気信号に変換するコンピューターは、ちょうど折りたたみ式携帯電話ほどの大きさで持ち歩きが可能です。こちらは、リハビリテーション(以下、リハビリ)では治らない患者さんを想定していますが、安全面や倫理面のハードルも高く、実用化はまだ難しい状況です。
手術しないタイプは、損傷を受けていない筋肉の活動を反映した脳の信号をコンピューターで読み取って、その信号を磁場に変換し、その磁場を使って脊髄に脳からの信号を届けます。こちらの装置は比較的大がかりなものになりますが、リハビリで高い効果が期待できます。脊髄損傷や脳梗塞などの身体が動かなくなってしまうような運動マヒなどに有効だと考えています。
—— 「人工神経接続」とはどのようなものでしょうか?
脊髄損傷の場合、損傷しているのは脊髄の一部分だけで、脳の機能は正常です。また、脊髄も損傷部分より下部は機能が残っています。ですから、脳の活動をコンピューターで解析して電気信号に変え、損傷箇所を迂回うかいして機能している脊髄につなぐことができれば、失った機能は回復できます。そのつなぎ合わせる技術を「人工神経接続」といいます。
これには、手術する方法と手術しない方法と、大きく2通りのやり方があります。
手術する方法は、信号を送る脳と受け取る脊髄の両方に手術を施し、電極を埋め込みます。脳の活動記録を電気信号に変換するコンピューターは、ちょうど折りたたみ式携帯電話ほどの大きさで持ち歩きが可能です。こちらは、リハビリテーション(以下、リハビリ)では治らない患者さんを想定していますが、安全面や倫理面のハードルも高く、実用化はまだ難しい状況です。
手術しないタイプは、損傷を受けていない筋肉の活動を反映した脳の信号をコンピューターで読み取って、その信号を磁場に変換し、その磁場を使って脊髄に脳からの信号を届けます。こちらの装置は比較的大がかりなものになりますが、リハビリで高い効果が期待できます。脊髄損傷や脳梗塞などの身体が動かなくなってしまうような運動マヒなどに有効だと考えています。

—— 今後、リハビリを行うにあたっては、こうした技術は不可欠になるのでしょうか?
確かに、「人工神経接続」は遠い未来の技術ではなく、リハビリ効果も期待できます。しかし、効果を高めるのは、技術が全てというわけではありません。むしろ心の状態も非常に重要です。脊髄損傷の患者さんがうつになってしまうと、リハビリにも来なくなってしまいますが、うつ症状が軽く心の状態がポジティブな患者さんは回復効果も高いのです。これはリハビリの現場では経験的によく知られています。
そのことを我々は脳科学的に証明しました。特に運動機能が回復する早い段階において、やる気や意欲に関わる脳領域の「側坐核*」の働きを活発にすると、運動機能をつかさどる脳も刺激されて、運動機能の回復効果が高まるのです。
つまり、リハビリの効果を最大限に高めるためには、患者さんをやる気にさせる心理的なサポートも欠かせないのです。
スポーツ選手にとって、勝つことはなによりのごほうびです。 「うれしい!」 「気持ちいい!」、その感情を得るために彼らは日々、厳しい練習を積み重ねています。反対に負ければ涙が出るほど悔しい。だから、さらなる練習に励むのです。時には苦しくて挫折しそうになることもありますが、周りの応援が力となってよりよいパフォーマンスを生み出すこともあります。スポーツ選手がいい結果を出すためには、こうした心の状態は非常に重要です。
患者さんの運動機能の回復においても、同様に心の状態は大切です。
喜・怒・哀・楽、周りからの応援などは、心にどんな影響を与え、運動機能の回復にどう関わっているのか。どんな心の状態にもっていけば、高いリハビリ効果が期待できるのか。スポーツ選手を参考にしながら、「心と運動制御のメカニズム」についても研究しています。