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研究成果

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− 英国科学雑誌「Scientific Reports」において研究成果を発表 –

カロリー制限による網膜神経細胞死の抑制に成功

公益財団法人 東京都医学総合研究所 視覚病態プロジェクトの郭 暁麗主任研究員らの研究成果が、英国科学雑誌「Scientific Reports」オンライン版で2016年9月27日に発表されました。

研究の背景

当プロジェクトでは2007年に世界初となる正常眼圧緑内障のモデルマウスを確立して研究を続けています。最近では薬剤に加えて、カロリー制限が神経保護に有効であることが報告されています。我々は正常眼圧緑内障モデルであるEAAC1欠損マウスにカロリー制限を行うと、病期の進行が抑制されることを見出しました。

研究の概要と成果

正常眼圧緑内障は日本人では最も多いタイプの緑内障です。今回の研究では一日置きの絶食によって、正常眼圧緑内障モデル動物における網膜神経節細胞死を抑制できるか検討しました。生後5週齢から12週齢まで、一日置きの絶食をしたマウスでは、網膜神経節細胞死が抑制されることがわかりました(図1A)。このことは光干渉断層計 (OCT)※ による、生きたマウスの網膜の可視化によっても確認されました(図1B)。また多局所網膜電位の計測により、視機能障害も改善することがわかりました(図2)。

詳しく調べると、一日置きの絶食により血中ケトン体濃度や網膜におけるヒストンのアセチル化が上昇し、神経栄養因子や抗酸化ストレス遺伝子の発現量が上昇することが確認されました。これらの複数の要因が、一日置きの絶食による神経保護作用に寄与すると考えられます。

図1
図2

発見の意義

緑内障は我が国で最大の失明原因です。本研究で私たちは、カロリー制限が緑内障の進行を抑制する可能性を動物実験で明らかにしました。カロリー制限は生活習慣病だけでなく、緑内障の予防にもつながるかもしれません。

用語説明

※光干渉断層計(Optical Coherence Tomography:OCT):
光の干渉原理を使い、近赤外線を利用して網膜の断層画像を取得する医療機器。眼科ではヒトの緑内障や加齢黄斑変性症などの診断に役立っている。動物実験でも同一眼の経時的観察に威力を発揮することから、薬剤による治療効果の判定が確実なものとなる。

論文名

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