順天堂大学医学部 准教授 神谷 和作
生まれつきの難聴の多くは、遺伝子の変化が原因で起こります。これまでは補聴器や人工内耳が主な対策でしたが、近年は原因となる遺伝子そのものを補う「遺伝子治療」の研究が世界中で進んでいます。本講演では、難聴はなぜ起こるのか、遺伝子治療とはどのような治療なのかをわかりやすく解説します。また、私たちが取り組んでいる、生まれつきの難聴を対象とした新しい治療法の研究や、将来の実用化に向けた取り組みについて、最新の成果を交えながらご紹介します。
東京都医学総合研究所 難聴プロジェクトリーダー 吉川 欣亮
年を重ねると、私たちの体のさまざまな機能は少しずつ衰えていきます。その中でも、聞こえは年齢とともに低下しやすく、多くの方は高い音から聞き取りにくくなります。約 65 歳頃から聞こえの低下を自覚する方が増え始め、80 歳を超えると、およそ 7 割の方に難聴がみられるとされています。しかし、耳の中で音を感じ取る「有毛細胞」と呼ばれる細胞は、一度傷つくと自然に回復することができません。
私たちは、聴力を回復させる段階にはまだ至っていませんが、加齢性難聴のモデルマウスを用いた研究で、特定の遺伝子の働きを利用することにより、聞こえの衰えを抑えられる可能性を見いだしました。今回の講座では、この研究成果や遺伝子治療への応用を紹介しながら、聞こえを守り、取り戻す未来の可能性についてお話しします。