
M. Miyashita, Z.C. Narita, J. Devylder, S. Yamasaki, S. Ando, K. Toriumi, S. Yamaguchi, M. Nakanishi, M. Hosozawa, S. Koike, K. Suzuki, K. Baba, J. Niimura, N. Nakajima, D.M. Anglin, G. Knowles, C. Morgan, M. Richards, M. Hiraiwa-Hasegawa, T.A. Furukawa, K. Kasai, A. Nishida, M. Arai, Examining glycation as a mediator linking bullying to psychotic experience and depressive symptom in adolescents, Mol. Psychiatry. (2026).
https://doi.org/10.1038/s41380-026-03521-7
思春期のいじめ被害は精神病様体験 [1] や抑うつ症状 [2] などの精神症状のリスクを高めることが知られています。しかし、いじめという社会的ストレスがどのような生物学的機序を通じて精神症状につながるのかについては、十分には解明されていませんでした。
終末糖化産物(advanced glycation end products: AGEs)は、糖化反応(Glycation)によって生体内で形成される分子の総称で、炎症反応や酸化ストレスに関与することが知られています。また、AGEsは様々な慢性疾患に関わるだけでなく、統合失調症との関連も注目されています [3, 4]。
そこで本研究では、思春期におけるいじめ被害と精神症状との関連において、AGEsがメカニズムの一端を担っている可能性について検討しました。
本研究では、Tokyo Teen Cohort(TTC)の縦断データを用いて、思春期におけるいじめ被害、代表的なAGEsであるpentosidine、および精神症状(精神病体験および抑うつ症状)との関連を検討しました。解析には、いじめ被害(12歳)、尿ペントシジン(14歳)、精神症状(16歳)という異なる3時点のデータを用いました。
まず、12歳時点のいじめ被害と14歳時点のペントシジン値との関連を検討したところ、いじめ被害を受けた群ではペントシジン値が有意に高いことが確認されました(adjusted β = 0.27, 95% CI 0.14–0.41, P < 0.001)。この結果は、社会的ストレスであるいじめ被害が、生体内のpentosidineの上昇と関連する可能性を示しています。
次に、14歳時点のペントシジン値と16歳時点の精神症状との関連を検討したところ、ペントシジン値は精神病様体験(adjusted β = 0.02, 95% CI 0.001–0.03, P < 0.01)および抑うつ症状(adjusted β = 0.21, 95% CI 0.09–0.32, P < 0.001)と有意に関連していました。
さらに、causal mediation analysis を用いて、いじめ被害と精神症状との関連におけるペントシジンの媒介効果を検討しました。その結果、いじめ被害と精神病様体験との関連の 28.0%、および抑うつ症状との関連の 19.2% がペントシジンによって媒介される可能性が示されました(表)。
欠損データはランダムフォレスト代入法で処理した。PMはTIE/TE、CIはデルタ法によって計算した。このモデルは、12歳時の年齢、性別、BMI、IQ、世帯収入、孤独感、体罰、母親・父親・友人との関係、近隣の結束力、性別不適合行動、問題のあるインターネット利用、ペントシジン、および精神病体験・抑うつ症状を調整した。
TE: 総効果、PDE: 純粋直接効果、TIE: 総間接効果、PM: 媒介割合、CI: 信頼区間、BMI: body mass index、IQ: intelligence quotient。
以上の結果は、思春期の社会的ストレスであるいじめ被害が、生物学的変化の一つであるGlycationを介して精神症状に影響する可能性を示唆するものです。本研究は、社会ストレスとその後の精神症状をつなぐ生物学的メカニズムの理解に貢献する知見であると考えられます。