研究紹介Research Info


依存症は、患者自身および社会にとって極めて深刻な問題です。2014年にアルコール健康障害対策基本法が施行され、また近年、危険ドラッグの問題が拡大しており、早急に対策を取る必要があります。


本プロジェクトでは、依存性薬物の有害性として依存症、有用性として鎮痛および発達障害に着目し、その作用機序の解明を通して3つのサブテーマ(依存症、鎮痛、発達障害)の研究を進めています。

「依存症の治療法および予防法の提案」、「テーラーメイド疼痛治療法の改良と適応拡大」、「発達障害候補治療薬の探索と臨床応用」という、3つの明確な社会還元レベルでの目標を設定しています。


依存性薬物の作用機序において重要な分子は、依存症、疼痛、発達障害の病態および治療のメカニズムにおいて共通して関わっています。 また、これらの分野横断的な研究課題では、分子レベル、動物レベル、ヒトレベル、社会還元レベルのそれぞれにおいて共通あるいは類似の研究手法を用います。 従って、同時にこれらの研究課題を進めることで、相加的、相乗的な効果を生ませ、効率的に研究を推進することができます。

依存症研究

依存症研究では、ドーパミンの脳機能における役割や幻覚剤の作用機序が明らかになり、依存症および精神病の発症メカニズムの解明に繋がると期待されています。 従来の抗精神病薬では治療することができなかった症状に対して、新たな治療法が提案できる可能性があります。 また、GIRK阻害剤がアルコール依存症治療において有用であることが検証されると期待され、さらに他の依存性物質の依存においても臨床応用が検討されると考えられています。 依存症治療においては精神療法が主流ですが、薬物療法の選択肢が広がり、依存症治療および予防の改善が期待できます。



鎮痛研究

鎮痛研究では、実施中のテーラーメイド疼痛治療法の有用性が検証されると期待されています。 また、新たに遺伝要因が同定され、この治療法が改良されると考えられています。 さらに、他の疼痛においてもテーラーメイド治療法が適応拡大されると期待でき、早期からの適切な疼痛治療が広く実現すると見込まれています。



発達障害研究

発達障害研究では、AD/HDおよび自閉症の病態メカニズムの解明が進むと考えられています。 特に自閉症に関しては、mTOR阻害剤の自閉症治療における効果が臨床試験によって明らかになり、世界で初めての自閉症主症状に対する治療薬とすることができる可能性があります。