体内時計プロジェクト
Circadian Clock Project

神経特異的スクランブラーゼXkr4の活性制御とその不全に起因する発達障害

演者 圓岡 真宏
京都大学 物質-細胞統合システム拠点 特定助教
会場 医学研講堂(Zoomとのハイブリッド形式)
日時 2023年9月6日(水)16:00~17:00

講演要旨

アポトーシスを起こした細胞の膜表面では、通常は細胞膜の内側にしか存在しないPhosphatydilserine(PS)が露出され、”eat-me”シグナルとして貪食細胞に認識・除去される。このPS の露出には、脂質を膜表面の内側と外側の双方に区別なく輸送するスクランブラーゼの活性化が必要である。私は神経特異的なスクランブラーゼであるXkr4に着目し、その活性化に必須な制御因子の同定するためのスクリーニングを行った。このスクリーニングを行う上での問題点として、アポトーシスを起こした細胞はそれ以上増えることなく死滅するため、通常スクリーニングを行うことは困難であるとされていた。そこで私はレンチウイルスsgRNAライブラリーを用いて網羅的に遺伝子を破壊した細胞から、アポトーシス刺激後スクランブリング活性を示さない細胞を回収し、DNA 抽出後にsgRNA 配列を含む領域をPCR 法により増幅、再びレンチウイルスベクターにsgRNA 配列をライブラリーとして再構築することで、細胞死により失われる遺伝情報の回収を可能にした。このプロセスを複数回行うことで、DNA修復酵素複合体の一つであるXRCC4 をXkr4 の活性化因子として同定し、その活性化機構を明らかにしている(Maruoka et al., 2021. Mol. Cell.) 。また近年私はXkr4の生体内での役割を明らかにする目的でノックアウトマウスを用いた行動解析や生化学的な解析を行い、その結果からXkr4の機能不全が発達障害を引き起こす可能性を見出したので、その発症機構への関与について議論したい。