体内時計プロジェクト
Circadian Clock Project

タンパク質プローブを用いた細胞内シグナル伝達機構解明への挑戦

演者 河村 玄気
東京大学理学系研究科化学専攻 特任研究員
会場 4階セミナー室
日時 2024年8月22日(木)15:30~17:00

講演要旨

遺伝子工学的に設計されたタンパク質プローブは生細胞内の様々な細胞内事象の解析に広く用いられている。私たちは発光タンパク質ルシフェラーゼを用いた分割型ルシフェラーゼ再構成法によるタンパク質間相互作用の検出や、光受容タンパク質を用いて特定のタンパク質を光により活性制御する方法について様々なプローブを構築してきた。
分割型ルシフェラーゼ再構成法を用いると、生細胞において標的タンパク質間の相互作用をリアルタイムに計測することができる。私たちはこの特徴を活かし、細胞が熱や紫外線照射などのストレスを受けた際に生じる概日時計系への影響を調べた。結果、時計タンパク質BMAL1と熱ショック応答系転写因子HSF1の一過的な相互作用が検出され、レポータ遺伝子アッセイなどと組み合わせて解析することでストレスを受けた際に生じる概日時計同調機構のモデルを提案してきた。また、光制御系を用いることで、細胞内で特定のタンパク質を活性化してその機能を分析することが可能となる。そこで、私たちは細胞内代謝制御において主要な役割を果たすSer/Thr キナーゼAkt2について光制御系を開発し、Akt2を選択的に活性化した際に細胞内で生じる転写物、代謝物の存在量変化のオミクスデータを統合して解析することで、Akt2が司る細胞内代謝制御ネットワークの描像に成功した。
本セミナーではこれらタンパク質プローブの設計原理や応用に加え、私たちの最新の取り組みについても合わせてご紹介させていただきたい。