講演要旨
システム生物学をドライブする各種オミクス技術は、核酸シーケンサーや質量分析計を用いた分子をターゲットとするオミクス(コンテンツ解析技術)を中心に発展してきた。一方、近年では空間トランスクリプトーム技術を始め、組織・臓器中の空間情報(コンテキスト解析)の重要性が認知されつつある。
本講演では、我々が開発を進める網羅的細胞解析(Cell-omics/セルオミクス)を用いた、組織・臓器の空間コンテキスト解析のアイデアと実装を紹介する。我々は組織・臓器内の全ての細胞と細胞回路をシステマチックに観察し解析するオミクスワークフローとして、3次元組織ラベリング、組織透明化、3次元全臓器・全身イメージング、画像情報解析を組み合わせたセルオミクス技術「CUBIC」を開発した。全細胞空間情報を活用したコンテキスト解析は、コンテンツ解析と別軸の多細胞系解析軸を提供し、臓器、組織、オルガノイド等の分析を行うための高度な技術基盤として機能しうる。
本講演では神経科学やがん研究への応用例を紹介すると共に、近年我々が開発に成功した、エンドユーザーが簡易かつ安価に導入できるライトシート顕微鏡descSPIMについても詳細を報告したい。
- 参考文献:
- Yoshikawa, Omura et al. Cancer Sci. in press
- Otomo et al. bioRxiv (2023) DOI: 10.1101/2023.05.02.539136
- Susaki et al. Nat Commun. (2020) 11:1982
- Susaki et al. Nat Protoc. (2015) 10:1709-1727
- Susaki et al. Cell (2014) 157:726-739
- ライトシート顕微鏡実践ガイド 組織透明化&ライブイメージング 洲﨑悦生/編 羊土社 (2023) ISBN 978-4-7581-2268-9