開催報告 | 東京都医学総合研究所
七田崇研究員
北園孝成先生
会場

平成31年1月17日(水曜日)

平成30年度第7回都医学研都民講座を開催しました

会場:一橋講堂

1月17日(木曜日)、当研究所では、一橋講堂において、「脳卒中の世紀」と題して、第7回都医学研都民講座を開催しました。今回は、九州大学大学院医学研究院院長の北園孝成先生を講師にお迎えしました。

まず、当研究所脳卒中ルネサンスプロジェクトの七田崇プロジェクトリーダーから、「燃えさかる!?脳卒中後の炎症の正体」と題してお話ししました。脳卒中は、ある日突然発症し、脳が傷つく病気で、脳の血管が詰まる脳梗塞と、脳の血管が破れて出血する脳出血及びクモ膜下出血の3つに分けられます。脳卒中になると、身体が傷ついた時と同じように、脳の傷口が腫れ、炎症が起こります。脳が腫れてしまうと、脳卒中の症状や病気は悪くなってしまいますが、炎症は1週間程度で次第に治まり、傷口は治り始めるそうです。つまり、脳が損傷すると、白血球が傷口を感知し、脳内に侵入してひとしきり炎症を起こし、その後、炎症を起こす物質を排除して、修復の機能を持つ細胞に転換するとのことでした。

続いて、北園先生から、「脳卒中にならないための健康管理」と題してお話しいただきました。脳卒中になる要因として、高血圧、糖尿病、脂質異常症、不整脈(心房細動)等が挙げられますが、あらかじめこれらの危険因子をきちんと治療することで、発症を抑えることが可能とのことでした。これ以外にも、例えば、塩分の摂取は1日に6グラム未満となるようにしたり、1日に1万歩は歩いたりするように心がけることも、脳卒中の予防にとって大切であるといったお話がありました。また、不幸にして脳卒中を発症してしまった場合には、一刻も早く病院に行くことが必要で、これにより麻痺等の後遺症の重さが左右されるとのことでした。

講演後のアンケートでは、「不整脈をチェックするために、毎日脈を計ることを習慣にしていきたいと思った。」といった御意見を多く頂きました。


写真右:上から七田崇研究員、北園孝成先生、会場の様子。

写真下:控え室にて(左:七田研究員 右:北園先生)。

左:七田研究員 右:北園先生
平井研究員
会場
会場

平成30年12月26日(水曜日)

第29回 サイエンスカフェin上北沢 「脳に砂糖はいらない?」 知っているようで知らない砂糖の秘密 を開催しました

会場:東京都医学総合研究所

平成30年12月26日(水曜日)、当研究所の講堂において、当研究所 神経細胞分化プロジェクトの平井志伸研究員を話題提供者として、サイエンスカフェ in 上北沢「『脳に砂糖はいらない?』知っているようで知らない砂糖の秘密」を開催しました。

まず平井研究員が、砂糖を始めとする炭水化物と、脳や身体との関係について講演を行いました。その中では、世の中には脳が活動するための唯一のエネルギーはブドウ糖であるといった話がありますが、必ずしも食事からのブドウ糖が必要なのではなく、アミノ酸やケトン体(※)からでも活動するためのエネルギーは産生されるといった説明がありました。また、講演の途中にはスタッフの中から被験者を選び、ショ糖(砂糖の主成分)、ブドウ糖(グルコース)、糖アルコール(エリスリトール)、果糖(フルクトース)及びデンプンのいずれかを溶かした水を飲み、その後、15分ごとの血糖値の変化を測定しました。

講演の後には、参加者は、講堂で実験するグループと研究室に移動してマウスの実験の動画を見ながら話を聞くグループに分かれて行動しました。まず、講堂での実験は、マウスの脳を使ってプレパラートを作成して、蛍光顕微鏡で観察しました。研究室での見学は、新しい記憶の獲得に必要と考えられている神経細胞の新生の観察をしたり、透明化した脳を手に取ったりしました。また、脳の形成異常や統合失調症、自閉症等の精神・神経疾患及び発達障害の発症に関係するたんぱく質、RP58についての講義も受けたりしました。

2グループが実験と見学をそれぞれ行った後、講堂に集合して、ショ糖等を飲んだ被験者の血糖値のグラフを見て、果糖を飲んだ被験者を当てるクイズを行いました。また、グラフの変化から、それぞれの糖の特徴について説明を行い、終了しました。

参加者は高校生から大人まで様々でしたが、参加したみなさんからは、「砂糖を摂り過ぎると脳の血管に障害を起こすことを知ったので気を付けたい」といった御意見を数多く頂きました。

※ ケトン体:飢餓状態等で糖質がエネルギーに変換されない際、脂質から産生されて、脳等の組織のエネルギー源となる物質。


写真右:上から平井研究員、会場の様子、研究室での様子。

写真下:プレパラート作成の様子、蛍光顕微鏡で観察する参加者。

プレパラート作成の様子、蛍光顕微鏡で観察する参加者
羽生先生
三苫先生
会場

平成30年12月20日(木曜日)

平成30年度第6回都医学研都民講座を開催しました

会場:よみうりホール

12月20日(木曜日)、当研究所では、よみうりホールにおいて、「加齢に負けないしなやかな脳」と題して、第6回都医学研都民講座を開催しました。今回は初めての平日夜間の開催で、東京医科大学主任教授羽生春夫先生及び同大学医学教育推進センター長三苫博先生を講師にお迎えしました。

まず、羽生先生から、「生活習慣から認知症を予防する」と題してお話しいただきました。認知症のうち過半数を占めるアルツハイマー病に関する調査では、発症の促進因子と防御因子がわかってきており、促進因子としては、高血圧や糖尿病等の生活習慣病、防御因子としては、ライフスタイル、運動習慣や知的活動等が挙げられるそうです。特に、生活習慣病を適切に治療していけば、認知症の前段階である軽度認知障害(MCI)からの進展をある程度抑えることができるそうです。一方、高血圧や糖尿病のコントロールが悪い場合は、脳の動脈硬化や梗塞が進行し、アミロイドβの産生促進や分解障害が起こり、認知機能の障害が進むとお話しいただきました。

続いて、三苫先生から、「病気・加齢から脳を守る仕組み」と題してお話しいただきました。年を重ねることや病気にかかることで脳の神経細胞は障害を受け、やがて失われ、認知症等の神経症状を発症します。残念ながらこれらの失われた神経細胞を補い機能を回復する治療法はありません。しかし、最近になり、脳には加齢や病気により失われた機能をある程度代償、回復する可能性(脳の予備能)があることが分かってきました。この機能の回復は、脳の障害の初期に限られるそうですが、動物園等の飼育動物に対する環境エンリッチメント(※)の考え方を応用し、日常生活を工夫することで、脳の予備能を活かした回復が可能であるとお話しいただきました。

講演後のアンケートでは、「認知症と生活習慣病との関係がわかってよかった。運動をすることで生活習慣の改善に努めたい。」といった御意見を多く頂きました。

※環境エンリッチメント:動物園等の飼育動物に対する福祉と健康を改善するための飼育環境の工夫のことであり、環境を豊かに充実させることで、自然における正常な行動を引き出すことを目的とする。


写真右:講演の様子。上から羽生春夫先生、三苫博先生、会場の様子

写真下:控え室にて。左から羽生先生、三苫先生、筧プロジェクトリーダー(運動障害プロジェクト)

演者(Speakers)
正井久雄所長
会場

平成30年12月19日(水曜日)

平成30年度第18回都医学研国際シンポジウムを開催しました

会場:東京都医学総合研究所

12月19日(水)、当研究所講堂において、「Structured nucleic acids : its recognition mechanisms, biology and diseases(特異構造を有する核酸:その認識機構、生物学、疾患)」と題して、第18回都医学研国際シンポジウムを開催しました。国際シンポジウムは国内、国外の研究者を招聘し、医学に関連する各種研究分野の最先端の研究成果について発表し、討議することを目的とします。今回は、国内からの3人の研究者の他に、諸外国から5人の研究者をお招きし、ゲノム上に存在する、あるいは細胞内で産生される、非標準型構造を有する核酸の構造、機能、そしてその疾患への関与に関して最先端の研究成果をお話しいただきました。

今回、シンポジウムは三部構成で進行し、第一部は、「DNA複製と構造を有する核酸」をテーマに、米国ミシガン大学のRobert S. Fuller先生、ワシントン大学医学部のPeter M. Burgers先生、米国ミシガン州のVan Andel 研究所のHuilin Li先生から、続いて、第二部は、「構造を有する核酸の構造、生物学および新技術への応用」をテーマに、中国、北京のInstitute of ZoologyのZheng Tan先生、当研究所の正井久雄所長、京都大学の杉山弘先生から、そして第三部では、「疾患と構造を有する核酸」をテーマに、フランス、モンペリエのInstitute of Human GeneticsのPhilippe PASERO先生、熊本大学の塩田倫史先生、大阪大学の中谷和彦先生からご講演をいただきました。2017年にノーベル化学賞を受賞したことで有名になったクライオ電子顕微鏡(※1)によるタンパク質高次複合体の構造解析、DNAの構造をオリガミのように自在に操る技術、ATR-X症候群(※2)の発症機序と治療に関する成果、ハンチントン病(※3)の原因遺伝子の構造変化を修正できる化合物など、多くの最新成果が発表されました。講演後の質疑応答の際には、活発な討論、意見交換が行われ、構造核酸に関して、化学、生物学、医学の視点から極めて多くの注目が集まっていることが実感されたシンポジウムとなりました。

今後も当研究所では、研究者や医療従事者等を対象に最先端の研究領域や社会的注目度の高いトピックをテーマとし、最先端の情報収集を行い、研究成果の国際的な発信を目指して国際シンポジウムを開催していく予定です。

※1:
タンパク質等の生体の高分子等を急速冷凍し、その構造を解析する透過型電子顕微鏡
※2:
日本では難病に指定されており、X染色体にあるATRX遺伝子の変異により発症する。主症状として、重度の精神運動発達の遅れがある。
※3:
運動機能や認知機能に影響を及ぼす、遺伝性、進行性の神経変性疾患。

写真右:上から正井久雄所長、会場の様子

写真下:上段左からRobert S. Fuller、Peter M.J. Burgers、Huilin Li、Zheng Tan、
    下段左から、Hiroshi Sugiyama、Philippe Pasero、Norifumi Shioda、Kazuhiko Nakatani

演者(Speakers)
西村プロジェクトリーダー
会場2
会場

平成30年11月30日(金曜日)

平成30年度第8回都医学研シンポジウムを開催しました

会場:ベルサール神保町アネックス

11月30日(金)、当研究所では、第8回都医学研シンポジウムをベルサール神保町アネックスにおいて開催しました。今回は2020年に東京オリンピックが開催されることを踏まえ、「スポーツ脳科学の創成」をテーマに行いました。

当日は、スポーツ脳科学について研究している大学や研究機関の研究者、大学院生・学部生、マスコミ等、大勢の方にご参加いただきました。

まず、第1部において、NTTコミュニケーション科学基礎研究所 柏野 牧夫 スポーツ脳科学プロジェクト統括からは、プロ野球選手等の打撃時における視覚運動情報処理の解明を進めており、①ボールを打つ際の眼球運動と身体運動の解析、②眼球の挙動に基づく注意範囲の推定、③打撃に関係する錯視のメカニズム、④無自覚的な視覚運動応答と打撃パフォーマンスの関係等について、お話しいただきました。次に、中京大学スポーツ科学部 荒牧 勇 教授からは、アスリートに対するMRI脳画像研究を通した、①競技種目の特徴と脳との関係、②試合本番に強い人の脳、③トレーニングによる脳への影響、④オリンピアンと普通の選手との脳の違い等について、お話しいただきました。さらに、東京大学大学院総合文化研究科 中澤 公孝 教授からは、パラアスリートへの研究を通じて、人間が強いモチベーションとともにトレーニングを長期に継続すると、脳の構造や機能がどう変化するのかを観察し、その機序を解明しようとしていることについて、お話しいただきました。

続く第2部において、筑波大学体育系ヒューマン・ハイ・パフォーマンス先端研究センター 諏訪部 和也 研究員からは、低強度運動でも脳の海馬が活性化し、継続すると神経の新生が生じ、空間認知機能も向上することについて、お話しいただきました。次に、当研究所脳機能再建プロジェクト 西村 幸男 プロジェクトリーダーからは、徒競走を例に、意欲と運動パフォーマンスを制御する中脳、走運動を生成する脊髄及び勝利した際の気持ちよさを生成する側坐核について、お話ししました。最後に、早稲田大学スポーツ科学学術院 彼末 一之 教授からは、スポーツ選手において、ハードトレーニングによって自動化された動作でも、試合でのプレッシャー等により意識に上ることで、スムースな動きができなくなることについてお話しいただきました。

今回のシンポジウムの参加者は、大学院生や学部生といった若い方々が多く、スポーツ脳科学の分野がまだ新しい研究分野であることがうかがえました。アンケートも好評で、ご参加いただいた方々には、この研究分野の現状と今後について理解していただく良い機会になりました。


写真右:上から西村研究員、会場の様子

写真下:左から西村研究員、柏野先生、中澤先生、彼末先生、荒牧先生、諏訪部先生

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