HOME広報活動 > 開催報告

開催報告などを掲載しています。







平成28年12月16日

第6回都医学研シンポジウム DNAとゲノム:二重らせん構造を超えて」を開催しました。

会場:新宿明治安田生命ホール

12月16日(金)、公益財団法人東京都医学総合研究所は新宿明治安田生命ホールにおいて、「第6回都医学研シンポジウム DNAとゲノム:二重らせん構造を超えて」を開催しました。

主催者代表として挨拶をした正井久雄副所長が引き続き講演を行いました。Nature Structural & Molecular BiologyやNature Communicationsなど世界的に著名な科学誌に研究成果が数多く掲載されており、今回は「右巻き、左巻き? 2重、3重、4重らせん? -形を変えるDNAの役割」と題して講演を行いまいした。ここ数年の間に、グアニン4重鎖(G4)構造がゲノムの転写・組換え・複製などの制御に関与する正井副所長の発見を始めとした知見が次々と報告され、これらの構造を形成しうる繰り返し配列の増幅が筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの疾患の原因にもなりうることが紹介されました。

次に、東京農工大学の長澤和夫教授は、「非B型DNAのケミカルバイオロジー」について講演を行い、DNAマイクロアレイ*1に、独自に開発した蛍光G4リガンド*2を作用させることで、約2,000種の新規G4形成配列を見出すことに成功したこと、種々の機能を付加した新規G4リガンド化合物を創成し、G4構造の機能解明に応用する研究を紹介しました。

次に、早稲田大学の大山隆教授は、「遺伝情報収納の基本原理」について講演を行いました。ゲノムDNAの物性として柔らかい領域、硬い領域を推定し、ゲノムの細胞核内収納をモデル化し極めて正確に推測することに成功しました。

次に、(公財)がん研究会の清宮啓之部長は、「DNAの形を標的とした新しい創薬へ」について講演を行いました。人工的に合成した新しいG4リガンドが、神経膠芽腫の元凶となる「がん幹細胞」の増殖を抑えることや、マウスに移植した神経膠芽腫細胞の腫瘍増殖を効果的に抑えることを見出し、ゲノム特殊DNA構造を標的とした化合物が極めてユニークな創薬の候補となることを示しました。

最後に、京都大学大学院の杉山弘教授は、「DNAオリガミと人工遺伝子スイッチ」について講演を行いました。DNAは化学合成法も確立し酵素反応と組み合わせればどんな長さのものでも正確につくれるため、近年分子材料としても注目されています。精緻なデザインに基づき、種々の形態のDNA構造を形成させることにより、種々の核酸化学・酵素反応のプラットフォームになります。またDNAオリガミは遺伝子の発現をオンーオフする人工遺伝子スイッチなど多様な応用が可能で、実際に顕微鏡下で可視化されるDNAオリガミとそのダイナミックなDNA酵素反応は、聴衆の目をひときわ引きました。講演者はそれぞれの分野の研究で世界のトップランナーであり、講演後も時間一杯まで質疑応答が続くなど、大変充実したシンポジウムとなりました。

*1 細胞内の遺伝子発現量を測定するために、多数のDNA断片をプラスチックやガラス等の基板上に高密度に配置した分析器具

*2 G4構造を安定化する化合物


写真右:正井副所長、長澤先生、大山先生、清宮先生、杉山先生

写真下:質疑応答の様子

前田信明

平成28年12月11日

サイエンスカフェin上北沢 「旅するニューロン」を開催しました。

会場:東京都医学総合研究所

12月11日(日)、(公財)東京都医学総合研究所の講堂において、「サイエンスカフェin上北沢 旅するニューロン」を開催しました。サイエンスカフェは、音楽を聴きお茶を楽しみながら、人間のからだに関するサイエンスを研究者と自由に語り合う場です。

第23回目となるサイエンスカフェは、小学生以上を対象に、脳を構成している1000億個以上のニューロンの成長の様子を、当研究所の神経回路形成プロジェクトの前田研究員がスライドを使って分かり易く話しました。実際の脳の中のニューロンの動きを動画で示しながらのお話に、参加した子供さんたちも静かに集中して聞き入っていました。

休憩中の音楽演奏を挟んで、次に、参加者に実際に実験を体験してもらいました。ネズミの脳の切片が付いたスライドを染色ビンに入れて染色し、染色したスライドにピペットマンでグリセリン※を載せて、顕微鏡で観察するというものです。参加者は、実験用の手袋をしてピペットを操り、顕微鏡を覗くという、普段できない体験を味わっていました。

その後、蛍光顕微鏡やニューロンの旅する様子を動画で観察するなど、参加者全員に体験してもらいました。

工夫をこらした内容に、参加者からは「ニューロンのことを知って良かった」「普段体験できない科学に触れて楽しかった。」といった声が多数寄せられました。

都民の皆さんの研究所として、今後ともこうした催し物を実施していきます。

※アルコールの一種。食品添加物として、甘味料、保存料、保湿剤などの用途がある。医薬品や化粧品には、保湿剤・潤滑剤として使われている。


写真:前田研究員、 初観察





平成28年12月9日

平成28年度第6回都医学研都民講座を開催しました。

会場:日経ホール

12月9日、公益財団法人東京都医学総合研究所は日経ホールにおいて、「思春期・青年期のこころの健康と成長を支えるもの」と題し、総合研究大学院大学理事・副学長、教授の長谷川眞理子先生、北海道医療大学教授の向谷地(むかいやち)先生を講師にお迎えして、第6回都医学研都民講座を開催しました。

今回の講演では、最初に長谷川先生から「思春期というライフステージの進化的意義」と題して講演を行いました。人の非常に長い子ども期、思春期は、大人に育てられている子どもの立場から社会を作る一員としての大人に転換する、他の動物にはない激動期であるとのことです。幼児期、子ども期を経て、12歳頃から19歳頃までの間が思春期に当たり、会話や読み書きの上達、おとなの暮らしへの順応など、人に固有の成長の時期になるとの講演でした。

次に、当研究所の西田研究員が「思春期のこころの健康を支えるもの:東京ティーンコホート研究から」と題して講演を行いました。経済的に恵まれている国の15歳の子どもたちの中で、孤独と感じているこどもの割合が30%台と日本で突出して高いとの主張でした。子どもの心の健康や幸せ度を含めた新たな健康政策が求められている中、10歳から2年おきに成長の様子を追跡研究する「東京ティーンコホート研究」では、子ども本人のみならず、親を含む大人が人に助けを求めたり、人を助けることによって子供たちの精神的な豊かさが支えられることが明らかになったなどの講演でした。

次に、向谷地(むかいやち)先生が、「思春期・青年期の回復力を支える仲間の力、自分を取り戻す言葉との出会い」と題して講演を行いました。患者さんが自分達のことを研究する当事者研究は、仲間と共に自由自在な方法で研究的対話を重ねて、自分らしい発想で新たな自分の助け方や理解を見出す研究です。自分たちの意識・判断そのものが個人の社会的・文化的環境に影響を受けて形成されていると考えられ、周りの環境が改善すると良い経過及び結果が現れてくる可能性があるとの講演でした。

最後に、当研究所の新井研究員が「思春期の脳と身体の健康を支えるもの:統合失調症の新たな病態仮説から」と題して講演を行いました。ストレスとは生体内のひずみの状態を表し、糖化ストレスは動脈硬化や糖尿病、網膜症、腎疾患などの疾患の原因となるとの主張でした。統合失調症の方の血液を調べたところ、糖化ストレスが溜まっていて、それを解毒するビタミンB6が減少している方が2割程度存在することがわかってきました。糖化ストレスの制御は、糖尿病や骨疾患などの疾患から起因すること。また、生活行動や食生活などの改善が脳と身体の健康の支えとなりうるとの講演でした。

4人の先生、研究員による思春期・青年期に対する幅広い多様性のある講演に、もっと詳しくお話を聴きたいとの感想が多く寄せられるなど、大変盛況に終わりました。


写真右:上から長谷川先生、西田研究員、向谷地(むかいやち)先生、新井研究員

写真下:控え室にて




平成28年11月18日

第15回都医学研 国際シンポジウムを開催しました

会場:東京都医学総合研究所

公益財団法人東京都医学総合研究所において、第15回 都医学研国際シンポジウムを11月18日に開催しました。担当は、ゲノム動態プロジェクトリーダーの正井久雄副所長です。正井副所長は、がんなどの疾患に関連するゲノム構造の多様性と継承・維持の分子機構の解明を目指す研究を行っています。

今回のシンポジウムは、「ゲノムの継承と安定性維持のメカニズム」と題し、Cold Spring Harbor研究所所長のBruce Stillman博士をはじめ国内外のトップクラスの研究者の参加を得て、活発な討論、意見交換が行われました。

正井副所長から開会の挨拶が行われた後、セッションが始まりました。

第1セッションでは、正井副所長を含め3名の研究者から「ゲノム複製起点とその活性化の時空間制御」についての講演を行いました。その後休憩を挟んで、Bruce Stillman博士が「染色体複製とORC複合体」と題して特別講演を行いました。お昼を挟んで、第2セッションでは「ゲノムの安定維持の制御」について、Ann Donaldson博士を含め3名の研究者から講演を、第3セッションでは「ゲノム複製のメカニズム」について、Anthony Carr博士をはじめ3名の研究者から講演、John Diffley博士から「精製タンパク質による再構成」と題して特別講演を行い、活発な質疑応答が行われるなど内容の充実した議論が展開されました。今回のシンポジウムで発表された内容は、がんなどの疾患の発生メカニズム、そして新しい治療法の開発にも密接に関連しており、研究者、医療関係者に多くの示唆を与えるものでした。

公益財団法人東京都医学総合研究所では、研究者や医療従事者等を対象に最先端の研究領域や社会的注目度の高いトピックをテーマとし、最先端の情報収集を行い研究成果の国際的な発信を目指して国際シンポジウムを今後も毎年開催していく予定です。


写真右:上から、Bruce Stillman博士、John Diffley博士、集合写真

写真下:セッション及び会場の様子



平成28年11月9日

世界脳週間講演会を開催しました

会場:東京学芸大学附属高等学校

11月9日、公益財団法人東京都医学総合研究所は東京学芸大学附属高等学校において「脳のデザイン、病のかたち」と題し、「世界脳週間2016講演会」を開催しました。

「世界脳週間」とは、脳科学の科学的な意義と社会にとっての重要性を一般の方々に理解いただくことを目的として世界的な規模で行われるキャンペーンです。わが国でも「世界脳週間」の意義に賛同し、「脳の世紀実行委員会(現・特定非営利活動法人 脳の世紀推進会議)」が主体となって、高校生を主な対象とした講演会などが各地で行なわれています。

医学研が開催した今回の講演会は、内原俊記研究員の「脳疾患の“すがた”を顕微鏡でとらえる」と楯林義孝研究員の「こころの病の“かたち”をどうとらえたらいいのか?」の2本を講演しました。

内原研究員は、ヒトの脳の発達から話を始めて、写真やイラストを使用して樹状突起やシナプスの構造と機能について分かり易く解説しました。その上で、脳の高次な機能を“複雑ないい加減さ”と定義してヒトの現実世界の変化への対応を表現しているとのことです。また、脳において病変の起こる場所と順序は疾患によって異なることや、発症する脳の部位によって認知症の種類が異なることなどを、切片図などを使って目に見える形で解説し、神経突起には早期から病変がみられることが分かってきたといった話を披露しました。

次に、楯林研究員は、組織切片を顕微鏡で調べ始めた時代は日々新たな発見が得られたが、近年は分子生物学や遺伝子操作技術等の進展により、脳のミクロレベルでの解析などが飛躍的に進んだとのお話でした。ただし、これらの解析で明らかになるメカニズムによってもヒトの高次脳機能の解明には至りません。高次脳機能を解明するためには、まだまだ研究を重ねていく必要があるとのことです。そうした研究の模索として、アメリカでは脳のかたちをより詳細に解りやすく「見える化」する新しいプロジェクトが始まっています。MRIなどの「見える化」により、こころの病のかたちがより詳細に理解され、より効果的な予防・治療法の開発が可能になるのではと期待されているとのご説明がありました。

高校生たちは、神経が集積した脳の活動と高次脳機能など、脳の持つ複雑なメカニズムに興味深く耳を傾け、講演終了後も質問が絶えず熱心な講演会となりました。


写真右:上から内原研究員、楯林研究員

写真下:講演の様子




平成28年10月20日

平成28年度第5回都医学研都民講座を開催しました。

会場:一橋講堂

10月20日、公益財団法人東京都医学総合研究所は一橋講堂において「うつと認知症―健康長寿社会の実現に向けてー」と題し、九州大学大学院医学研究院精神病態医学分野 神庭重信 教授を講師にお迎えして、第5回都民講座を開催しました。

今回の講演では、最初に当研究所の楯林研究員が、ストレスとうつ・認知症について講演を行いました。疫学調査によれば、うつ病の既往は認知症の発症を2倍程度増やすとのことです。うつ病の発症にはストレスが大きく関わっており、ストレスが神経回路の障害を起こし、その結果うつ病が発症するとのことです。認知症は、記憶、思考、理解、さらに言語などに関連する多数の高次脳機能の障害を伴う症候群で、異常行動や、うつ、幻覚などの行動、心理的な症状を伴います。認知症のうち5割~7割をアルツハイマーが占め、その最大の要因は老化であり、75歳から発症の割合は急速に増えます。血液検査でストレス状態を同定し、抗炎症薬を短期間服用してストレスダメージを軽減し、うつ、認知症の予防につなげることを目指して研究を行っていくとのお話でした。

次に、神庭先生が高齢者の心の健康と対策について講演を行いました。認知症は認知機能が何らかの原因により低下したため、日常生活や社会生活に支障をきたしている状態です。物忘れや日常生活動作の障害、精神及び行動の障害が認められます。これらの症状は脳神経細胞の損傷によって起こり、その症状によって脳の損傷部位は異なります。認知症の約85%はアルツハイマー病か脳卒中等の血管性認知症が原因です。血管性認知症は糖尿病や喫煙、飲酒などにより血管がつまったり、破れたりして起こります。アルツハイマー病は、主に側頭葉と頭頂葉が障害されることにより起こります。いかに発症する前に予防できるかが重要で、日々の生活習慣が認知症につながるとのお話でした。高血圧や糖尿病、喫煙などの危険因子を抑えて、和食と牛乳やヨーグルトを食べること、運動を習慣づけることで認知症のリスクが減少するとのご説明でした。

講演終了後の質疑応答も時間一杯まで途切れることがなく充実した講演会となりました。


写真右:上から楯林研究員、神庭先生、講演の様子

写真下:控え室にて





平成28年9月15日

平成28年度第4回都医学研都民講座を開催しました。

会場:一橋講堂

9月15日、公益財団法人東京都医学総合研究所は一橋講堂において、「高齢者のてんかんと認知症」と題し、第4回都医学研都民講座を開催しました。外部講師には、新宿神経クリニック院長の渡辺雅子先生と横浜市総合保健医療センター地域精神保健部長の塩崎一昌先生をお迎えしました。

今回の講演ではまず、司会のシナプス可塑性プロジェクトリーダー山形研究員が医学研での研究内容についてスライドを用いて概説しました。

次に、当研究所の島田研究員が講演を行いました。こどもに多いてんかん発作は、「けいれん」や「ひきつけ」のイメージがありますが、高齢者の場合は、口をもぐもぐ動かす、ぼんやりする等の症状がてんかん発作にあたります。これは高齢者の成熟した脳では側頭葉など限られた脳の発作のため症状が緩やかになるとのことでした。また、このような高齢者のてんかんの多くで見られる症状は、認知症とも重複するため、一見すると認知症のように見えるとのことです。わかり易く身近な説明に聴講者の方々は熱心に聞き入っていました。

次に、渡辺先生からは、臨床医の視点から高齢者のてんかんの原因は血管障害や認知症などが50%を占めるとお話がありました。実際の症例を元にした解説や高齢者のてんかん発作を動画で示され、高齢者のてんかんは薬で止まる率が高く、再発も少ないため脳計測も含めた診断をきちんと行って治療に結び付けることの重要性を示されていました。また、100人に1人の割合で誰でも罹る可能性があり、家族が正しく理解し、見守ることが重要とのお話でした。

最後に、塩崎先生からお話しがありました。横浜市総合保健医療センターの物忘れ外来では、年900件の物忘れの鑑別診断を行っています。受診した高齢者の約20人に1人は脳波上てんかん性放電が見られ、ほぼ側頭部に現れるとのことです。高齢で発症したてんかんは、発症年齢と発作のタイプに応じて投薬量を調節して治療することが必要であること、具体的に推奨できる薬、抗てんかん薬の治療効果について、専門家としてわかり易く話され、聴講者は熱心にメモを取っていました。


写真右:上から山形研究員、島田研究員、渡辺先生、塩崎先生、講演会の様子

写真下:講演前のひと時


平成28年8月19日

サイエンスカフェin上北沢 「タンパク質から始めよう身近なサイエンス」を開催いたしました。

会場:東京都医学総合研究所

8月19日(金)、(公財)東京都医学総合研究所の講堂において、「サイエンスカフェin上北沢 タンパク質から始めよう身近なサイエンス」を開催いたしました。サイエンスカフェは、音楽を聴きお茶を楽しみながら、人間のからだのサイエンスを研究者と自由に語り合う場です。

第22回目となるサイエンスカフェ、今回は夏休み親子企画と銘打ち、からだにとって不可欠な「タンパク質」の働きについて当研究所のカルパイン※1プロジェクトの小野研究員がスライドを使って分かり易く話しました。

タンパク質の成分や形などについて、模型の映像を見せるなど、分かり易いお話に、参加した子供さんたちは、目を輝かせて聞き入っていました。

次に、ピアノ、バイオリン、トロンボーン、サックスの研究員による本格的な演奏が行われ、その迫力は会場内を旋律で満たしました。

休憩を挟んだ第2部は参加者が実験を体験するコーナーです。1つ目はアミノ酸を見つける化学反応の実験、2つ目は果物が持つプロテアーゼ※2の働きを調べる実験です。子どもさんたちは実験用手袋をしてピペットを操り、器用に普段できない実験を楽しんでいました。

工夫をこらした内容に、参加者からは「普段体験できないことができて楽しかった。」「サイエンスという世界ですが、親しみのもてる会だった。」「音楽も楽しませていただいてリラックスできた。」といった声が多数寄せられました。

都民の皆さんの研究所として、今後ともこうした催し物を実施していきます。

※1 カルパイン:他のタンパク質を切断することにより細胞や生体をより良い状態に調節する酵素
※2 プロテアーゼ:タンパク質中のペプチド結合を切断する酵素


写真右:お話をする小野研究員

写真下:ピペット操作の実験に真剣な子どもたち、 研究員による演奏


平成28年8月1日〜8月5日

基礎・技術コース「神経系への遺伝子導入法」を実施しました。

会場:東京都医学総合研究所

神経系に遺伝子を導入することは、神経系での遺伝子の働きや、細胞動態の解析に重要です。通常の培養株細胞に遺伝子を導入するのは比較的簡単ですが、神経細胞に導入するのは簡単ではありません。とくに、生きた個体の脳の神経細胞となると、特別な方法が必要です。わたしたちは、その方法として、子宮内エレクトロポレーション法とウイルスベクター法を用いています。今回、この二つを中心に実習をしました。そのほか、それに関連して、マウス胎児の大脳皮質からの初代培養や簡単な遺伝子工学作業の実習を行いました。大学助教2名、大学院生1名、医学生1名、計4名が参加してくださり、みなさん熱心で、巧みな実験の工夫など、こちらに感心することの多いセミナーでした。

(神経細胞分化プロジェクトリーダー 岡戸 晴生)


写真:実習の様子




平成28年8月3日〜8月4日

「都立高校生のための都医学研フォーラム」を開催しました。

会場:東京都医学総合研究所

8月3日、4日の2日間、東京都教育庁の協力の下に(公財)東京都医学総合研究所において「都立高校生のための都医学研フォーラム」を開催しました。

このフォーラムは、医科学・生物学研究に興味を持つ都立高校の生徒たちに、都医学研の研究成果を分かりやすく伝え、研究室や中央の機器室等で実験や機器操作を実際に体験してもらうことにより、研究への理解を深めて将来的には進路選択の一助となることを目的としています。都立高校17校から合計69名の生徒さんが参加しました。

午前は、ゲノム動態プロジェクトリーダー 正井 久雄 副所長から「ゲノムに隠された秘密を解き明かす」というテーマで、DNAとゲノム、染色体、細胞周期、エピゲノムなどについて、次に再生医療プロジェクトリーダー 宮岡 佑一郎 主席研究員から、「これから生命科学研究者を目指すかもしれない高校生への1つの指針」というテーマで、ご自身が研究者になるまでの経緯や経験、留学時代のお話などについて講演が行われました。

午後は、神経病理解析室や哺乳類遺伝プロジェクト研究室、電子顕微鏡室、依存性薬物プロジェクト研究室の4か所の研究室をそれぞれ40分ずつ順番に見学して、モデルマウスを使った実験やピペットマン等の機器操作を実際に体験してもらいました。

その後、講演をした研究者、見学をした研究室の研究員を交えての意見交換会が行われ、生徒さんたちから興味、疑問に基づく質問が出され大変活発な質疑応答が交わされました。


写真右:上から、正井副所長・宮岡研究員、質疑応答の様子

写真下:見学の様子/神経病理解析室(新井副所長)、哺乳類遺伝PJ・モデルマウスを使った実験(吉川研究員・鈴木研究補助員)、依存性薬物PJ・ピペット操作体験(青木研究員)、電子顕微鏡室(三上技術研究員)



平成28年7月25日〜7月28日

夏のセミナー 臨床教育コース「神経病理ハンズオン」

会場:東京都医学総合研究所

今年も7月25日から4日間にわたって「神経病理ハンズオン」を開催しました。

基本は顕微鏡実習ですが、ホールスライドイメージを映すマルチモニターを用いて、観察のポイントをモニターで解説しながらの実習スタイルです。デジタル教材はデジタルパソロジーコーディネーターの植木さんと八木さんに作成して頂きました。

内部講師は、全体の統轄として神経病理解析室の新井信隆・副所長が務め、関絵里香・主席技術研究員が「染色法とミクロ」、小島利香・技術研究員が「デジタルパソロジー」というテーマで講義を行いました。

外部講師は、原田一樹先生(防衛医大法医学)に「頭部外傷」について、石澤圭介先生(埼玉医大病理)に「変性疾患」について毎年レクチャーをお願いしています。

実習中は、講義が終わった後も多くの受講生が残って熱心に顕微鏡を覗いている姿が印象的でした。実習後のアンケートでは沢山の症例を鏡顕できてとても勉強になったとのご意見が多く、受講者の方に有意義な4日間を提供できたことを大変嬉しく思います。

(文・小島利香)


写真右:上から関絵里香・主席技術研究員が染色法の選択などについてレクチャー、10人用ディスカッション顕微鏡で原田一樹先生が頭部外傷をレクチャー。

写真下:小島利香・技術研究員がデジタルパソロジーの最新情報をレクチャー。





平成28年7月29日

平成28年度 第3回都医学研都民講座を開催しました。

会場:一橋講堂

7月29日、公益財団法人東京都医学総合研究所は一橋講堂において、京都産業大学 生命システム学科教授 板野 直樹 先生を講師にお迎えし、当研究所の 神村 圭亮 研究員とともに「ヒアルロン酸の科学から健康長寿を考える」と題し、第3回都医学研都民講座を開催しました。

今回の講演では、最初に神村研究員から糖鎖についてのお話がありました。糖鎖とは糖が多数つながった一群の化合物であり、種類は様々であること、多くはタンパク質と一体となった糖タンパク質として存在しています。糖鎖は身体の中で、エネルギー源であり、細胞の形を維持し、他の細胞との間で情報をやり取りするなどの役割を担っています。

血液型は糖鎖の形で決まるという説明には、多くの聴衆から感嘆の声があがりました。その後、血液型に関するクイズを行い、さらに研究員が現在取り組んでいるヘパラン硫酸研究の説明を行いました。

次に板野教授からはヒアルロン酸の講演が行われました。そもそもヒアルロン酸は、競走馬の関節炎の治療のため関節液として使用してから注目を集めていました。糖鎖の一種であり、粘性、弾力性、保水性に優れています。ヒアルロン酸は、1934年に牛の目の硝子体から発見され、ヒトの体内の様々な組織にも存在しています。皮膚にあるヒアルロン酸は50歳を過ぎると急速に少なくなることがわかっています。ヒアルロン酸を飲めば増えるのかというと、明確にはわからないのが現状です。ただし、ヒトの細胞レベルの解析では、ストレッチを行うとヒアルロン分泌が促進され、ブドウ糖など適切な栄養を摂取することによりヒアルロン酸が作られるようです。最終的には適切な運動、適切な栄養補給が健康を保つためには重要であるというお話で終わりました。

講演終了後も熱心な受講者から質問が絶えず、とても充実した講演会となりました。


写真:右、上から神村研究員、板野先生、講演会、質疑応答の様子

写真:下、講演前に控え室にて(左から神村研究員、前田研究員、板野先生)




平成28年6月30日(木)〜7月1日(金)

第14回都医学研 国際シンポジウムを開催しました

会場:東京都医学総合研究所

6月30日と7月1日の2日間にかけて、第14回 都医学研国際シンポジウムを開催しました。主催者は、分子医療プロジェクトリーダーの芝崎太参事研究員です。昨年日韓国交正常化50周年記念の祝賀も含め実施予定でしたが、開催直前に韓国内でMERSコロナウイルスの感染者が増加したため今年に延期となっていました。芝崎研究員は、がん・感染症を中心とした分子標的の探索と解析を進め、分子標的による診断・治療法の開発などを目指す研究を行っています。

今回のシンポジウムには、研究交流覚え書きを締結した韓国の延世大学、高麗大学に加え、ソウル国立大学、江原大学の主要4大学から22名のトップクラスの研究者の参加を得て、活発な討論、意見交換が行われました。田中所長から開会の挨拶が行われた後、セッションが始まりました。

1日目第1セッションでは、当研究所の松田憲之研究員を座長に、5名の研究者からタンパク質分解についての研究成果を、第2セッションでは、当研究所の佐伯泰研究員から引き続きタンパク質分解について研究成果が披露されました。昼食を挟んで、第3セッションは、齊藤実研究員を座長に脳機能と変性疾患、第4セッションは小池智研究員を座長に感染症疾患、と充実した内容の講演が行われました。終了後には会場を変えて、医学研から研究員学生を含めた26名のポスターセッションが行われ、活発な議論が行われました。

2日目も正井久雄副所長を始め、原孝彦研究員、芝崎太研究員、糸川昌成研究員の4人の研究員を座長として各演者から研究成果が披露され、様々な分野から内容の充実した議論が展開されました。

公益財団法人東京都医学総合研究所では、研究者や医療従事者等を対象に最先端の研究領域や社会的注目度の高いトピックをテーマとした国際シンポジウムを今後も毎年開催していく予定です。


写真右:上から芝崎研究員、講演、セッションの様子、ポスターセッション

写真下:参加研究員の皆さんと



平成28年6月20日(月)〜23(木)

夏のセミナー「睡眠研究に関する基礎技術を習得」を実施しました。

会場:東京都医学総合研究所

6月20日(月)から23日(木)までの4日間にわたり睡眠研究に関する基礎技術を習得するためのセミナーを実施しました。

初日の睡眠科学の基礎と臨床の講演では、現代の社会問題となっている睡眠障害等についてのご説明がありました。また2日目の動物の睡眠脳波についての講演では、睡眠覚醒研究における動物モデルの有用性等についてのお話がありました。他にもヒトの睡眠研究や睡眠と遺伝との係わりについて、など医学研ならではの講演を行いました。

一方で、参加者自身で体験していただくための実習を多く行いました。

脳波測定の実習やマウス、ラットを使った脳波電極手術の実習を行いました。また、脳内の伝達物質測定のための「ボルタメトリー法」「マイクロダイアリシス法」のデモなど盛りだくさんの内容で参加者には充実した時間を過ごしていただくことができました。

写真:夏堀研究員、本多技術員によるデモの様子


平成28年6月15日、23日、30日

東京都 平成28年度在宅難病患者訪問看護師養成研修を開催しました。

会場:東京都医学総合研究所 講堂 他

平成28年6月15日、23日、30日の計3日に「東京都受託研修事業 在宅難病患者訪問看護師養成研修」を開催しました。

この研修は、年に2回、基礎コースと応用コースに分けて毎年開催しています。 難病患者に対する訪問看護は、病状の進行や療養過程に応じた生活障害を予測的に判断し個別的でタイムリーな支援が必要です。そのための知識と技術は非常に専門性が高く、研修の機会が求められています。本研修でも、定員を超える多くの訪問看護師、保健師よりご応募いただきました。

プログラムは、専門医による疾患及び治療、行政担当者による難病施策、高度な在宅医療の支援知識と技術演習など、難病の専門的知識・技術を凝縮した講演がありました。さらに、公開シンポジウム「難病療養者の暮らしを取り巻く看護の輪・和・話の拡がり」では、病院と在宅をつなぐ看護や地域の安全をまもる保健活動の先駆的な取り組みのご紹介、実際に在宅で人工呼吸器を装着しながら積極的な社会活動を実現されている療養者からの看護師保健師へのメッセージ、その療養者の活動・生活をそっと医療の立場で支える訪問看護活動に関する講演があり、会場の皆さまとともに「『話』により『和』になって『輪』が拡がる」ことを確認し、共有した素晴らしい時間となりました。

10月には、応用コースの開催を予定しており、今後も実り多き研修とすべく準備中です!

写真右:上から講義の様子、在宅人工呼吸管理演習の様子

写真下:公開シンポジウムの様子





平成28年6月9日

平成28年度第2回都医学研都民講座を開催しました。

会場:一橋講堂

6月9日、公益財団法人東京都医学総合研究所は一橋講堂において、滋賀県立小児保健医療センター小児科医長 熊田 知浩 先生を講師にお迎えし、当研究所の 岡戸 晴生 研究員、平井 志伸 研究員とともに「遺伝子と食のつくる脳」と題し、講座を開催しました。

今回の講演では、最初に岡戸研究員から、なぜ脳に遺伝子と食が関係するのかをテーマにお話がありました。遺伝子異常により脳の働きに何らかの障害が起こることがあるが、一部の異常はケトン食など、食により正常化されることがあり、食によって脳の機能は影響を大きく受けるとのご説明でした。次に、遺伝子の量により脳の形成や機能が影響を受けることがあり、例えば大脳皮質でRP58タンパク質が半減すると小頭症や知的障害などの脳発達障害を惹き起こすことがあるとの講演でした。

次に平井研究員から、食事の摂取内容によって脳が受ける影響についてお話しがありました。菓子パン、グラニュー糖など血糖値の上昇しやすい糖の消費が増加傾向にあることのお話でした。それから過剰な糖質が脳に悪いことについてのご説明があり、逆に、適切な食事により一部の遺伝子異常は克服できるとのお話しがありました。

最後に、熊田先生からケトン食療法についてのお話がありました。ケトン食の歴史はてんかん治療の歴史であり、炭水化物を減らし、脂質を増やすことで、体内でケトン体が多く産生されるように考案された食事とのご説明でした。ケトン食は、神経伝達物質の調整や神経保護作用、血糖の安定化を図り、てんかん発作を抑えるとのことです。また、自閉症や認知症、アルツハイマー病にも効果があるとのお話しでした。

講演終了後も熱心な受講者からの質問が絶えず、大変充実した講演会となりました。

写真:右上から、岡戸研究員、平井研究員、熊田先生、岡戸研究員の講演の様子、

写真:下、講演前に控え室にて(左から熊田先生、岡戸研究員、平井研究員)






平成28年4月27日

平成28年度第1回都医学研都民講座を開催しました。

会場:東京都医学総合研究所 講堂

今回の講座を皮切りに、今後も公益財団法人として多岐にわたる当研究所の研究内容の一端や関連する最新情報を、都民の皆様に分かりやすくお伝えしていきます。今年度は全8回にわたって講座を開催します。

その第1回都医学研都民講座は、4月27日(水曜日)、都医学研において都立墨東病院小児科部長 伊藤 昌弘 先生を講師にお迎えし、当研究所の 佐久間 啓 研究員とともに、「こどもの脳を守る -診療と研究の最前線-」と題し、講座を開催しました。

今回の講演では、最初に佐久間研究員から、こどもの脳を守るために研究者がしていること、についてお話しがありました。こどもの脳・神経の病気を研究するうえで大切なことは、医療現場のニーズを満たす、必要性の高い研究を行うことが重要です。こどもの脳・神経の病気のうち、後天性疾患であるウィルス関連急性脳症は、健康だった児童が突然発症するなど家族にとっての問題点、原因がわからないなど診療の問題点、研究を行っている施設は世界的に見ても限られているなど課題が多いとのお話でした。

次に、「子どもの脳を守る」を題目に伊藤先生からお話がありました。まず、周産期障害として核黄疸と新生児仮死についてご説明がありました。黄疸が強いと脳性まひや死亡の原因となり、その治療法である光線療法が蛍光灯からLEDに変わってきたとのことでした。新生児仮死とは、出生時に呼吸がうまくできないため、心臓の働きが悪くなり、全身が血液・酸素不足で脳や腎臓を中心に悪影響を起こす病気で、呼吸の問題や循環系の問題、脳の問題など様々な病気を発症する可能性があり、それぞれに治療法が確立されているとのご説明があり、来場者はメモを取りながら熱心に聴講していました。

講演会終了後、希望者を対象に、6グループに分かれ、研究室を見学していただきました。見学者からは、「普段見ることの出来ない研究室が見学出来て楽しかった」「分かりやすくご説明いただき、よく理解できた」等、とても満足していただきました。

写真右:上から、佐久間研究員、伊藤先生、控え室でのひと時、研究室見学の様子

写真下:講演の様子




平成28年4月23日

科学技術週間特別行事に参加しました。

会場:日本科学未来館

4月23日、4月24日の2日間、(公財)東京都医学総合研究所では、日本科学未来館において、「脳のはたらきと遺伝子DNA 見てみよう 調べてみよう 作ってみよう」と題し、実験、観察、工作教室を行いました。

この行事は、「-Tokyoふしぎ(サイ)エンス-」をキャッチフレーズに、東京都各局や首都大学東京、各研究・教育機関等が一堂に会して研究・技術について分かりやすく紹介するものです。

東京都医学総合研究所からは、「見てみよう」、「調べてみよう」、「作ってみよう」という3つのテーマで、来場者に直接実験等に参加していただく「体験展示」を実施しました。

『チャレンジ!DNAを取り出してみよう』では、タラの白子からDNAを取り出す実験とバナナからDNAを取り出す実験のデモを行いました。参加者全員が、研究員の説明に真剣に耳を傾け、途中、研究員の手助けも受けながら、実験用ゴム手袋を付けた慣れない手つきで実験をやり遂げました。結果、DNAが取り出せると、白衣に身を包んだ小学生等からは満面の笑みがこぼれ、驚きの声が響きました。

『体験しよう 脳の世界!』では、パソコンボタンを押して反応速度を計るコーナーや“だまし絵”を使った錯覚を体験するコーナー、顕微鏡で実際に脳の断面を観察するコーナーと順番に体験してもらいました。どのコーナーも参加者が楽しく参加している姿が見受けられ、特に“だまし絵”のコーナーでは動いていない絵が動いて見える様子などに「信じられない」といった反応で楽しんでいる姿が見受けられました。

『遺伝子ってなぁに?DNAのひみつ』では、DNAが体の設計図であること。60兆個の細胞一つひとつに、約2mのDNAが入っていること等を学んだあと、DNAの形を模したビーズストラップ作りに挑戦しました。集中して親子で協力し、熱心に作業している姿が印象的でした。

担当した研究者は、事前の実験準備に始まり、息つく暇もないほどの慌ただしさではありましたが、普段は接することの少ない都民の皆様に研究内容を披露する貴重な機会となり、当研究所にとって有意義なイベントとなりました。

写真右:上から、DNA抽出実験の様子、顕微鏡観察の説明をする石田研究員、DNAビーズストラップ作り




平成28年3月6日

サイエンスカフェin上北沢 「こころのサイエンス」を開催いたしました

会場:東京都医学総合研究所

3月6日(日)、公益財団法人東京都医学総合研究所の講堂において、「サイエンスカフェin上北沢 こころのサイエンス」が開催されました。サイエンスカフェは、お茶や音楽とともに気楽な雰囲気の中で、身近なサイエンスについて研究者と自由に語り合う場です。 21回目のサイエンスカフェとなる今回は、「こころ」について、当研究所の統合失調症プロジェクトの新井誠研究員が話題提供しました。

第1幕は、脳の構造と機能から、こころの不思議に迫るという説明がありました。ヒトの脳はどのようにして形成されてくるのか、また、脳のネットワーク、記憶の分類と関連する脳部位などについてお話しされました。

休憩を挟んで第2幕は、脳と心の病気の研究についてお話がありました。脳の病気が判る主な検査法として、X線で内部構造の異常を探るCT、三次元的な情報を多く得られるMRIなど様々な手段があること、様々な疾患を克服するために動物が使われていることなど専門的な分野を分かり易く御説明されました。最後に、統合失調症について、発症の要因、カルボニルストレス(糖化現象)性の統合失調症の治療・予防に向けてなどのお話がありました。

第3幕は、参加者の希望を募り、ピアノ演奏が流れるなか、研究室見学、ヨーガの体験、ポスター紹介に分かれて、それぞれ興味のある企画を体験していただきました。特に研究所見学の人気があり、参加者は普段見ることのできない研究室の中を見学して嬉々とされていました。

第4幕は、実際に自分の今の「こころ」の様子を知っていただくため、TEG(性格検査)を体験していただきました。「こころ」の様子を知ろうと皆さん熱心に参加されていました。

工夫をこらした内容に、参加者からは「研究員の説明が分かり易く内容もとても面白かったです。」「研究者の方々の雰囲気が良かった。」「バラエティーに富んだ内容、工夫に感謝します。」「ピアノ演奏が素晴らしかった。」といった声が多数寄せられました。 都民の皆さんの研究所として、今後ともこうした催し物を実施していきます。

写真:上から、新井研究員、ヨーガ体験の様子、ポスター見学の様子




平成28年2月5日

平成27年度 第8回 都医学研都民講座を開催しました

会場:一橋講堂

2月5日(金)、公益財団法人東京都医学総合研究所は一橋講堂において、順天堂大学准教授 佐藤栄人先生、福島県立医科大学助手 井口正寛先生を講師にお迎えし、当研究所の松田憲之研究員とともに、「神経変性疾患とは」と題し、講座を開催しました。

今回の講演では、最初に松田研究員から、神経変性疾患について簡単な紹介をするとともに、ミトコンドリアに着目した最新の知見を含めて、パーキンソン病の発症機構について御説明がありました。

次に、順天堂大学准教授の佐藤先生から「神経変性疾患の原因と治療」についてお話がありました。パーキンソン病に似た神経変性疾患の御説明、活性酸素やミトコンドリア異常などのパーキンソン病の原因について、また、その治療の歴史や脳深部刺激療法(脳の電気刺激で症状の改善を図る治療法)などについて御解説いただきました。

最後に、福島県立医科大学助手の井口先生から「音楽家を悩ませた神経疾患」について、署名な音楽家であるシューマン、ワーグナー、ラヴェルを引用して御説明がありました。 シューマンはジストニア(筋肉が収縮したり固くなったりする難治性の疾患)に悩まされてピアニストを断念し作曲家となったというエピソードや、ワーグナーは作曲もできないような片頭痛に20代から悩まされていたこと、ラヴェルは進行性失語症を患っていた可能性があることなどが紹介され、神経疾患は作曲家を苦しめ創作活動に影響を与えてきたというお話がありました。

講演終了後も神経変性疾患に関する質問が相次ぐなど、充実した講演会となりました。

写真:上から、松田講師、佐藤講師、井口講師


平成28年1月21日

平成27年度 第7回 都医学研都民講座を開催しました

会場:一橋講堂

1月21日(木)、公益財団法人東京都医学総合研究所は一橋講堂において、関東中央病院神経内科部長の織茂智之先生を講師にお迎えし、当研究所の筧慎治研究員とともに、「パーキンソン病を理解しよう-臨床と病態評価の最前線-」と題し、講座を開催しました。

今回の講演では、最初に「自宅でパーキンソン病の病態を測るシステムの開発」と題し、筧研究員からお話がありました。身体の動きを低周波、中間、高周波の3成分に分離して評価すると、パーキンソン病の患者の動きの特徴として高周波成分が増加することがわかりました。自宅でこの分析をできるようにするために、身体の動きの3成分を安価な機器で記録し、クラウド※で分析し結果がすぐに抽出されるシステムを現在開発中との御説明でした。

次に、「パーキンソン病を理解しよう」と題して、関東中央病院神経内科部長の織茂先生からお話しがありました。パーキンソン病は全身疾患であり、震えなどの運動症状と便秘や低血圧などの非運動症状があります。診断は患者の話をよく聞き、特徴的な症状の有無と程度を評価することが基本で、織茂先生が確立された心筋シンチグラフィという特殊カメラで心臓を撮影する評価方法なども併用されます。パーキンソン病は、遺伝子要因に環境要因が重なることで発症すると考えられています。治療は薬物治療とリハビリテーションが基本であり、薬物治療では服用量や食前、食後の服用のタイミング、水に溶かして飲んだ場合の吸収など、服薬状況や個人差などが効能に影響するとの御説明がありました。最後に、患者は病気について正しく理解し、薬は正しく服用すること、リハビリをしっかり行い、水分不足にならないようにすることなどのアドバイスがありました。

講演終了後も熱心な受講者からの質問が絶えず、大変充実した講演会となりました。

写真:上から、筧研究員、織茂先生

ページの先頭へ