講演要旨
ヒトを含めた社会性動物は、多くの他者と共に社会を作り、それぞれの相手に対して協力行動や敵対行動を選択しながら、適応的な生活を営んでいます。このプロセスを支える重要な脳機能が、他者を記憶・想起するという「社会性記憶」です。記憶できるということは、すなわち脳内でその他者を「表象している」と捉える事ができ、私たちの研究室では海馬の腹側CA1領域に注目しながら、他者の脳内表象のメカニズムを解明してきました。
他方、私たちが他者に共感する際には、他者の情動を自身の情動として捉えることができます。近年、このような情動伝染時の神経活動を解析することで、「自己」と「他者」を脳内で同時に表象するためのメカニズムの一端が垣間見えてきました。本セミナーでは、「自己」と「他者」の脳内表象メカニズムに主眼を置きながら最近の研究を紹介すると共に、そのシステムに異常を示す自閉スペクトラム症の病態ついても議論したいと思います。
- 参考文献:
- Watarai & Tao et al., Science, 389:eadp3814 (2025)
- Yamakawa et al., Science Advances, 11:eady0481 (2025)
- Chung et al., Nature Communications, 15:4531 (2024)
- Huang & Chung et al., Nature Communications, 14:3458 (2023)
- Okuyama et al., Science, 353:1536 (2016)
- Okuyama et al., Science, 343:91 (2014)