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ごあいさつ 理事長兼所長

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田中 啓二

首都東京は日本の中枢であり、東京が健康な福祉都市に発展することは、日本の豊かな未来の創成に大きく寄与すると思われます。公益財団法人東京都医学総合研究所(都医学研)の使命は、「都民の生命と健康を守る」ための生命医科学研究を推進して「首都東京の保健・医療・福祉の向上」に貢献することにあります。
未曾有に進展した近代の生命科学は、神秘に覆われた生命のベールを次々と剥ぎ取ってきましたが、われわれは依然として生命を紡ぐつむぐ動作原理の全容を解明した訳ではありません。人類は、進化という長い時間を費やして高度に洗練された生体システムを獲得してきましたが、同時に、その精巧さゆえに生じる様々な不具合を生物進化の過程で効果的に淘汰できずに共有してきました。
実際、現在の叡智をもってしてもなお解明できていない生命の仕組みの巧妙さには感嘆するばかりでありますが、重要なことは、様々な病気がその精緻な生命システムの破綻によって発症するということであります。そして遺伝子変異の偶発性によって絶えず新しい病気が不可避的に発生することを考えますと、人類の病気との闘いは永続的とならざるを得ません。したがって、病気の究極的な克服には、何よりも生命の仕組みを完全に理解することによって数多ある複雑な疾病の発症原因を突き止めることや、免疫を基軸とした生体防御系を自在に操作できることが不可欠であります。

わが国が世界屈指の高齢社会を迎えていることは周知の事実であり、日本の縮図である東京では、人類の脅威であるがんや感染症の他、高齢化に伴う成人病、脳・精神疾患などなど様々な病気が増加の一途を辿っています。勿論、これら病気の打破は人類共通の目標であり国策としての多くの取り組みがなされていますが、東京都も世界都市として先陣を切って取り組む必要があります。さらに東京には大都市として抱えている様々な課題が山積しています。例えば、一般に希少疾患の研究は見過ごされがちですが、東京にはこのような難病で苦しまれている方々が数多く存在しています。このような重要な課題にも都医学研は積極的に取り組み、健康に関わる諸問題に迅速かつ実践的に対応して、多くの都民の健康を守ることを目指しています。

科学史をひもといてみますと、産業革命の例を取るまでもなく、新しい技術の開発が世界を変貌させてきました。20世紀後半、分子生物学の登場によって生物学を取り巻く状況は一変し、生命科学という新しい学問領域を誕生させました。しかしながら科学技術の進歩は日進月歩であり、いかに高度化されたテクノロジーであってもより新しい最先端技術が開発されますと、過去の遺物として朽ちていきます。科学はこの栄枯盛衰の歴史を繰り返しながら、社会発展を支える基盤としての役割を担ってきました。他方、独創的な研究によって成し遂げられた成果の継承と人間の成長は、時代を牽引していく起爆剤・原動力となるとともに、後世に繁栄をもたらす大きな財産となります。即ち、優れた研究の持続的な発信と未来の研究を支える次世代の人材育成は、研究所が将来に亘って存続する保障ともなり、この努力を蔑ろないがしにして手をこまねいていますと、研究所はその存在基盤を失ってしまいます。兎も角も若い世代に夢と希望を与えることができる魅力ある研究所の創成が不可欠であります。

さて、「研究は文化の象徴である」というのは、私の持論でありますが、都医学研は卓越した研究者たちが集い、その叡智をもって学術的・文化的に名誉ある地位を築き、その結果として世界に冠たる大都市東京の文化の象徴になることを目指しています。学術研究は、屢々、トップダウン的な出口志向型研究(役に立つ研究)とボトムアップ的な未来を見据えた基礎研究(当面、役に立ちそうにない研究)に大別されますが、都医学研はこれら二つの戦略を車の両輪のようにバランスを取りながら両者が相加的・相乗的効果を発揮できるように柔軟な組織運営を図ってまいります。実際、この二つの戦略は、連携・融合不可な二律背反として対峙するものではありません。と申しますのは、一見役に立たないように見えた研究が、驚くべき速度で役に立つ研究に豹変して、世界を瞠目どうもくさせる大きな社会貢献を果たすことは、科学史の此処彼処に見出すことができるからであります。

医学研究者は病気にならないようにするための予防医学や新たな治療法を開発して‘明日の健康を守る’ために日夜、野心的な研究に挑んでいます。都医学研は、勿論、教育としての役割も担っていますが、同時に具体的な研究成果を挙げることが要請されており、構成研究員は掲げた目標を達成するために最先端技術を駆使して基礎から応用まで幅広く生命科学研究を推進してまいります。都医学研が世界最高水準の研究所へ成長していくことは、何よりも必要であり、その高いレベルの研究力の充実は、結果として社会に幅広く貢献できる研究所を創成することに繫がります。このために、都医学研は優れた人材の登用と育成を梃子に比類ない基礎研究の発展と研究成果の社会還元を目指して、全職員が一丸となって邁進していきたいと考えています。

都医学研の発展には、都民の皆さまをはじめ関係各位のご指導ご鞭撻が不可欠であり、今後も引き続いてご支援を賜りますよう宜しくお願い申し上げます。

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