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研究成果

* トピックス15

–「Cell Death Discovery」において研究成果を発表 −

DOCK3の構造変化を起こす低分子化合物による神経保護と軸索再生

行方和彦 副参事研究員、原田高幸 参事研究員らは、第一三共株式会社の辻 直城博士らとの共同研究により「DOCK3の構造変化を起こす低分子化合物による神経保護と軸索再生」を英国科学雑誌「Cell Death Discovery」に発表しました。本研究成果は緑内障や視神経変性などの新たな治療薬の開発につながることが期待されます。

この研究成果は、2023年5月15日に英国科学誌「Cell Death Discovery」のオンライン版に掲載されました。

研究の背景

緑内障は、日本における中途失明原因第一位の疾患です。緑内障の治療として、眼圧を低下させる様々な点眼薬や手術法が開発されています。しかし、日本人の緑内障患者の約7割は「正常眼圧緑内障」であるため、眼圧以外の新たな治療標的の探索が課題となっています。

一方、視覚病態プロジェクトでは、グアニンヌクレオチド交換因子のひとつであるDOCK3という分子を過剰発現させることにより、緑内障マウスの進行抑制や視神経の再生が可能になることを発表してきました。


研究の概要

研究チームはDOCK3が活性化する際に結合する分子であるElmo1に注目しまし、DOCK3とElmo1の結合を促進する化合物のスクリーニングを行いました。約46万個の化合物の中から最も有力な化合物を絞り込み、さらに、それに類似した化合物を4種類作製しました。これらの化合物を培養した脳神経細胞に投与すると、神経突起が伸長することが確認されました。

そこで次に、視神経外傷マウスの眼球内にこれらの化合物を注射すると、このうち2種類の化合物では網膜の神経細胞が保護され、また視神経軸索も一部再生することがわかりました(図)。

図1

図. 新規化合物による視神経再生効果
DOCK3を活性化する2種類の化合物をマウスの眼球内に投与すると、視神経の損傷部位(*)から、切断された神経軸索が再生した(中段および下段)。 化合物を投与しない場合には、視神経は再生しない(上段)。

今後の展望

今回の結果は、眼圧下降以外の機序で緑内障の進行を抑制して、視神経再生も誘導できる化合物の存在を示しています。今後はこのような効能を持つ、新たな治療薬の開発が期待されます。

本研究の主な助成事業

本研究は日本学術振興会(JSPS)科学研究費 挑戦的萌芽(開拓)・基盤研究・国際共同研究強化などの支援を受けて行われました。

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