近年、インターネット、人工知能、高速無線通信技術などが発展したことにより、デジタル医療の開発が精力的に検討されてきました。デジタル医療とはデジタル技術を用いた医療に関わる製品やサービス全般を指しますが、特に注目すべきはデジタル治療*1です。これには、遠隔医療システムにより離れた場所から患者の診察ができること、スマートフォンやスマートウォッチから患者の健康状態や病気の兆候を予測できること、蓄えられた大量の医療データを人工知能が解析し、医師の診断を補助するソフトウェアが使えること、音や光、映像によって脳に刺激を与えて精神状態を癒すデバイスが利用できることなどの多くのメリットがあり、加えて、費用も節約できることから、近い将来には医療の主流になると予測されています。デジタル治療は感染症のパンデミックだけでなく、認知症など多くの疾患に適した治療法です(図1)。これに関連して、今回、中国首都医科大学のFan He博士らは、発達障害である注意欠如・多動症(ADHD)*2の患者さんに対するデジタル治療の効果に関する文献のメタアナリシス*3を行い、デジタル治療の有効性を報告しましたので、その論文(文献1)を紹介致します。
注意欠如・多動症(ADHD)は幼年期によく起きる発達障害である。原因ははっきりしていないが、治療は薬物療法を中心に行われている。最近は、コロナ禍が続いたこともあり、デジタル治療が注目されている。従って、本研究の目的は、小児、及び、青年期のADHDの患者に対するデジタル治療の効果をメタアナリシスにより評価することである。
上記の目的のために、ADHDに対するデジタル治療の効果に関する31件のデータをMEDLINE, EMBASE*4, Cochrane Library*5, Web of Science*6より抽出・統合して、Stata 15.0(ソフトウェアー)を用いてメタアナリシスを行なった。
最終的に、31篇の文献より、4~17歳の2,169人(男1,665人、女504人)を解析した。それぞれの解析に異質性は無く、明らかな出版バイアス*7は、認められなかった。
デジタル治療をADHDの治療に介入することにより、
以上の結果より、デジタル治療はADHD治療戦略に有効であると考えられた。