感染制御ユニット

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デング熱

その他急性感染症研究(デング熱)

デング熱とは

デング熱は、急性熱性疾患であり、熱帯地方を中心に流行し、毎年4億人が感染し、約1億人が発症していると推測されています。地球温暖化に伴って発生地域の拡大や発生数が増加が懸念されいます。日本では、毎年海外で罹患して帰国後発症する「輸入症例」が毎年 170 例以上(コロナ禍を除く)報告されています。デング熱は、蚊媒介性ウイルスであるデングウイルス(DENV)感染によって引き起こされ、1〜4 型の血清型が存在します。現在までに 2 種類のワクチンが認可されています。Dengvaxia(サノフィパスツール社:世界で初めて認可された)は黄熱病ウイルスベクターに DENV 構造蛋白質を搭載した組換えワクチンであり、既に 20 カ国以上で使用が開始されています。しかしながら、非感染者にこのワクチンを接種するとその後のデングウイルス感染によるデング熱の重症化リスクが高まる事が報告されており、WHO と製造元であるサノフィパスツール社からそれぞれ使用上の注意喚起が出されています。また、武田薬品工業により DENV2 をベクターとした組換えワクチンの QDENGA が開発され 2022 年にインドネシア、EU、ブラジルなどで認可されています。

DENV の場合、最初の感染で誘導されるウイルス構造蛋白質に対する抗体のうち、ウイルス粒子に結合はできるものの、中和効果を持たない抗体が、別の血清型ウイルス感染時に感染を増強する Antibody Dependent Enhancement (ADE)という現象を起こして過剰なウイルス増殖を引き起こし、デング出血熱などの重症疾患につながる事が知られています。中和抗体を誘導を目的としたワクチン接種では時間経過とともに、徐々に中和抗体価は低下するため、その後の DENV 感染時に ADE が誘発される危険性があると考えられます。さらに、Dengvaxia は 1、2 型の血清型に対して、QDENGA は 3、4 型の血清型に対しての中和抗体誘導が弱いことが報告されています。

新規予防ワクチンの開発

DENV の 4 つ全ての血清型に対して、強力かつ持続性のある防御効果を付与できるワクチンの開発が求められています。私たちは、鹿児島大学、長崎大学、国立感染症研究所との共同研究において、ADE 誘発の主因となる構造蛋白質や、病原性に関与する NS1 蛋白質を含まない、DENV の非構造タンパク質を搭載した組換えワクシニアウイルスを DENV ワクチン候補として現在、開発を進めています。