開催報告

第23回 都医学研国際シンポジウム(2022年12月6日開催)
「New Frontiers in Ubiquitin Proteasome System」


前蛋白質代謝プロジェクトリーダー佐伯 泰

昨年12月に約2年ぶりとなる都医学研国際シンポジウムを開催しましたので報告します。この国際シンポジウムは、私が領域代表者を務めている文部科学省科研費新学術領域研究「ケモテクノロジーが拓くユビキチンニューフロンティア」が主催した国際会議 "Ubiquitin New Frontier ~from Neo-biology to Targeted Protein Degradation~" のサテライトシンポジウムで、両会議とも 2020年10月に開催予定でしたが、 COVID-19のパンデミックにより2回延期し、ようやく本年度に開催が実現しました。国際会議の準備(会場の予約や海外スピーカーの日程調整、ホームページ作成、助成金の申請、企業への広告費依頼など)は1年以上前から進める必要がありますので、2度の中止を含めますと約3年間国際会議のことばかり考えていたことになります。この原稿を執筆している2023年2月現在では、ほぼ日常が戻っておりますが、半年前は対面での国際会議を本当に開催できるのか予断を許さない不確かな状況で、渡航制限解除の時期や2年前から約2倍に高騰した航空券代などについては直前まで悩まされました。さて、苦労話はここまでにして、当日の模様を紹介します。

現在、ユビキチン研究は細胞機能の制御だけではなく疾患との関わりや創薬標的として大きく注目されており、数年前から第2の拡大のフェーズに入っております(実際、毎年1万報を超える論文が報告されています)。今回、海外スピーカーとして招聘した研究者7名は、現在のユビキチン研究分野のトップ研究者ばかりで、ユビキチンコード(暗号)研究からタンパク質分解誘導剤(PROTAC)開発の大御所まで錚々たるメンバーが揃い、田中啓二理事長(プロテアソームの命名者)を擁する都医学研としても、世界トップレベルの研究発表で歓待する必要がありました。そこで、都立大の川原裕之教授、東大・東工大の優秀な若手研究者3名に加え、所内5つのプロジェクトからユビキチンやプロテアソームを研究している9名の研究員に講演を依頼しました。シンポジウムはユビキチンコード、プロテオスタシス、ユビキチン関連疾患と創薬のセッションを設け、ユビキチンやプロテアソームの新しい分子メカニズム、細胞恒常性維持におけるタンパク質分解の役割、糖尿病やタンパク質凝集病などの疾患発症機構、PROTAC の開発状況などについて熱い議論を交わしました。ほぼ全ての発表が未発表の内容で、参加者一同、新しいサイエンスの発見に大興奮でした。実際、海外スピーカーの皆さんは都医学研の研究の多様性と研究レベルの高さに驚いており、また3年後くらいに呼んで欲しいと、最高の賛辞の言葉を頂きました。微妙な開催時期でしたが、研究員だけではなく、所内外の学生や若手研究者も多数参加し、直接コミュニケーションをとることができたのは、今後の研究所の国際的な発展、若手育成に大きく貢献したと思います。

最後に、対面での国際シンポジウム開催を承諾してくださった正井所長、田中理事長ならびに関係者の皆様に改めて感謝申し上げます。また、国際会議の開催にあたり航空券の手配からホテル予約、お弁当の手配に至るまで、丁寧にご指導くださった普及広報係の大井係長と逸見さんに心から感謝申し上げます。

参加者集合写真
 参加者集合写真

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