私たちの体は小さな「細胞」というものでできていて、この細胞は日々分裂して増えています。分裂するときには、細胞の中にあるDNAという設計図がコピーされます。このコピーの際に、まれに間違い(ミス)が起こることがあります。
人間には、このミスを直す仕組みが備わっていますが、それでも残念ながらミスは完全にゼロにはなりません。もしこのミスが、「細胞が増える速さを決める遺伝子」という大事な部分で起こってしまうと、その細胞は増殖のコントロールを失い、どんどん増え始めてしまいます。これが「がん」の始まりです。
体の中で細胞分裂は常に行われているので、この仕組みから考えると、誰もががんになる可能性を持っていると言えます。
ただし、タバコの成分や紫外線のように、DNAにダメージを与えるものは、DNAの間違いが起こる確率を上げてしまいます。そのため、がんのリスクを減らすためには、これらを避けるのが良いでしょう。
ところで、がんはたった一つの遺伝子の異常だけでできるのでしょうか? 実際には、できあがったがんの中の遺伝子には、たくさんの間違い(変異)が見つかっています。
Hanahan博士とWeinberg博士は、がんが進行する過程で獲得する必要がある8つの能力について考察しています。
これらの性質を獲得するためには、多くの遺伝子変異が必要だと考えられています。つまり、がんは細胞分裂を繰り返す中で、遺伝子の変異を積み重ねて形成されていくと考えられています。