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がんについて

2025/7/1

がんは遺伝子の病気

by Masatoshi Muraoka

私たちの体は小さな「細胞」というものでできていて、この細胞は日々分裂して増えています。分裂するときには、細胞の中にあるDNAという設計図がコピーされます。このコピーの際に、まれに間違い(ミス)が起こることがあります。

人間には、このミスを直す仕組みが備わっていますが、それでも残念ながらミスは完全にゼロにはなりません。もしこのミスが、「細胞が増える速さを決める遺伝子」という大事な部分で起こってしまうと、その細胞は増殖のコントロールを失い、どんどん増え始めてしまいます。これが「がん」の始まりです。

体の中で細胞分裂は常に行われているので、この仕組みから考えると、誰もががんになる可能性を持っていると言えます。

ただし、タバコの成分や紫外線のように、DNAにダメージを与えるものは、DNAの間違いが起こる確率を上げてしまいます。そのため、がんのリスクを減らすためには、これらを避けるのが良いでしょう。

ところで、がんはたった一つの遺伝子の異常だけでできるのでしょうか? 実際には、できあがったがんの中の遺伝子には、たくさんの間違い(変異)が見つかっています。

Hanahan博士とWeinberg博士は、がんが進行する過程で獲得する必要がある8つの能力について考察しています。

  • 増殖し続ける信号が出続けるようになる
  • 増殖を抑える信号が伝わらなくなるようになる
  • 細胞が死ぬのを避けるようになる
  • 無限に分裂できるようになる
  • 血管を新しく作るように促す(がんも酸素や栄養が必要なため、その輸送経路の血管が必要)
  • 周りに広がり、別の場所に移動する能力が高まる
  • エネルギーの使い方を変化させる(細胞が継続的に増えるためには、正常な細胞とは異なるエネルギー代謝が必要)
  • 免疫細胞の攻撃から逃れる

これらの性質を獲得するためには、多くの遺伝子変異が必要だと考えられています。つまり、がんは細胞分裂を繰り返す中で、遺伝子の変異を積み重ねて形成されていくと考えられています。