先生、ゲノムとは何ですか?
前回、生物はDNAを複製することで、親と同じ設計図をコピーし遺伝情報を子へ伝えていくことをお話ししましたね。
そうやって親から子へ受け継がれる、
生物の形質を決定するために必要な1セットの遺伝情報をゲノムといいます。
生物種にとって必要な遺伝子の1セットということです。
そうなんですね。
ここでまた問題です。
人の一つの細胞のDNAを繋げると、どのくらいの長さになるのでしょうか?
2cmくらいですか?
答えは、Dの2m です。
DNAは何重にも折りたたまれて棒状の構造体(染色体)として核の中に収容されています。
計算式は次の解説の通り。
両親から受け継ぐ46本の染色体は、22対(44本)の常染色体と2本の性染色体から構成され、全部で約60億塩基対(30億塩基対×2)のDNAを含みます。
DNAの二重らせんでは、隣接する塩基対の距離が約0.34nm(1mm=1,000μm=1,000,000nm)なので、60億塩基対のDNAの長さは以下の計算により約2mになります。
ゲノムの大きさってどのくらいなのですか?
ゲノムの大きさは生物種によって大きく異なり、大腸菌は460万塩基対、パン生地を発酵させるために欠かせない微生物であるパン酵母は1200万塩基対、ヒトは約30億塩基対です。
※ ヒトの1つの細胞には、2セットのゲノムを持つので、約60億塩基対のDNAを含んでいる。
(30億塩基対×2)
一つの細胞のDNAを繋ぎ合わせると2mということは、
もし核の大きさをバスケットボールと同じ大きさと考えるとDNAは100kmの長さの髪の毛と同じイメージね。
一つの細胞のDNAが2mなら、前回のお話では細胞は37兆個あるということなので、
37兆個の細胞全部をあわせると・・・?
なんと地球約185万周分、地球と太陽の間を約250往復もできますよ!
えー!僕の身体の中に、そんなに長いDNAが入っているの!!
しかも、それが日夜正確に複製されているなんて信じられないよ。生物って、すごいんだな。
先生、遺伝子についても教えてください。
遺伝子は何かというと、
遺伝情報の産物を規定するゲノムの領域のことですね。代表的な遺伝情報の産物はタンパク質で、タンパク質はアミノ酸からできています。
タンパク質を構成するアミノ酸は20種類あって、それぞれ違った性質を持っています。
親水性、つまり水となじみやすい性質を持っていて、さらに+やーといった荷電を持つものと持たないものがあります。
さらに疎水性、つまり水となじまない性質を持つものもあります。
タンパク質は、いろいろな性質を持つアミノ酸がひも状につながったものです。
さらに、立体構造をとることによって、様々な役割を果たしています。
例えば、ヘモグロビンという赤血球に含まれる赤い色素たんぱく質は、4つのサブユニット(「2つのαポリペプチド」と「2つのβポリペプチド」)による立体構造で、酸素と強く結合できる性質も持ち、肺で酸素を受取り、全身の細胞に酸素を送り届けることができます。
タンパク質は、他にどういう仕事をしているのですか?
タンパク質は体内で色々な仕事をしています。
たとえば、ウイルスや病原菌を排除するために作られる抗体は、免疫グロブリンというタンパク質からできています。
筋肉が収縮して大きな力を出せるのは、アクチンとミオシンというタンパク質が働いているからです。また、血液中に存在する血清アルブミンというタンパク質は、浸透圧を保ち、脂肪酸や無機イオン、また、外来の薬物を吸着し、全身に運搬しています。
タンパク質って、体のあらゆるところで大事な役割を担っているんだなあ