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2023/5/12

kenta 第7回 中学生医学けんた君の新型コロナウイルスや生命科学等についての質問

認知症の新しいしくみを発見!

by Kohji Kasahara & Masato Hasegawa
けんた君
中学生
医学けんた君

ざわこ先生、認知症って何ですか?

イラスト1
zawako
感染症の専門家
上北ざわこ先生

脳神経の一部が死ぬことによって、認知機能「記憶や判断力」が下がり社会生活がむずかしくなった状態のことよ。
2050年には100人に1人以上が認知症患者という時代になると予想されていて、治療法や予防法の開発が強く望まれているのよ。

医学けんた君
中学生
医学けんた君

どうやって認知症になるんだろう?

イラスト2
zawako
感染症の専門家
上北ざわこ先生

何かのきっかけでタンパク質が正常型から異常型に変わり、長い時間をかけて核となり、それを鋳型にして異常型が重合した線維が脳神経にたまって、神経細胞が死んでしまうと考えられるのよ。

医学けんた君
中学生
医学けんた君

その結論をどういう方法で証明したのですか?

イラスト3
zawako
感染症の専門家
上北ざわこ先生

遺伝子組み換え技術を使って大腸菌に作らせたヒトタンパク質を試験管の中で異常型に変換し、マウスの脳内に接種してみたの。すると、マウス脳内の正常なタンパク質が異常化し、急速に異常型タンパク質が増えて、病変が広がることが分かったのよ。このことから微量の異常型タンパク質が脳内に存在するだけで病気になることが明らかになったの!

イラスト4
zawako
感染症の専門家
上北ざわこ先生

そして脳にたまる異常型タンパク質の種類によって、ちがった種類の認知症になることを発見したのよ。たとえば異常型タウがたまるとアルツハイマー病、異常型αシヌクレインがたまるとレビー小体型認知症、異常型TDP-43がたまると前頭側頭葉変性症になるの。
しかも異常型タンパク質病変の広がりは臨床症状や重症度と相関することから病気の発症や進行と深い関係があると考えられるのよ。
さらに、たまる場所によっても違う病気になり、異常型αシヌクレインが脳幹にたまるとパーキンソン病になること、異常型TDP-43が脊髄にたまると筋萎縮性側索硬化症(ALS)になることも見つけたの。

イラスト5
zawako
感染症の専門家
上北ざわこ先生

異常型タンパク質病変は、病気によって決まったパターンをとって広がるの。クライオ電子顕微鏡による観察により、疾患に特有の構造を持つ線維が脳神経に蓄積することを明らかにしたのよ。その特殊な構造から、自身を鋳型にして自己複製しながら、細胞から細胞へ伝播して広がることにより神経細胞死がおこり、認知症になると考えているのよ。


上北くん
中学生
医学けんた君

この発見には、どういう意義があるのですか?

zawako
感染症の専門家
上北ざわこ先生

アルツハイマー病をはじめとする認知症に十分に有効な薬は、まだできていません。長谷川先生の研究チームの発見は、認知症になる新しいしくみを世界で初めて見つけたもので、これまでにない病気の進行を止める薬の開発の可能性を開いたのよ!

長谷川先生の論文はとても重要で世界中でたくさん引用されたことから、ノーベル賞受賞の有力候補者として、ノーベル賞受賞者の発表に先立つ9月に発表している学術賞「クラリベイト・アナリティクス引用栄誉賞」を2022年に受賞したのよ。


>> TOPICS 2022へ(クラリベイト引用栄誉賞2022の受賞)

長谷川先生photo
長谷川プロジェクトリーダー

公益財団法人 東京都医学総合研究所 脳・神経科学研究分野
認知症プロジェクト プロジェクトリーダー 長谷川成人