先生、最近、サル痘っていう病気が
世界で流行っているというニュースを聞きますが、
どんな病気ですか?
ポックスウィルスというグループのサル痘ウイルスに感染することにより発症する病気です。ポックスとは発疹ができる病気のことを言い、サル痘に感染すると、発熱、頭痛、筋肉痛などとともに、皮膚に膿を伴う発疹ができます。
これは、新しい感染症ですか?
そうではないの。
世界では、毎年、1000人以上の感染者が報告されています。また、同じグループの有名なウイルスに天然痘ウイルス(痘そう)があります。
天然痘は、サル痘より感染力がとても強く、死亡率も高いことから、紀元前から人々に恐れられていました。
そんなに怖い感染症が、あるのですね。予防しなくても大丈夫なのですか?
実は天然痘は1977年に最後の患者が発見されてから、この地球上から天然痘は存在しなくなり、1980年にWHO(世界保健機関)は天然痘の世界根絶宣言を行いました。だから、今地球上に天然痘は存在しません。
これは、ワクチンの効果ですか?
そう。ジェンナーという人のことを聞いたことある?
『免疫学の父』と言われている人と習ったことがあります。
その通りよ。
ジェンナーは、牛痘という天然痘に似ているけど、死亡率などがはるかに低い病気(牛などの動物に主に感染する)を天然痘の予防に使えないかと考えたの。実際に牛痘を接種しておくと天然痘に感染しないことを見つけました。この種痘法が、ワクチンの基礎となり、効果的な天然痘ワクチンができて天然痘を絶滅させることができたのよ。
エドワード・ジェンナー(Edward Jenner)
1749~1823 イギリス、医学者
当時、「牛の乳搾りの人が天然痘にかかりにくい」という現象が知られていたことがあり、ジェンナーはこれが天然痘の予防に使えないかと研究を続けた。そして、1796年、ジェンナーの使用人の子であった8歳の少年に牛痘接種し、6週間後に天然痘接種を行ったところ、少年は天然痘にはかからず、牛痘による天然痘予防法を成功させた。
サル痘は、昔からあるのに、なぜ最近注目されるようになったのですか?
それは、今まで流行していなかった国で、感染が見つかったからなの。
日本でも感染が見つかったのですか?
まだ(2022年6月10日時点で)発見されていませんが、起こるかもしれない
と人々に不安を与えています。
サル痘と天然痘の原因のウイルスは似ているのだから、
天然痘に対するワクチンを打っていたら、サル痘にもかからないのではないですか?
そうね。
天然痘ワクチンとして用いられたワクシニアウイルスワクチンがサル痘の感染発症予防にも有効である事が、報告されています。
ところが、日本でも1980年に種痘は行われなくなりました。
だから、47才未満の方はワクチンを受けていないので、感染の可能性があります。
それじゃ、僕たちは、
サル痘に感染しないように、ワクチンを接種した方が良いのですか?
サル痘は、動物に噛まれるとか、感染した人の血液や体液に接触をしないと感染しないし、人から人への感染の確率も低いことがわかっています。
また、もし万が一かかったとしても、症状は天然痘に比べて、軽症なので、現時点では、すぐにワクチンを接種しなければならないとは考えられていません。
新型コロナウイルスは、
どんどん変化して、強毒化することもあるということですが、
サル痘も遺伝子が変化して強毒化した可能性はないのですか?
今のところ、その証拠はないようですが、
今後の研究によりもっと詳しいことがわかると思います。