けんた君は、お父さん似ですか? それともお母さん似ですか?
目元はお父さんに似ていて、口元はお母さんに似ていると言われます。
先生は、性格はお母さん似、
顔はお父さん似と言われます。
どうして、子供はお父さんとお母さんの両方に似るようになるのですか?
どちらかにしか似ていないこともあるのはなぜなのですか?
そうですね。今日は、どうしてそんなことが起こるのかを考えてみましょう。
なんだか難しそうですね。
私たちの体は、
お父さんからもらったDNAとお母さんからもらったDNAを一つずつ持っているのよ。
それは、学校で少し勉強しました。
受精によって、お父さんとお母さんからもらったDNAそれぞれ一つずつ、
2組のDNAを持った細胞が出来上がるのですよね。
その通り。
お父さんとお母さん、
受精が起こる前にそれぞれのDNAがどのように作られるかが重要なのよ。
僕と同じように、お父さんとお母さんも
おじいちゃんとおばあちゃんからもらったDNAを一つずつ持っているんですよね。
そうよ。
とても大切な点は、
けんた君が両親からもらうDNAはそれぞれ一本だけという点よ。
え? お父さんもお母さんもおじいちゃんとおばあちゃんのDNAをそれぞれ2本持っているのに、僕はその一本ずつしかもらっていないのですか?
その通りよ。
では僕がお父さんからもらったDNAは、おばあちゃんのDNAだと思う。
どうしてそう思うの?
だって、お父さんも僕もおばあちゃんの目元に似ているもの。
そのほかの部分はどう?
でも体格とか性格とかはおじいちゃんに似ているしなあ。
やっぱり、どっちに似ているとか簡単に言えないなあ。
今日は、どうして子供と親は似てるようで違うのかを
DNAから説明しなければいけないですね。
ぜひお願いします。
さっきお父さんとお母さんがけんた君にDNAを一つずつ与えると説明したわね。
はい、僕の細胞にあるDNAはお父さんとお母さんからDNAを一つずつもらっています。
お父さんとお母さんからもらったDNAは、
おじいちゃんやおばあちゃんのDNAに似ているのだけど似ていないの。
さっぱりわかりません。
お父さんやお母さんは、けんた君にDNAを一つ渡す前に、おじいちゃんのDNAとおばあちゃんのDNAをシャッフルするの。
シャッフルするというのがわかりません。
トランプで考えてみましょう。
トランプ52枚の一組をDNAと考えてね。
お父さんもお母さんも、それぞれのおじいちゃんとおばあちゃんからもらった、一組ずつ、合計二組のトランプ一式52枚をもっているの。
この二組のトランプをシャッフルして、
52枚一組を作るわけ。それをお父さんから受け継いだわけ。
わかったぞ。
僕が持っている2つのDNAは、
お父さんからもらった52枚のトランプ一組と
お母さんからもらった52枚のトランプ一組なんだね。
二組のトランプがシャッフルされて
一組のトランプが出来上がる場合の組み合わせは、どれぐらいだと思う?
2の52乘通りになると思います。
二組あるトランプをシャッフルして一組のトランプを作る細胞は、
生殖細胞であることを思い出しました。そうすると、兄弟が同じ組み合わせのDNAを元にできる確率はほとんどないですね。
よく思い出してくれたわ。生殖細胞は男性で言うと精子、女性で言うと卵子だったわよね。
精子や卵子が作られる過程で、両親の持つ祖父母のDNAがシャッフルされて一組のDNAが出来上がるのですね。そういえば、精子や卵子が作られる過程を減数分裂ということを学校で習いました。
減数分裂とは:生殖細胞(精子や卵子など)がつくられる際に行われる細胞分裂である。DNA合成後2回の連続した分裂が行われ、その結果、細胞あたりの染色体数が分裂前の細胞の半分になる。1回目の分裂では、染色体の間で乗換えが起こり、一部の配列を取り替え、遺伝子の組み換えが起きる。続いて2回目の分裂で染色体が分離し半分になる。このように新しい組み合わせの染色体を持つ生殖細胞(精子や卵子)が作られ、子孫の遺伝的多様性をもたらす働きとなっている。
一方で、体細胞分裂は、細胞分裂が1回のみ。生殖細胞形成以外の全ての細胞では体細胞分裂が行われる。分裂の前と後で染色体数は変わらない。
その通りよ。両親と似て非なる子供ができる理由は、減数分裂の時にDNAがシャッフルするからなの。
なるほど、よくわかりました。でもどうして、DNAをシャッフルする必要があるのですか?
いい質問だわ。
シャッフルが起きれば、遺伝的な多様性も増えます。遺伝的多様性は、種の適応進化上、重要な意味を持っています。減数分裂は、集団内でより最適な遺伝子の組み合わせを生み出し、また維持する仕組みなの。
ざわ子先生、とても勉強になりました。
減数分裂の問題は、国立難関大学の入試に出題されることも多いので、興味があればこれからもっと勉強していくといいですね。