
タンパク質は栄養素の一つであることを学校で習ったけど、タンパク質そのものについては良く知りません。

私たちの体は、主に水、タンパク質、脂質、ミネラルからできています。グラフから分かるように、水分を除けば体重の約半分はタンパク質が占めます。しかも、種類の数を比べると脂質は1,000~2,000種類なのに対し、タンパク質は20,000~100.000種類もあることが知られています。

なんで種類がそんなに多いのですか?

それは体の中で担当している「仕事(機能)」が多いからです。たとえば、食べたものを分解する「アミラーゼなどの消化酵素」、血中に存在し酸素を運ぶ「ヘモグロビン」、ウイルスが侵入したときにそれを捕まえる「抗体」、身体を動かすために必要な筋肉を収縮させる「アクチンとミオシン」、皮膚などの組織に弾力を与える「コラーゲン」などがあります。タンパク質は、体のあらゆる機能を支えているものと言えますね。

タンパク質は何からできているのですか?

20種類のアミノ酸というビーズがつながった1本のヒモとして細胞の中で作られます。そして、それが折りたたまれて決まった「かたち」になることによって、はじめて機能を持つのよ。

ふーん。ひものままだと、働けないんだね。

そのことを理解するために、紫外線を当てると光るという機能を持ったタンパク質を紹介するわね。オワンクラゲが持っている緑⾊に光るタンパクであるGFPと、サンゴの仲間が持っている⾚⾊に光るタンパク質であるDsRedを使って実験をしましょう。

まず、紫外線カットメガネをかけて、GFPとDsRedに紫外線ライトを当ててみてください。

うわー。きれいに光った!

GFPにお酢を加え酸性にすると緑色が消えます。これは酸性にすることによってタンパク質のかたちは壊れ、光るという機能がなくなったことを示しています。
次に、そこにアルカリ性の液を加え中性に戻すとどうなるかな?

うわー。また緑色に光るようになった!もしかして、かたちが元に戻ったの?

そう!その通り。GFPは形状記憶シャツのような復元⼒の⾼いタンパク質で、中性にすることにより元のかたちに戻ったことから緑色が回復したんです。
では次に、DsRedを使って同じ実験をしましょう。

DsRedにお酢を加え酸性にすると予想通り赤色が消えました!そして、そこにアルカリ性の液を加え中性に戻すと、、、、?あれ赤色は回復しないで、白く濁ってしまったよ!

DsRedの場合は一度かたちが壊れヒモ状になると、中性に戻してもお互いに絡まってしまい、元のかたちには戻らず赤色が回復できなかったことを示しています。これは⽣卵を加熱してゆで卵にする現象に似ているのよ。

ふーん。タンパク質の種類によって、性質が違うんだね。

タンパク質の「かたち」がおかしくなったとき、正しい「かたち」になるように助けるシャペロンと呼ばれる分子が体の中に存在します。そして、生卵を水で希釈したものを68℃で4分間温めると白濁(ゆで卵に相当)しますが、シャペロンをあらかじめ加えておくと白濁しないことがわかりますね。

へー、面白い!

タンパク質は生体内で作られるとき、はじめはヒモ状に合成されますが、1000分の1秒から数秒以内に決まったかたちになることが知られています。それが、どれだけスゴイことであるのかを理解してもらうため、スネークキューブと呼ばれる立体パズルを使って、はじめはヒモ状になっているものを折りたたんでキューブ状にするゲームをしましょう。

あれ~!時間をかけて試行錯誤しながら組み立てても、なかなかキューブ状にできないよ。

タンパク質がすぐ決まったかたちになることが、いかにスゴイことであることか分かりましたね。

タンパク質の正しいかたちは健康を保つ上でも重要で、タンパク質の「かたち」が崩れると病気になる例が知られています。
認知症の一つであるアルツハイマー病では、アミロイドベータというタンパク質が、本来とは違う「かたち」で固まって、脳の中に蓄積してしまうことにより物忘れがひどくなります。また、うまく体が動かせないパーキンソン病では、アルファシヌクレインというタンパク質が、本来とは違う「かたち」で固まって、脳から運動の指令を出せなくなることにより、⼿⾜が震え、体がスムーズに動かなくなります。

タンパク質が正しいかたちをとることが、とても大切であることがよく分かりました。
ところでGFPって、なんで光るんですか?

はじめにGFPについて説明するわね。GFPとはGreen Fluorescent Protein(緑色蛍光タンパク質)の略で、1962年に下村脩博士がオワンクラゲからGFPを最初に単離し紫外線を当てると緑色に光ることを発見したの。この研究のスゴイところは、タンパク質自体が光ることを見つけたことなの。蛍光は、分子が光を吸収して励起され、その後すぐにより長い波長の光を出して元の状態に戻る現象です(第15回、「光と視覚のサイエンス」参照)。有機化合物では、芳香環の共役二重結合をもつ構造(例:ベンゼン環)は発色団になりやすいことが知られています(高校、大学レベル)。GFPの発色団はセリンSer65-チロシンTyr66-グリシンGly67と3つ並んだアミノ酸残基が環化・酸化を起こし、自発的に形成されたものです。

GFPはタンパク質なので遺伝子工学的手法を用いて細胞の中で発現させることができ、生きたマウスのまま細胞を観察することが可能になりました。そして、癌細胞をGFPで光らせることにより、癌の早期発見と切除ができるようになりました。さらに、GFP のアミノ酸を改変することにより、様々な色の蛍光タンパク質を開発することに成功し、生命科学・医学研究において応用範囲が広がり、2008年に「緑色蛍光タンパク質の発見と開発」に対し、下村脩博士(日本)、Martin Chalfie博士(米国)、Roger Y. Tsien博士(米国)がノーベル化学賞を受賞しました。

タンパク質のかたちの研究としては、アミノ酸配列がかたちを決めることを見つけた研究とAIでタンパク質のかたちを予測する研究に対してもノーベル賞が贈られています。

タンパク質のことが、よく理解できました!