最近、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)オミクロン株の新しい変異株が流行しています(図1)。昨年の12月からオミクロンBA.1株が流行し、その亜種であるBA.2に置き換わり、現在、世界中でBA.2.12.1、BA.4/-5(BA.4とBA.5はスパイク蛋白の配列が同一である)といった、オミクロンの新たな系統への置き換わりが急速に進んでいます。我が国においてもBA.5への置き換わりにより、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は第7波に入ったようです。東京都においても7月15日の時点で約1.9万人、8月上旬には5万人を超えるだろうと推定されています。オミクロン株は症状が軽度だから、感染者数の増加自体はそれ程大した問題では無いのでは?と思われがちですが、一つの懸念材料は、これらオミクロンの新しい変異株は免疫逃避*1>の性質が強まっている可能性があることです。今回は、BA.2.12.1、BA.4、BA.5といった新系統の亜種が、ワクチンと感染による免疫から逃避する可能性があることを示し、最近NEJMに掲載された論文(文献1)を紹介致します。
昨年末からオミクロンBA.1株が流行し、その亜種であるBA.2に置き換わり、現在、米国ではオミクロン株BA.2.12.1、南アフリカではBA.4やBA.5といった、オミクロンの新たな系統への急速な置き換わりが進んでいる。これら新種のオミクロン変異株は感染力が高いだけでなく、免疫逃避の性質を獲得した可能性がある。
この可能性を検討するため、本研究では、ファイザー製ワクチンを2回接種し、その後ブースター接種した27例と、オミクロン株BA.1またはBA.2に感染した27例において、パンデミック初期に米国で初めて分離された従来株(WA1/2020株)、およびオミクロン株BA.1、BA.2、BA.2.12.1、BA.4、BA.5に対する中和抗体価*2を測定し、比較検討した。
本研究により、オミクロン株新系統のBA.2.12.1、BA.4、BA.5は、ワクチン接種と感染による免疫から逃避しやすいことが示された。したがって、ワクチン接種や、BA.1やBA.2の感染既往のある集団においても、BA.2.12.1、BA.4、BA.5への感染が増加する可能性が考えられた。