新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療においては、2019年12月に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のパンデミックが勃発してから、わずか1年以内にmRNAワクチンが製造・供給されました。以来、いくつかの性質の異なるバリアント(主としてスパイク蛋白ドメインの変異による)の出現にも関わらず、mRNAワクチンの接種のおかげで幸運にも切り抜けて来ました。今後もオミクロンの新しい亜種が登場し続けている状況を考慮すれば、mRNAワクチンに頼らざるを得ない状況は続くものと思われます。しかしながら、1ヶ月前の(〈2023 8/31〉ウィズ・コロナ時代における新規オミクロン変異株EG.5の流行)で述べましたように、「このように、mRNAワクチンや抗ウイルス薬を多用し続けても問題はないのだろうか?」という素朴な疑問が湧いて来ます。実際、そのように考えている研究者は少なからずいるようです。米国南フロリダ大学のVladimir N. Uversky博士らは、頻回のワクチン接種により免疫グロブリンIgG4が上昇し、IgG3を介したADCCが阻害されることによりSARS-CoV-2の免疫回避が促進するようなメカニズムを報告しており(図1)、今回は、その総説論文(文献1)を要約して紹介致します。
文献1.
Review IgG4 Antibodies Induced by Repeated Vaccination May Generate Immune Tolerance to the SARS-CoV-2 Spike Protein
Vladimir N. Uversky et al.,Vaccines 2023, 11, 991.
SARS-CoV-2に対するmRNAワクチン接種によりCOVID-19の罹患率と死亡率は効果的に減少した。その一方で、アナフィラキシーショックや心筋炎などの急性期、亜急性期の有害なワクチン接種に伴った合併症はよく知られている。対照的に、mRNAワクチン接種による慢性期の副作用に関してはあまり注意が払われていない。
頻回のワクチン接種により血清IgG4が上昇し、SARS-CoV-2の免疫回避を促進するだけでなく、がんや「IgG4関連疾患」を促進する可能性がある。オミクロン株全盛時代の今、mRNAワクチンに安易に頼りすぎている現状を反省するべきかも知れない。