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都医学研の新型コロナウイルスに関する研究 新型コロナウイルスに関する最新情報


2020/09/08

薬理遺伝学的情報は、より安全で効果的な新型コロナウイルス感染の治療法の選択を可能にする

文責:正井 久雄

新型コロナウイルス感染拡大に伴い、多くの既知の抗ウイルス薬、免疫関連製剤が、その安全性や効率を、十分確認しないまま、SARS-CoV-2の治療薬として利用されています(drug repositioning; 既存薬再開発)。

本論文は、これらの新型ウイルス薬の薬理遺伝学的情報を(投薬に対する細胞応答におけるゲノムの役割)を明らかにすることを目的としたものです。この研究では、hydroxychloroquineとchloroquine;macrolide抗生物質であるazithromycin;remdesivir、ribavirin、favipiravirなどのRNA polymerase阻害剤;IFN-β1bに代表されるインターフェロン投与;tocilizumab、sarilumab、siltuximabなどヒト化抗ヒトIL- 6受容体モノクローナル抗体;IL-1受容体の機能を阻害するAnakinra;JAK1/JAK2阻害剤であるRuxolitinib やBaricitinib;急性呼吸窮迫症候群(新型コロナウイルス感染で引き起こされる重篤な肺機能障害)の治療に用いられるステロイドホルモンのCorticosteroids などが、大量の文献情報を元に調べられています。

その結果、患者の遺伝的背景が、hydroxychloroquine、azithromycin、ribavirin、lopinavir/ritonavir(プロテアーゼ阻害薬)、およびtocilizumabなどの薬理効果に影響を与える可能性が明らかになりました。

最も強い遺伝的相関として、IFN-β1b投与が引き起こす、多発性硬化症の患者に見られる肝臓障害と、IRF6の遺伝情報との関係が見出されました。また、CYP2D6 は、入院患者などに使用されることが多く、QT[間隔(時間)]延長を引き起こす薬剤を基質とする薬物代謝酵素です。したがって、CYP2D6阻害剤であるhydroxychloroquine投与は、QT[間隔(時間)]延長症候群のリスクを上昇させます。ヨーロッパでは患者の20%を占めるCYP2D6*4という機能失活アリルをもつ患者は、hydroxychloroquine投与により、心臓リズムの異常により、突然死にいたるQT[間隔(時間)]延長症候群をさらに引き起こしやすくなります。QT[間隔(時間)]延長を単独で引き起こすことが知られているazithromycinとhydroxychloroquineの共投与は、さらにリスクを上昇させる可能性があります。

今後、この報告で提唱された、新型コロナウイルス感染症治療に関連する遺伝マーカーを検証する臨床研究の発展が進展し、将来、患者の遺伝情報に基づき、最も安全で効果の高い治療法を選択することが可能になることが期待されます。