
プラスチックは、ペットボトルや食品包装紙などを始めとして多くの用途に使われていますが、近年、MNPsの長期的な健康に悪影響を及ぼす可能性が懸念されています。プラスチックは、より微細な粒子に分解されますが、決して消えることはないので、私たちは、地球環境で分解されない小さなプラスチックの破片、すなわち、MNPsに汚染されています。したがって、実際、動物や細胞レベルの研究では、MNPsへの暴露が、がん、心臓発作、生殖障害、および、さまざまな病態と関連していることが示唆されています。しかし、MNPsが人間の健康に与える影響を直接検証した研究はほとんどありません。今回、心筋梗塞とMNPsの関連性(図1)について調べるため、イタリア・ローマにありますスコーネ大学病院(Skåne University Hospital)のPaolisso, P.博士らは、心筋梗塞の疑いで冠動脈造影検査を受けた患者さんから、冠動脈を採取してMNPsを測定する横断研究を実施したところ、心筋梗塞で治療を受けた患者さんでは、慢性の冠動脈疾患の患者さんや正常な冠動脈を持つ人に比べて、冠動脈の血液中からMNPsが、より高い頻度で検出されました。また、MNPsの検出は炎症の強さやPM2.5への曝露、および、喫煙と関連していました。これらは、心筋梗塞とMNPsの関連性を裏付ける重要な結果であり、最近のEuropean Heart Journalに掲載されましたので、今回はこの論文(文献1)を報告いたします。しかしながら、この研究はMNPsと心筋梗塞の関連性を示したものであり、MNPsが心筋梗塞の原因であることを証明したものではないので、現時点においては、MNPsが心筋梗塞の治療標的であると言うことは出来ません。今後の研究の展開が期待されます。
【文献】
Pasquale Paolisso et al. Micro- and nano-plastics in the coronary circulation and air pollution exposure in ischaemic heart disease presentation, European Heart Journal, ehag447 (2026).
MNPsは、心血管疾患における新たなリスク要因であると考えられている。本研究は、ヒト冠動脈疾患のスペクトルにおける冠動脈血液中におけるMNPの負担および大気汚染への暴露および炎症との関連を評価することを目的とした横断研究である。
心筋梗塞群の患者さんは、慢性冠状動脈症候群や対照群よりも冠状動脈性血液中のMNPsの負担が大きかった。MNPsの検出は、炎症性バイオマーカーの上昇、PM2.5への暴露の増加、および喫煙と頻繁に関連し、環境への暴露と冠動脈疾患との関連が示唆された。