新型コロナウイルス感染症(COVID-19)からの回復は、必ずしも、以前の健康状態への復帰を保証するものではありません。特に脳、心臓や腎臓に多系統の損傷を負った人には、それが永続的な機能障害となり慢性疾患へと移行することがあり、Long COVID-19として知られています。神経系では回復後に起こる疾患として、筋肉痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群が知られていますが(文献1)、COVID-19の患者および生存者は神経学的症状にも苦しめられ、今後、神経変性疾患の発症が増加することが懸念されます。したがって、その病理学的メカニズムに関する理解が不可欠です。この問題に関して、Wyss-Corayのグループは、脳、脈絡叢のサンプルのトランスクプリトームのプロファイリングに免疫組織化学を組み合わせて解析した結果、COVID-19による神経病理所見がこれまでに認知症などの神経変性疾患で報告されてきたものに重複する部分が多いことを確認しました(文献2)。詳細は原論文を参照してください。
COVID-19が筋痛症性脳脊髄炎/慢性疲労候群を引き起こすことを述べた総説論文です。
現地点において、COVID-19が患者の脳に影響を与える細胞および分子プロセスに関する理解が欠けているのでそれらを明らかにする必要がある。
14人のコントロール(末期インフルエンザの1人を含む)とCOVID-19患者の8人より前頭皮質と脈絡叢より、65,309の単一核トランスクプリトーム(RT-PCR)のプロファイリングを、さらに隣接する組織由来の切片に関して免疫組織化学による解析を行なった。
我々の結果と公開データセットは、COVID-19関連の神経疾患、および後日出現する可能性のあるそのような疾患の現在の観察結果を理解するためのフレームワークを提供する。
COVID-19による炎症の亢進が慢性炎症を伴う高齢期の神経疾患を促進する可能性を示したものでタイムリーな論文だと思われます。Apolipoprotein E4について述べられていないことを考慮すると、COVID-19の重症度とApolipoprotein E4がリンクするという結果(Kuo et al, J Gerontol A Biol Sci Med Sci 2020)は今回の結果に反影されていないのか気になるところです。