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2022/11/22

オミクロン感染の隔離期間;5日で大丈夫?

文責:橋本 款
図1.

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の対策における一つの重要な問題は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染者の隔離期間をどうするかということです。短かすぎるとパンデミックを促進しかねないし、逆に、長すぎると社会機能の麻痺、特に医療従事者の不足を引き起こします。また、空港などでの水際対策にも影響してきます。現在、米国疾病対策予防センター(CDC)は、SARS-CoV-2感染時の隔離期間について、症状の有無にかかわらず5日間を推奨していますが、日本では、症状のある人は発症日から7日間隔離、症状がない人は検査陽性となった日から7日間隔離で抗原検査陰性になれば5日間に短縮可能としています(図1)。しかしながら、これらの日数にはっきりとした根拠がある訳ではありません。このような状況で、米国・スタンフォード大学のJessica Tsao博士らが、SARS-CoV-2陽性を示した学生スポーツ選手において、診断日から7日目の迅速抗原検査で27%が依然として陽性であったことを報告しましたので, 今回はこの論文(文献1)を取り上げます。


文献1.
Jessica Tsao et al., Prevalence of Positive Rapid Antigen Tests After 7-Day Isolation Following SARS-CoV-2 Infection in College Athletes During Omicron Variant Predominance. JAMA Netw Open 2022;5(10):e2237149.


【背景・目的】

CDCは、SARS-CoV-2感染時の隔離期間について、症状の有無にかかわらず5日間を推奨しているが、はっきりとした科学的な証拠は無い。したがって、これを検証することが必要である。

【方法】

著者らは、オミクロン株が優勢であった2022年1月3日~5月6日、SARS-CoV-2陽性となった全米大学体育協会第一部大学キャンパスの学生スポーツ選手に、隔離期間最終日である診断7日目以降に迅速抗原検査*1を実施した。具体的には、学生スポーツ選手264人(女性:53%、平均年齢:20.1±1.2歳、範囲:18~25歳)における268件の感染(症状あり:66%、症状なし:34%)で調査した。

【結果】

  • 7日目に検査した248例のうち67例(27%、95%信頼区間[CI]:21~33%)で陽性のままであった。
  • 症状ありの感染者の7日目の陽性率は35%(95%CI:28~43%)で、症状なしの感染者(11%、同:5~18%)より有意に高かった(p<0.001)。
  • 興味深いことにBA.2変異株感染者の7日目の陽性率は40%(95%CI:29~51%)で、BA.1変異株感染者(21%、同:15~27%)より有意に高かった(p=0.007)。

【結論】

以上の結果より、今回、学生スポーツ選手の調査において、隔離後7日目でも27%で迅速抗原検査が陽性であったことから、米国CDCが推奨する5日間の隔離期間では、感染拡大を防ぐには不十分である可能性が示唆された。また、オミクロン株亜種の種類の変化に応じて隔離時間を変える必要があると考えられた。

用語の解説

*1. 迅速抗原検査
抗原検査とは、検査したいウイルスの抗体を用いてウイルスが持つ特有のタンパク質(抗原)を検出する検査方法で抗原定性検査、抗原定量検査と2つの検査方法がある。前者は、検体を専用の試薬に混ぜて、検査キットに滴下して、検査キットに含まれる抗体が検体に含まれる抗原をキャッチしてキット上に線として15~30分程度で陽性か陰性かの判別をする。迅速抗原検査と呼ぶときはこちらをさす。検体に含まれる抗原量が少ない(ウイルスが少ない)と見逃してしまう恐れがある。偽陽性と判断してしまうリスクがある。後者は、専用の機械によって抗原が検体にどれくらい含まれているかの検査。基準値を超えれば陽性、超えなければ陰性とする。例えば、陽性基準値が20だとして、定量結果が50なら間違いなく陽性、25だと発症初期のためまだ反応が弱いが多分陽性だろう、15だと陰性だが陽性転化する可能性があるため明日の再検査が必要、5だとはっきりと陰性、というような数値による判断ができるため、診断の精度が高くなる。こちらも30分程度で検査が可能である。しかし、検査に専用の機械が必要であまり普及していない。

今回の論文のポイント

  • 隔離後7日目でも27%で迅速抗原検査が陽性であったことから、米国CDCが推奨する5日間の隔離期間では、感染拡大を防ぐには不十分である可能性が示唆されました。また、症状の改善のみに基づいて隔離を終了することは、潜在的な感染者を早期に解放する危険性があります。これらのことは、オミクロンが進化してより感染力が強い亜種に置き換わることを考慮すれば重要です。
  • しかしながら、感染性のウイルスを排出するのは、症状が現れる前から始まっており、症状が現われてから1~2日くらいがピークであることから、現在の隔離期間が必ずしも不十分であるとも言い切れません。さらに検討することが必要です。
  • 市販の検査キットの中には精度が低く、偽陽性などの問題もあるので、PCR検査(定量化)などを併用して評価することが望ましいと考えられます。

文献1
Jessica Tsao et al., Prevalence of Positive Rapid Antigen Tests After 7-Day Isolation Following SARS-CoV-2 Infection in College Athletes During Omicron Variant Predominance.JAMA Netw Open2022;5(10):e2237149.