新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患すると、しばしば、多彩な後遺症*1に悩まされることになります。これまでの報告によれば、後遺症は、症状の程度にかかわらず、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染したしたすべての人に出現する危険性があります。従って、比較的軽い症状にもかかわらず感染力の強いオミクロン株は要注意であり、後遺症に対するより深い理解が必要です。興味深いことに、最近、大阪公立大学の研究グループは、COVID-19の罹患後症状に関し、285例にアンケート調査を実施して、SARS-CoV-2に感染した際の重症度と関係なく、倦怠感や味覚・嗅覚の異常などが、COVID-19回復後1年を経過していても、半数以上の人に罹患後症状が残っていることを見いだしました(図1)。このように、COVID-19の後遺症の持続性はそれぞれの症状に特異的であることから、そのメカニズムを解明することにより、効率的な治療に結びつくことが期待されました。結果は、Scientific Reports誌に掲載されましたので、今回はこの論文(文献1)を取り上げたいと思います。
COVID-19に罹患すると、治癒後にさまざまな症状が残ることが、海外から報告されているが、わが国ではCOVID-19の罹患後症状に関する調査があまり進んでいない。本研究の目的は、わが国におけるCOVID-19の罹患後症状の実情を明らかにすることである。
COVID-19後遺症の有病率と危険因子に関する横断的な多施設調査を実施した。具体的には、2020年1月1日~同年12月31日の間に、大阪府内の5病院でCOVID-19と診断された人、および、入院した285例に対して、COVID-19感染1年後の後遺症に関するアンケート調査(後ろ向きコホート研究)である。
本研究により、重症度と関係なく残りやすい罹患後症状があることが明らかとなり、現状では罹患後症状の治療法が確立されていないことを考慮すれば、罹患後症状については今後も引き続き注意する必要がある。